第14話
次の日──俺はエリシアと共に宿屋のオーナーの元を訪れていた。ちなみに、修理費は既に支払い済みである。まあ、壊したのは俺なので当然だがな。
それから、俺たちは魔物を狩ってカネを稼ぐためにダンジョンへと向かうことにした。
この街──真人王国には、地底深くに存在する古代遺跡が存在しており、その中には大量のモンスターが生息しているらしいのだ。
俺もエリシアから話を聞いて初めて知ったのだが、この街の地下には広大な迷宮が広がっているらしく、その最奥部には財宝や強力な武具等が眠っていたそうだ。そして、それらを手に入れるためには相応の実力が挑むため、ここには大勢の人が集まっていた──と。
しかし、かつては栄えていたこの地下迷宮には、今では俺たちしかいない。
理由は至極簡単。地下迷宮の財宝を手に入れた人物が現れたからだ。
それこそが──ここにいるエリシア・グランツフォード。
「迷宮の財宝を手に入れるなんて、やるじゃねえか」
「私の目的は、地下迷宮の財宝の中にある不死の秘薬だった。それが、もしかしたら私が求めているものだと思って挑んだのよ。……でも結局、その噂はガセだったわ。件の秘薬はどの財宝箱にも入っていなかった」
エリシアが溜息混じりに呟きながら、俺は彼女の話に耳を傾ける。
エリシアの話によれば、この地下迷宮に生息する魔物は高値で売れるのだそうだ。
というわけで、俺たちは早速ダンジョンへと向かうことにしたのだった。道中で出会う雑魚魔物を倒しつつ進んでいくと──数分後には目的の場所に到着したようだ。
目の前には巨大な洞窟の入り口が見える。その内部からは、強い魔物たちの気配と──微かな魔力が感じられた。
「さて、それじゃあ入るか」
俺はそう言うと、エリシアと共に中へ足を踏み入れるのだった──……。
*****
薄暗い通路を進んでいくと──やがて開けた場所に出た。
そこは小さな広場になっており、天井からは鍾乳石のような物が垂れ下がっている。そして──その奥にある扉から禍々しい気配が流れ出していた。恐らくあの扉の向こう側に大量のモンスターがいるに違いないだろう。
俺たちは互いに頷き合うと、その扉に向かって歩き出した。そして──扉が開かれると同時に室内へと突入する。
中は広く天井も高い場所だった。壁に取り付けられた松明の明かりによって照らされた空間には無数の石像が置かれている。それはどれも人型をしており、大きさや形はバラバラだ。中には女性を模したような物や子供のような姿をした物もあるようだ。
俺たちは辺りを警戒しつつ奥へと進んでいくことにしたのだが──その時、足元から奇妙な声が聞こえた気がしたので下を向いてみた。
すると──そこには一匹の猫がいた。いや、正確に言うと猫が直立したような生物がいた。
その生物は全身毛むくじゃらで、尻尾が長く伸びている。全体的にスリムな体型をしており、手足が細いため動きが機敏そうだ。目は金色で瞳孔は縦に割れている。
俺がジッと観察していると──その猫モドキは俺の方に視線を向けた後──突然襲いかかってきた!
「フンッ!」
俺は咄嗟に右拳を振りかぶると、そいつの顔面に叩き込む!
「ギァアアアアアアッ!?」
すると、殴られた猫モドキはそのまま吹っ飛び壁に激突する。俺は殴った拳を軽く振りながら、その猫モドキを睨みつけた。
「あ……がぁ……!」
壁に叩き付けられた猫モドキはピクピクと痙攣していた。だが──まだ死んではいないようだ。意外とタフな奴だな。
俺が痙攣する猫モドキをまじまじと眺めていると、不意に背後から声をかけられた。
「アルファ! 気を付けて! まだまだ居るわよ!」
エリシアはそう言って剣を抜き放つと──次の瞬間には駆け出していた。彼女は凄まじい速度で剣を振り抜くと、奇襲を仕掛けてきた猫モドキに向かって斬りかかった。
しかし──その一撃を魔族は軽く後ろに跳んで回避すると、そのまま空中に浮かんだ。そして、エリシアに向かって手をかざすと魔法を行使する。
次の瞬間──エリシアの真上に現れた巨大な火球が彼女に襲いかかった。
「甘いわっ!」
エリシアは咄嗟に剣を振るうと──火球を切り裂いた。凄まじい爆発が起こり辺り一面に煙が立ち込める。
俺がその光景を見ていると──煙の中から一つの影が飛び出してきた。
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