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第12話

 そこには、奇妙な恰好をした集団が立っていた。

 皆一様に同じ白装束を身に纏っているが、その胸には奇妙な紋章が描かれている。そして、その手に握られている武器もまた奇妙な形状をしていた。

 一見すると巨大な十字架にも見えるそれは、よく見ると刃が複数付いている鉤爪のような形をしていた。これはおそらく儀式用の祭具か何かだろうと思う。

 俺がその奇妙な連中に目を奪われていると、先頭にいた男が一歩前に踏み出し──そして、口を開いた。


「なるほど。ここに居ましたか」


 そう言いながら、男はこちらに近づいてくると、俺の傍に跪いた。

 そして、彼は胸に手を当てて恭しく頭を下げると言葉を続ける。


「お初にお目にかかります魔人殿。私は神族が一人──アルマと申します」


 そう言って顔を上げると、ニコリと微笑みながら自己紹介をした。その笑顔は爽やかで人当たりの良いものだったのだが──俺にはそれが薄っぺらく感じてならなかった。

 何故なら、目が全く笑っていないからだ。

 まるで、俺を見定めるかのような視線をこちらに向けている。そして──その瞳の奥には底知れぬ闇が見え隠れしていたのだった。

 俺が訝しげにアルマと名乗る男を見つめていると、彼は少女の方に視線を向けると再び口を開く。


「お探ししておりましたよ──貴方の身柄を拘束させて頂きます」


 そう言ってアルマは立ち上がると、他の連中に向かって目配せをする。そして、彼らは一斉に少女に歩み寄ると両脇を抱えて立ち上がらせた。そしてそのまま、引きずるようにして連行していく。


「あ──えっと、アルマ。これは、その、違くて……」

「言い訳はまた後程。──もっとも、私の命令を無視して魔人アルファと接触し、さらには交戦した時点で言い訳の余地はありませんが」


 アルマがピシャリと言い放つと、彼女は肩を落として項垂れてしまった。そんな少女を引き連れながら、アルマはこちらに向き直ると小さく頭を下げてきた。


「この度は、わたしの部下が大変御迷惑をおかけいたしました。彼女の上司として、今回の事は深くお詫び申し上げます」


 アルマはそう言うと、自身の頭を上げる。

 俺はそれを見ながら小さく嘆息すると、首を横に振った。


「いや、気にするな。俺も丁度良い憂さ晴らしになったしな」


 俺がそう言うと、アルマは一瞬キョトンとした表情を浮かべたが──すぐにニコリと笑みを浮かべ直した。そして、改めて頭を下げてくる。


「──寛大なお心に感謝いたします。てっきり、怒り狂うかと覚悟していたのですが」

「別に。意表は突かれたが、俺にとっては部屋にハエが入ってきた程度のトラブルだ」

「うふふ……なるほど。貴方は面白いお方ですね」

「そうか?」

「ええ、そうでしょうとも。神族である私を前にしても平然としていらっしゃるのですから」


 そう言って微笑むアルマを見て、俺は思わず眉を顰めた。


「あいにく、神族ってのは知識としては知っていても実際にあったのはこれが初めてだからな。イマイチ、どういう奴等なのか、よくわからねえな」


 俺が正直に答えると、アルマはクスクスと笑った。

 そして、俺を見つめながら口を開く。


「──なるほど。わたしも、貴方のような存在が地上界に生まれるなど想定外でしたからね。まあ、それも時間の問題でしょうけど……」


 そう言って意味深に笑うと、彼は再び頭を下げた。

 そして、そのまま言葉を続ける。


「では、我々共はここで失礼させていただきます」

「何だよ。お前は俺と戦わないのか?」

「いえいえ。アドネを圧倒する方を相手に、無策で挑むのは愚かというものですよ。部下は回収させて頂きましたし、わたしも命は惜しいものでね」


 アルマはそう言って肩を竦めてみせる。


「あぁ、そっか。まあ、俺には関係無いけどな」


 俺を殺そうって奴らが目の前に現れて、わざわざ逃してやる理由がない。

 寧ろ、この場で殺してやった方が面倒事にはならないだろう。

 俺はそう考えると、右手を広げて魔力を集中させた。そして──その手をアルマに向かって突き出す。

 次の瞬間──眩い閃光と共に、巨大な光弾が撃ち出された。それは真っ直ぐアルマ目掛けて飛んでいき──直撃する寸前で消滅した。


「──転移魔法、か。アイツも使えるのか」


 予想外の出来事に驚きはしたが、すぐに感知魔法を使って周囲を探る。しかし、余程遠くに転移したのか、アルマの気配は感じられなかった。

 見渡すと、白装束の連中や、担がれて連れて行かれていた少女の姿も、既に何処にも見当たらなかった。どうやら、完全に逃げられてしまったらしい。

 俺は嘆息すると、小さく呟く。


「はぁ……失敗したな」


 まさか神族共が出張ってくるとは予想外だった。もう少し情報を得たかったのだが……仕方ないか。まあ、いずれまた会うことになるだろうしな──その時までに対策を考えておくことにしよう。

 そう結論づけると、俺は踵を返して歩き始めたのだった──……。

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