第11話
──俺は、転移した先で少女を捕捉すると、背後から声を掛ける。
「おい」
「──ッ!?」
少女は驚愕の表情を浮かべながら俺の方を振り返った。そして──その表情が一気に青ざめていくのが分かった。どうやら自分が逃げられない状況にあることを理解したらしい。
俺は小さく嘆息すると、言葉を続けた。
「……逃さねえよ」
次の瞬間──俺の指先から放たれた熱線が彼女を襲った。
少女は咄嗟に防御魔法を発動したが、防ぎきれず胴体に穴を空ける。彼女は苦痛に表情を歪めると、口から血を吐き出した。
俺はその様子を見ながら、淡々と言葉を紡いだ。
「さっきのお返しだ。まあ、死んでないだけありがたく思え」
そう言ってニヤリと笑みを浮かべると──そのまま倒れ込んだ少女に向かって歩み寄る。そして、彼女の首を掴むと持ち上げた。
少女は血を吐きながらも、必死に抵抗を続ける。しかし、力比べでは俺に勝てるはずもなく──あっさりと拘束されてしまった。
そして、俺はそのまま少女を地面に叩きつけると、馬乗りになって組み敷く。
「……かはっ!!」
少女は苦しそうな表情を浮かべていたが──俺は構わず尋問を始めた。
「袖振り合うも他生の縁……って事で、お互いに自己紹介と行こうか。俺は、魔人アルファ。魔界王国の研究所で今日目覚めた人造魔族──らしい。詳細は知らねえ、俺が教えて欲しいくらいだ」
「くっ──!」
「次はお前の番だ。名前とお前の所属組織と目的を吐け」
俺がそう問いかけると、少女は憎々しげにこちらを睨みつけてきた。
「誰が──ッ!!」
彼女はそう叫ぶと、俺の腕から抜け出そうと藻搔いた。だが、俺はそれを許さないと言わんばかりに組み敷くと、再び質問を投げかけた。
「もう一度聞くぞ? お前は何者だ?」
「言うわけ──」
彼女の言葉を遮るように、俺は更に腕に力を込める。骨が軋む音が辺りに響き渡った。彼女は苦悶の表情を浮かべながら悲鳴を上げる。そして──遂に耐えきれなくなったのか、ボソリと呟いた。
「──神族」
「へぇ……それはそれは……」
俺は、思わず感嘆の声を漏らした。まさかここで神族の名前が出てくるとは思いもしなかったからだ。それもこんな所で──だ。
『神族』というのは、ここから遥か上空──人間や魔族が住む世界と対になる『天界』に住む種族の総称だ。つまり、この少女は天界の出身ということになる。
しかし、何故彼女が俺を攻撃したのかという疑問が残る。それに、神族が地上界に何の用があるんだろうか? 俺はその真意を確かめるべく、彼女に問いかけた。
「神族が俺に何のようだ」
「貴方──魔人アルファを捕らえに来たのよ。天界では、貴方を抹殺しようと既に動き出している。だから、『神々の騎士団』が動き出す前に、私が抜け駆けしに来たってわけ」
「……何で俺が、天界の連中に殺されなければならないんだ?」
「自覚が無いようだけど──そもそも貴方は、ここ存在してはならないの」
「どういう事だ?」
俺が問いかけると、彼女は小さく嘆息した。そして、少し間を置いてから口を開く。
「貴方は本来、この世界に誕生しない筈の生命体。神々のルールに背く存在である以上、排除しなければならない。──というのが、お偉いさん方の考えよ。まあ、私はそういうの興味無いんだけどね」
少女は、あっけらかんと答える。
よくわからないが、つまり俺の存在は神々が作ったこの世界のルールとやらに違反しているらしい。だから始末しに来るということか──なんとも勝手な話である。
だが、俺は素直に殺されるつもりなど無かった。何故なら──まだやりたいことがあるからな。それは、俺の大切な婚約者と添い遂げることであり、そして──。
なんて事を考えていると、少女が再び口を開く。
「こ、こんな事をしてタダじゃおかないからね! 神々の騎士団が動き出せば、貴方なんて簡単に──」
と、そこまで言いかけて──少女が急に黙り込んだ。
俺は、その変化を見逃さず、彼女が俺の背後に視線を移したのを確認してから──ゆっくりと振り返る。
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