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第10話

 ……俺は今、見知らぬ相手と一緒にベッドに横たわっている。しかも、相手は何故かネグリジェ姿の銀髪美少女でだ。

 これは一体どういう事なんだ?

 いや、考えるまでもないか……。まさかこんな展開になるとは思わなかったが……。

 とにかく、俺がこれから起こすべき行動は一つだ。


「死ね」


 ──そう、俺は迷わず少女の腰と背中に手を回すと、そのまま彼女の背骨を砕こうと力を込める。

 瞬間、バキバキッという音と共に、少女の体がビクッと跳ね上がった。

 そして──彼女の口から悲鳴が上がる。


「ああぁぁああぁああぁああっ!!」


 それは絶叫だった。

 この世の終わりのような叫び声を上げながら、彼女は必死に身をよじらせ、手足を振り回し、抵抗した。しかし、俺は逃さないとばかりに更に力を込める。

 そして、少女はビクンッと身体を痙攣させた。その痛ましい瞬間、彼女の美しい顔には苦悶の表情が浮かんだ。彼女の銀髪の髪束が乱れ、目の前に散らばった。

 次第にその痙攣は収まり──最終的に彼女は糸が切れたように動かなくなった。

 彼女の目からは涙が流れ、顔色は青白く変わっていた。


「ふぅ……」


 この一瞬の間に、部屋には静寂が戻──。


「痛いわねぇっ!!」


 ──らなかった。

 少女は突如声を上げると、俺を突き飛ばしたのだ。それは、まるで鋼鉄の柱がぶつかってきたかのような衝撃だった。

 俺は咄嗟に身を翻して衝撃を軽減させると、そのまま床に着地した。


「チッ……意外とタフなんだな」


 俺は舌打ちをして呟くと、ベッドの上に仁王立ちになって俺を睨みつける少女を睨み返した。

 それにしても、確実に彼女の骨が砕けた感触はあった筈だが──どうなっているんだ? 死んでないどころか、ピンピンしているように見えるんだが。

 俺が訝しんでいると、彼女はベッドの上から降りて俺に向かって歩み寄ってきた。


「いきなり何するのよ!」

「それはこっちのセリフだ。婚約者が居る俺にハニートラップを仕掛ける方が悪い」

「だから死ねって!? 死ねって言われたからって死ぬわけないでしょ!? 馬鹿なの!?」


 少女は怒り心頭といった様子でまくし立てた。

 一方俺は、特に何も感じてなかったので、淡々と答える。


「馬鹿はお前だ。人の部屋に忍び込んでおいて、添い寝だなんてふざけてるとしか思えないだろ」

「──『一目惚れ』ってあるでしょう。目と目が合ったら、男と女は恋に落ちる事もあるの。童貞には難しい話だったかしら?」

「童貞だとォ!? 馬鹿にしやがって許せねえ!!」


 俺は、本格的に戦闘態勢に入る。

 体内にある莫大な魔力を全身へ循環させ、身体能力を強化すると──そのまま床を蹴って飛びかかった。

 そして、少女の胸ぐらを掴むと力一杯投げ飛ばした。

 次の瞬間──彼女の身体は寝室の壁を貫通して隣の部屋……いや、そのまた隣の隣の隣の部屋へと突入した。

 轟音と共に家具が吹き飛び、宿屋全体が揺れる。

 俺は、更に追い打ちをかけるように掌から炎弾を放つと、少女に直撃させた。

 凄まじい爆発音と共に炎が燃え上がり、視界を覆い尽くすほどの黒煙が立ち上った。しかし──。


「──残念」


 そんな声が聞こえ、煙が晴れると無傷の状態で少女が姿を現した。彼女は衣服についた汚れを払いながらこちらへ向かって歩いてくると──ニヤリと笑みを浮かべたまま言葉を続けた。


「全く効かないわ! この私にダメージを与えたいなら、もっと本気で来なさい!」


 彼女はそう言うと、両手を広げて挑発的な態度を取る。


「お安い御用だな」


 俺は再び床を蹴ると、今度は少女の背後に回り込んで後頭部に手刀を振り下ろした。鋭い刃となって彼女の首を両断しているが──しかし、二つの分かれた首は瞬く間に結合して元通りになった。


「再生能力持ちか!」


 俺が叫ぶと同時に、少女は振り返ると同時に回し蹴りを放ってきた。咄嗟にガードするが、勢いを殺し切れず吹き飛ばされてしまう。そのまま壁に激突──する寸前で、何とか体勢を立て直して着地した。


「いや硬ッ!? ねえ、何なの!? 私の蹴りを食らってピンピンしてるなんて信じられないんだけど!!」

「はっ。勇者と比べれば虫刺された程度だな」


 俺はそう言って鼻で笑った。すると、彼女は苦虫を噛み潰したような表情になる。


「チッ……何なのよ! 聞いてた話よりずっと強いじゃない! アルマめ〜、適当なこと言っちゃってさぁ〜!」

「……アルマ?」


 俺は、聞き覚えのない名前に眉を顰めた。

 少女は不満げな表情を浮かべながら身を翻すと、突如背中から純白の羽を生やし──そのままふわりと宙に浮かぶ。


「あぁ、もうっ!  面倒くさいから逃げることにするわ! バイバーイ」


 彼女はそう言って手を振ると、窓から飛び立っていった。飛行速度はかなりのもので、あっという間に姿は見えなくなっていった。

 ……逃げ足の速い奴だな。まあ、関係無いけど。

 俺は転移魔法を使って、逃走した少女の位置を感知すると──その場から転移した。

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