第八話 未知との遭遇、それは危険を孕む
野原のような通路を何十分か歩くと、突然前の人達が足をとめた。何事かと夢は先頭にいるであろう信藤さん達の所へと移動した。
「何かあったんですか?」
「アレをみろ」
信藤さんが指をさす方向に何か、無造作に落ちている。それを見た瞬間思わず息をのむ。遠目からみると《それは、人間の腕にみえた。》
巖真や、信藤さんと目を合わせながらそれを確認しにいく。狭川さんや植田は護衛として残してきた。グループから10mないか位の地点にそれはあった。やはり、案の定それは人間の腕だった。すこし、腐り始めてはいるがまだ新しいものだと思う。
「これってどういうことでしょう?」と巖真
「わからないが、何かが居ることは確からしい」
「食いちぎられたみたいですね・・・」
と夢が腕を観察した感想を言う。
「斬られたとかじゃなくて、食いちぎられた?」
「そうです。ここの根元なんですけど腐敗が始まって手見えにくいけど鋭い牙みたいなもので思いっきり食いちぎられてる」
巖真と信藤さんが顔を見合わせているのを横目に他に何か落ちてないか探してみるがこれといって情報になりそうなものはなかった。信藤さんが
「いくぞ」といってグループのほうへもどる。夢と巖真もそれを追ってグループへ戻った。
グループの皆に信藤さんが、何かが俺たち以外に居るということだけ伝えた。皆の顔にも緊張が走る。そのまま、信藤さんは通路を先へ先へと進んでいく。皆もさっきよりも慎重な足取りであとを付いていく。そのまま、通路を進むと開けた空間に出た。そこは、あたり一面草が生い茂り所々に背の低い灌木がみられる部屋だった。天井があることが異様に感じられる。
「ここで一端、休憩にしよう」
号令がかかり、皆思い思い腰を下ろす。のどかな時間が流れる。誰もが口を開かず久々に嗅ぐ草の匂いに心を和ませるのであった。その静寂を断ち切るかのごとく、反対側の通路から叫び声が聞こえる。
「ヒィィッ!!助けてくれぇ~!!」「こっち来るなぁ!!」逃げろッ!!」
様々が怒声が段々大きく近づいてきた。
夢はいち早く立ち上がり、近くにいる女子に声をかけ壁際の方へと移動を促す。信藤さんも立ち上がり、グループの皆に指示を出す。
「向こうの入り口に何かいるらしい。とりあえず、皆壁際に移動してくれ。男性何人かで見に行ってくる。」
「俺、行きますね」
と夢が一番最初に名乗り出る。何が居るのか人に聞くより自分で見た方が早いと思ったからだ。護衛として、植田、狭川さん、小川さんを残し、巖真と信藤さんと入ってきた入口の反対側にある通路へと向かう。通路へ近づくにつれ、怒号や逃げ惑う足音が大きくなっていく。通路と広間を繋ぐ所までたどり着き、信藤さんと巖真に目配せをし、一歩通路へと踏み込んだ。何故か、通路から聞こえていた怒号などが聞こえなくなり始めていた。疑問に思って首を傾げていると奥から1人の男性がこちらに走って向かってくるのが見えた。男性の顔にも人に出会えた
ということからか安堵の表情が浮かび上がった。その瞬間、男性の後ろから黒い何かが男性の首に飛びかかるのが見えた。
「あぶない!!」
声を発するが時すでに遅く、黒い何かが男性の首に食らいつく。その姿を見てすかさず夢が背中に背負っていた騎乗槍を外し男性の元へ近寄ろうと駆け出そうとしたその時、
ゴキン!
男性の体から生気が、命が消えた瞬間だった。夢はそのまま足を止めず、何がいるのか確認するため速度を上げる。向こうも獲物が抵抗しなくなったのを見て巣にもって帰るのか、男性の体を引きずりながら奥へと消えていこうとする。それに追いすがるように夢が黒い物体を追う。信藤さんも巖真も夢のあとを追う。夢が、
(追いついた!)
と思った時には、すでに一歩遅かった。黒い物体は仲間と合流を果たしているのであった。それを見た、夢はすぐさま
「戻れ!!」
と後ろに来ている巖真と信藤さんに声を飛ばす。夢自身も踵を返し、元来た道を全力で戻る。黒い物体達は、新しい獲物に目をつけ夢たちの後を追い始める。
「一体、何なんだ!?」
信藤さんが、今の状況に対する疑問を述べる。
「オオカミですよ!オオカミ!!」
唯一人、姿を見た夢が走りながら答える。後ろに迫り来るオオカミ対して、走りながらガムシャラに槍を振るう。最初のうちは牽制になっていたがそのうち、当てる気が無いのがバレ始める。
「信藤さん、皆と合流したら壁を背に女子を囲む形で半円状の隊形を作った方が――」
全部、言い終わらないうちにオオカミらしきものの一体に後ろから飛びつかれる。槍を振るっていた不安定な体勢だったため重さに負けるように床に向かって盛大にコケる。それを見た巖真が
「大丈夫か!?」
といって手を貸しに戻ろうとするが
「行けって!俺より優先することがあるだろう。俺は大丈夫だから。巖真だって、向こうに残してきた女が居るんだろ!!人の事より、自分の事を優先しろ!」
それを聞いた巖真がグッと唇を噛み、堪えるように
「後で、絶対戻ってこい!」
足を広間の方へ向け、信藤さんの後を追うためにすぐに走り始める。オオカミみたいな物もコケタ獲物に対して、一匹でいいと思ったのか背中に乗りかかっている一匹だけを残し、残りが信藤さん達の後を追う。夢は背中に乗っている物体から逃れようとするが一向に上手く行かない。耳元では、犬独特のハァハッハッハという息遣いが途切れることなく聞こえてくる。
(くぞ!慣れないことはするんじゃなかった。どうする?・・・)
考えている間を相手が待ってくれるはずもなく、抵抗が失われた獲物に止めを刺すべく先ほどの男性と同じく、首に牙をかけようと身を乗り出そうとした。その時を見計らって、夢が左手にもっていた槍の石突きの部分を思いっきりい自分の背中にいる物体に向けて振り払うようにぶつける。
ガツン!手に手ごたえを感じた。案の定、上にいた物体が軽くキャインと発しながら飛び退る。上からの圧力が消えた瞬間、身を起こし相手と対峙する。改めて、対峙してみるとそれはオオカミに違いがオオカミでは無かった。犬歯が上も下も顎から突き出ているのだ。明らかに元の世界に居た動物ではない。
(あの腕もこいつらか?)
確証はないが、先ほどの男性の首を一撃へし折る威力を見れば人の腕など簡単に食いちぎれそうだ。
その頃、信藤さん達はというとグループに合流し夢が提案したように信藤さんを中心に壁を背に女子を中に入れ半円を描き、オオカミみたいなものと対峙していた。
少なめでごめんなさい<(_ _)>
次話で初めての魔物とのバトルが終わります。オオカミみたいな魔物は名前何にしようか考え中です。なんか、いい名前あったら教えてください^^
今回も読んでいただきありがとうございます!拙い作品ですがこれからもよろしくお願いします(^^)/では、次の後書きでお会いしましょう。
感想、意見等色々待ってます~ノシ