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世界が変わる その一歩  作者: ユグラス
プロローグ
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第五話 剣には剣を

「どけぇ、それはオレのだ」「押すな!危ないだろうッ」など、様々な怒号や悲鳴が武器庫から聞こえてくる。夢と巖真達はいち速く武器を持って離脱していた。その為、あの喧騒の中に行く必要はないが、自分たちは運河良かっただけである。一つ間違えば、あの中で必死に武器を取りに言っていたはずだ。大剣や、片手剣など様々武器を持ってグループへと戻る。すでに、信藤さん達も戻ってきているようだった。

「凄い騒ぎだな。大丈夫だったか?」

「ええ、平気ですよ。とりあえず、これを見てください。」

巖真が言いながら、武器庫から取り出した数々の武器を広げる。植田も同様に床に置く。

「おお!」

早速、鞘から剣を抜き刀身を引き抜けば、刀身が燭台の光を反射しキラキラと煌めく。これほどまでに砥ぎ澄まされたものはないと剣が言わんばかりに綺麗に砥がれていた。人など、一太刀で切断出来そうなほどの切れ味がありそうだ。その様子を横目に、夢は女子でも扱えるような短剣類をグループ内の女子に配る。ほとんどの女子から、なんで、私がこんなものを?的な目で見られたが何も言わず渡していく。

「水瀬君、コレを使う機会があるのかな?」

と不安そうに志波さんが聞いてくる。コレとは手渡した短剣である。もし、こんな異様な空間じゃなく俺達の日常だったなら俺は迷わずこう言うだろう。

「女の人がそれを使う必要はない」と

だが、今は法律、治安、秩序といったものが欠落している状態なのだ。それこそ、自分の身は自分で守るしかない。ここでは、誰もが獣になりうる可能性を秘めている。

「どうだろう?でも、自分の身は自分で守ることも必要だと思う。持っているだけで、抑止力になるかもしれないしさ」

あくまで、使うことよりも持っているだけの抑止力を強調するように返答する。それに安心したのか

「そうだよね。持ってることに意味があるんだよね」

それ以上言えることはなかった。この先、必ずソレを使う羽目になると思っていても。

「現実の核と同じってことだよ。このままいけば、ここはもう安全じゃない。今日中にやることはやらないと」

最後の方は、ほとんど夢自身に言い聞かせているような声であった。その為、志波さんにはほとんど聞こえていなかった。大体、男たちが自分達の武器を各々装備し終わったくらいで、さりげない流れで提案する。

「巖真君、もう一つの部屋はどうする?」

「「今のうちなら、また独占することが出来るかもしれない。」

と言って、武器庫の方へ視線を向ける。まだ、そこでは武器の奪い合いが起きていた。

「だけど、位置が近くない?」

「そうなんだよ。下手したらあの人達が一気に押し寄せてくる」

その通りである。今のまま、隣の隠し部屋の壁を破ったら、ほぼ確実に武器庫に居る人たちに気付かれるであろう。すでに、自分達は一般の人ではなく、武器を持ち相手を殺すことさえ出来るのだから。最悪、血で血を払う結末になりかねない。

「推測なんだけど、逆側にももうひとつ部屋があると思うんだけど、どうかな?」

それは、防具と武器が対にあったようにもう一つの隠し部屋にも対の部屋があるのはということだ。

「調べてみる価値はあるかもな」

と信藤さんも頷く。早速、信藤さんも含めた4人で防具部屋があった壁に近づく。この時、もう少し周囲に警戒しておけばと後で後悔することになる。自分たちの行動に目を光らせていた者たちがいたとは。


 案の定、対になる位置の壁に異変があることを確認した。信藤さんの合図で一気に蹴破り、中へと入る。そこは、防具や武器ではなく日頃着ることになる衣服が置いてある部屋だった。

「とりあえず、片っぱしから持ちだすぞ!」

信藤さんの号令で巖真、植田、夢の3人は動きだす。上下の衣服、下着といったものを乱雑に回収していく。すぐに、ここの部屋の事も周りに伝わるであろう。武器この時よりも早く、信藤さんが撤収の合図を出す。巖真、植田の後に続くように夢も外へと出る。外へ出たとき、

「ッッゥ!?」

植田の背中に思いっきり激突した。

「いきなり止まるなよ!」

非難するが、植田の返答はなかった。それもそのはず、外に出たら1年の何人かが自分たちに向けて武器を構えていたのだ。

「それは、どういうことだ?浅田」

信藤さんが、武器を構えている1年の中のリーダーらしき人物に声をかける。

「簡単ですよ。持っている物を置いていってもらいたいということです」

こいつらは、まだ中に衣服があるにもかかわらず、自分達から奪うという選択肢を取ったわけだ。それを見た狭川さんや、小川もこちらへと駆けつけてくる。数でいえば、こちらが有利だが向こうは目が既に血走っている。駆け付けた狭川さんに、取り出した衣服を押し付け皆の前に一歩前に出る。

「「水瀬!?」」

信藤さんと巖真から驚きの声が上がる。信藤さんに小声で

「少しの間、引きつけますからその間にグループの所まで移動してください。」

「別に、これを渡したっていいんだ。今武力に頼る必要はない。」

信藤さんの意見に首を横に振る。

「周りを見てください。武器庫にいた連中もこちらに気付き始めています。それに、遅かれ早かれこうなることは目に見えていました。ここで、退けば自分達は脅しに負けると思われますよ」

夢の言うとおり、今の現状で退くということは下手をしたら他のグループからも同じことをされる可能性がある。適当な所で逃げるにしろ、少しでも反抗しなければ舐められることは分かり切っている。それを見ていた植田もため息を1つハァ~と吐きながら、小川さんに手に持っていた衣服を渡す。そして、夢の傍らに立つ。

「あれ?植えちゃん。どうしたの?」

「お前だけだと心もとないだろ。」

それを見た信藤さん達は「すぐ、戻る」と残しグループの方へ走っていく。

「逃がすな!」

と一年の集団が移動しようとするがそれを遮るように2人が阻む。

「植えちゃん、いいとこ見えようと思うなよ。自分の身だけ守ることを考えろ」

「わかってるよ。お前と違って俺には彼女が居るんだからな。無理はしねぇよ」

「サイデスカ。ここは、俺に任せろ!っていう感じじゃないのね」

当たり前だろ、こいつ何言ってんだみたいな目で見るのは止めてほしい。普通、ここって男の友情とカが深まる所じゃ。

「でも、それでいいよ。俺のことにはかまうなよ。逃げれると思ったらすぐに走れよ!」

それ言うと同時に一年の中に飛び込むように走る。

「なっ!?」

集団戦で必要なのは、相手の虚を突くこと。人数を減らすことである。最初にリーダーを倒せというが、それは間違いである。リーダーと戦っている間に周りを囲まれたらそれで終わりだからである。

 夢は走りこみながら、一番戦いなれていない奴を探す。頭数で来ました的な男に目をつける。男の方も夢が自分を狙っているのが分かったのか、奇声を上げて両手に持っている大剣を大上段から振り落とす。素人といえど、人の命を奪う武器を躊躇いもなく振り下ろすことが出来るとは。よほど、切羽詰まっていたらしい。

(躊躇いがないな。だが、まだ甘い!)

夢は迫り来る刀身の軌道を見切るべく、目で相手の剣を凝視する。

(逸らすな。逸らせばアレは俺を貫くぞ)

目を逸らしそうになる自分の心に活を入れながら冷静に剣の軌道から身をかわす。

カンッ!

ギリギリのとこで交わし切った大剣が石畳の床を叩く乾いた音を聞く。すでに抜いておいた短剣の柄を握り締め、走り抜けざまに思いっきり相手に側頭部に打ち付ける。

「ガァッ!」

大剣を振りぬいた後の不安定な体制の所への頭への強打に耐え切れず、床に体を叩きつけられたようだ。リーダーの浅田が

「てめぇ!」

走りぬけ、こちらに体を向きなそうとしている夢にすかさず、長剣を突きこむ。

「ッッッ!!?」

ザシュッ!

血が一筋、宙を舞う。ギリギリのタイミングで避けたと思ったが、そこまで現実は甘くないらしい右頬を軽く切ったらしい。頬の辺りに血が流れる感覚がする。が、それを気にしている余裕もなく、相手が剣を引き戻す前に左手に持った短剣を相手の喉元に突きつけ、

「動けば、刺す」

相手にしか聞こえない声で、言い放つ。相手も、こちらが本気だと分かったのか剣を引き戻すことを止めた。丁度、信藤さん達も戻ってきており数の不利を悟ったのか仲間に撤収の合図をかける。それを聞いて、夢も相手の動きを見ながら短剣を引き、植田がいる辺りまで下がる。

植田と一緒に信藤さん達に合流した。巖真が

「水瀬、大丈夫か?」

頬から流れている血を見て、心配そうに聞いてくる。

「薄皮が一枚切れただけだから、そのうち止まるよ」

顔周辺の傷は血がよく出るが、それほど酷くないことも多い。本人が言うのならということで他の人もそれ以上聞いてこなかった。グループに戻るとすでに衣服は全員に行き渡っており心配するようなことは何もなかった。

「はい、水瀬君の分」

志波さんから俺の衣服だと思われる塊りを渡される。それを、ありがとうと言いながら受け取る。

「傷、大丈夫?」

頬の傷を見て、心配そうに聞いてくる。

「マンガみたいに上手くいかなかったよ。血は止まってるから平気だと思う」

と苦笑しながら、返す。

「あんまり、無茶はしないでね」

と言い残し、坂根さんや女子が集まっている所に戻っていく。それを見送りながら、信藤さん達に次の行動について提案するべく、男達が集まっている所へと移動していく。

「聞いてくれ、俺達はもう1つ隠し部屋を見つけている。そこにあるものを皆に平等に配りたいと思う。これに賛成するグループは手を上げてもらい」

信藤さんが、広間全体に聞こえるように大声で話す。この結論に至ったのは夢の提案が発端である。

 夢の推測なら、最後の部屋には食料があると思うこと。また、今の状況で奪い合いが起きた場合高確率で血が流れるであろうということ。先ほどの戦闘で殺し合いという現実が皆の頭に過っていること。この状況なら和平の案をだせば、必ず乗るグループがあるということ。それに従い、信藤さんが声を張り上げたわけだ。

案の定、武器や防具が少ないグループの代表が手を上げる。

「他に賛成するグループはないのか?」

逆に、武器や防具が潤沢にあるグループは手を上げるのを渋る。

「仕方がない。俺としても武力に頼りたくは無かったんだが」

といい、傍で立っている夢に視線を投げかける。夢が頷くのを確認し

「今、手を上げたグループのみで最後の部屋の物品を分配する。奪おうとするならば、武力をもってそれに当たる!」

傍らにいる夢が見せた先ほどの戦闘が、手を上げていないグループの頭に浮かびあがったであろう。2対1という状況下で1人を倒し、もう1人も手詰まりの状況下に自分なら持っていけるか。自分の命がかかった状況であの動きが出来るか。夢の姿を見る。頬から流れた血が固まっているとはいえ、無造作に放置してあり、手は腰に下げた短剣の柄に添えてある。無言で、反抗するなら容赦はしないと言っているように見える。実際はというと

(やべぇー、みんな見てるよ。顔とか赤くなっていないか。早く、早く終われぇ~)と願っているだけなのだが。

おずおずと武器を多く持っているグループから手が上がれば、あとは皆促されるように手を上げた。それを見た信藤さんが

「代表者と護衛という名目で一名だけここに集まってもらいたい。グループ内で不穏な動きがあった所は、他のグループから制裁されても文句は言えないからな」

夢はというと、護衛役ではなくただの抑止力である。護衛には巖真がつく手筈である。他のグループに余計な不安を与えないため、早々にグループへと戻っていく。

 グループに戻ると、植田が

「上手く言ったな。これで当面の不安は解消されたわけだ」

「確かにね。でも、これからは寝るときに見張りを立てないといけないし、決めることはまだ沢山あるよ」

と植田に言い残し、グループの隅の方へ移動していく。戦闘での疲れや、人前に立つなど不慣れな事をしたおかげで体が異様に疲れていた。少しばかり、寝ていても誰にも文句は言われないだろう。どちらにしろ、食料の分配が終わったらここを出る羽目になるだろう。この閉鎖された空間にいても暗転することはあっても好転することは100%ない。2日前までは、こんな事になると思っていなかった。その日を適当に暮らし、将来も食べる分だけ稼ぎ生きていくと思っていた。一人暮らしをするようになってから、元から人との繋がりを信じられない部分は強くなった。両親にも俺は一生独身だと思うと宣言したこともある。夢は、夢を追うばかりに現実の関係に希薄なのかもしれない。そんなことを考えながら壁に背を預けると、壁の冷たさが戦闘の余韻の残る体を冷ましてくれた。ふと、自分だけローブも何も来ていなかったことを思い出し、ポーチの中を探る。このポーチについても次に目が覚めた時に言わなくてはなと思う。ポーチの中から白いローブを出したとき、一緒にあの『ブレスレット』も出てきた。

改めて、ブレスレットを観察してみると、金色の輪に付いている青い宝石の部分には、見たこともない紋様が彫られている事に気づいた。考古学まではカジったこともなく、意味のある紋様なのかはわからなかった。白いローブに袖を通し、フードを頭にかぶり外界の音を極力遮断する。

そして、ただ、なんとなくブレスレットを腕に通してみた。

そう、なんとなく。

普段ならしないと100%しないと思うがこの時ばかりは、色々な疲労で深く考えていなかった。そして、そのまま深い眠りへと沈んでいく。

ブレスレットが、一瞬淡く光った事に気付かず。

ここが、ターニングポイントだったと後で思い出すが、その時はただ、疲れを癒したかった。



こんばんわ^^

第六話からやっと、少し本編へ歩き出せそうです。長かった!やっと、ファンタジーぽくなれるかなぁ・・・

見てくれている方に感謝を(^^)/拙いながらも頑張っていきたいと思います。では、また次の話で~ノシ

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