第四十話 オーガーと光の騎士と守護女神
久々の投稿となります。長らく開けていてすいませんでした。
社会人って辛いと思っております。
誤字、脱字ありましたら報告していただけますと喜びます。
巖間達は東門が見える所まで近付いた。そこにいたオーガーと呼ばれる魔物の巨体が目に入った。
「おいおい、何だありゃ…」
巖間もその巨体に内心驚きが隠せない。ギリアムが
「周りの雑魚は俺達が引き付ける。お前はアイツを倒す事だけを考えろ」
ギリアムに対して目だけで頷く。
(やれる、俺なら出来る!)
「巖間任せたぜ、俺達も雑魚を片付ける。お前の周りには一体も行かせねからさ」
植田達は左側の敵を倒しに行く。雑魚とは言えど死ぬ危険はある。それでも、植田は自分の役割を果たしに戦場へ向かったのだ。植田の後に付いていく仲間を見送りながら、最後に残った刈田が
「無理しなくてもいいんだよ?無理ならみんなで頑張ろう?」
刈田は心配そうに巖間を見つめる。
「大丈夫だから心配しないで。そっちこそ気をつけて」
名残惜しそうにしながらも刈田も植田達に合流していく。
「クリスハイト、殺れるよな、俺達なら。」
(当たり前ぞ!我らがあんな鈍重な化け物に負けはせぬ。よく見てかわせば勝機は必ずある)
「了解」
クリスハイトのその自信に苦笑する。だが、その自信が後押しとなりオーガーの元へと巖真は駆け出した。オーガー側も巖真の存在を認めたかのように咆哮をもって応じた。
「グオォォッッ…!!」
その咆哮に顔をしかめる。が、油断はしない。オーガーの一撃が直撃すれば、加護があったとしても悲惨な末路を辿る可能性があるからだ。
(最速で駆け抜けて、背後を取る!)
今までのオーガーの動きをみた感じだと、体の動き自体は速く無い。最速で駆け抜ければ背後を取れると巖真は思っていた。だが、現実はそれほど甘くは無かった。オーガーは巖真が射程に入った瞬間、必殺の拳撃を巖真が動く先に放って来たのだ。それを察知したのは精霊であるクリハイトだった。
(主よ、今すぐ左へ飛べ!)
その警告に従うように体を左へと投げ出した。その脇を拳が通り抜け地面を叩く。地面に拳が当たった際に、石材が吹き飛び巖真の盾に当たり音を立てた。着弾地点はというとオーガーの拳状に陥没していた。投げ出した体勢のまま動きの止まっていた巖真にオーガーの拳が降り注ぐ。
「くっそっ!」
ひたすら避ける。拳が地面に叩きつけられる度に飛び散る石材を剣と盾で弾きながら、相手の一瞬の隙を覗う。生半可なカウンターでは、意味が無い。相手の渾身の一撃に合わせてこちらも必殺の一撃をカウンターで叩きこまなければ、オーガーの治癒能力の前には意味が無い。ただのその一瞬の隙をひたすら待ち続けた。そして、その瞬間が訪れた。しびれを切らしたオーガーが両手を思い切り引き絞り、
「ウルガァッ!」
咆哮を轟かせながら、巖真めがけて拳を撃ち出した。今までの拳打よりも速い一撃が巖真へと迫る。左右に避けるスペースを与えない。その為の両手での一撃である。
(主よ、来たぞ!臆するな!活路は常に前にしかないのだ!!)
クリハイトの言葉に促されるように、巖真は迫り来る拳に対して前へ進む事を選択する。風が唸りを上げ、必殺の一撃が後ろへ流れていく。髪の毛が数本巻き込まれたが、問題は無い。顔を上げれば、目の前には両手を伸ばした前傾姿勢のオーガーの姿があった。そこに、カウンターの一撃を叩きこむ。
「光剣技『十字架の剣撃』」
加護を得た光の剣が、オーガーの頭から胴体を十字に切り裂き。
「響け!十字の光よ!!」
巖真の声をうけ、斬撃の線から光が迸りオーガーの体を包む。
「ッッッ・・・!!」
声の無い悲鳴を上げながら、オーガーは倒れていった。
こちらを見ていた植田が腕を高く上げガッツポーズをしていた。それに剣を上にあげる事で応えて見せていると、ギリアムが
「オーガーの首を刎ねろ!オーガーの生命力を舐めるな!!」
さっきの一撃に確信を感じていた巖真はその声に含まれる焦燥感に戸惑いを感じたが、言われたようにオーガーの首を刎ねる為振り返った。その瞬間、左手の盾に大きな衝撃を受け、脇の建物の壁まで吹き飛ばされ、叩きつけられた。
「グハァッ!」
胚から空気が漏れた。自分が立っていた場所を見ると、目が血走ったオーガーが立ちあがっていた。立ち上がる際に裏拳で巖真を攻撃したのだ。壁際から立ちあがろうと懸命に体を足を動かすが、どこも言う事を聞かない。先程の一撃と壁に叩きつけられた際の衝撃、そして、加護を最大限に使った攻撃の反動が体に襲いかかっていた。動かない獲物にオーガーはゆっくりと確実に近づいていく。その両手には、今までとは違い黒い何かが絡みついている。今度こそ、オーガーの本気の一撃である。そして、その一撃が巖真へとおとされる。刈田の
「巖真ぁぁぁっっ!!」
絶叫が木霊するが、オーガーの一撃は止まらない。その無慈悲な一撃を見上げながら巖真は思った。
(クリハイト、力をかしてくれてありがと。お前がいなかったらここまで出来なかったよ)
(諦めるな!諦めたらそこで終わりぞ!!)
クリハイトの声を聞くたびに、力が湧いてくる。それでも、体は遅々としてしか動かない。それは、迫り来る死を回避するにはスピードが圧倒的に足りなかった。そして、
ドゴォン!
音だけが鳴り響いた。
余りの衝撃に壁が吹き飛び粉塵が舞い上がる。その土煙がはれた時、そこにあったのは無事な巖真の姿と、巖真の前に浮かぶ大きな盾だった。その盾がオーガーの一撃を止めたのだ。遅れるように声が戦場へ届いた。
「堅盾『盾女神の大盾』」
その声は1人の臆病でも、怖くても逃げなかった女の子の声だった。
更に声は聞こえる。
「空中に浮かぶ短剣」
声に応じ、幾つもの短剣が空中に現れる。そして
「走れ!敵を撃て!!」
魔物やオーガーへと襲いかかる。
オーガーを倒すには遠距離からの魔法攻撃が一番である。だが、短剣ではオーガーの命までは奪えない。その事をオーガーは本能で理化しているのか、目の前にいる巖真へとただ拳を叩きつける。盾ごと粉砕し殺す為に、ひたすら拳を振う。だが、盾にはヒビすら入らない。そして、オーガーへと無慈悲な死の宣告が届いた。
「巨人の振う大剣」
オーガーの頭上に巨大な剣が出現し、重力に引かれるままにオーガーを頭から切り裂いた。
巖真の元にオーガーを倒した人物が近づく。そして、傍らに座り込み
「穏やかなる癒し」
巖真の傷を癒した。助けてくれたのは紫波だった。その目には、ただ怯えているだけの光ではなく、今は立ち向かう為の希望も宿していた。
「アァ!?オーガーがヤラれたじゃねぇか。」
魔物に囲まれた青年が隣にいるローブの者へ問いただす。
「2人精霊使いが居るようです。さすがにオーガーといえど2人はきついですよ」
「所詮は魔物かヨ、いつになったらオレが殺しにいける?」
「焦らないでください。今日は様子見です。明日からは地獄を見せて差し上げますよ」
「ハッ!『稀人』の大半に逃げられた奴がイウ台詞じゃなぇな。まぁ、イイ。これ以上退屈させやがったら、テメェも殺す」
それだけ言い残し青年はどこかへ消えていく。大方、嬲りにいったのだろうが。
ローブの者は城壁に囲まれた都市を見つめ
(あなた達の棺桶としてはいささか大きすぎますねぇ、自信の運命を呪って死ぬがいい)
口元に不敵な笑みを浮かべていた。
城塞都市ルーラン攻防戦も佳境です。そろそろ主人公も出しますのでお楽しみ?にしていてください。
次はもっと速く更新できるようにがんばります!
では、また次回お会いしましょう~ノシ