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第三十九話  光の騎士の道

巖真達は戦場となっている東門へと辿りついた。まさにそこは、地獄絵図であった。目に入る範囲には魔物や魔獣といったものが必ずいる。都市を守るために配備されていた騎士や兵士よりも魔物たちの数の方があきらかに多い。この状況なら討ちもらしが出るのも納得する事が出来る。巖真は仲間達に【光の加護(レグリス)】が掛かっている事を確認し

「ここからは最低でも2人1組で確実に敵を倒して行こう。魔物はとくに必ず止めを刺す事。それさえ、守れば俺たちなら出来るはずだ」

皆も巖真の指示に頷く。そして、周りで戦っている兵士や騎士たちの援護へと駆け出していく。

(クリスハイト、ここにいる全員にレグリスはかけれるか?)

<出来ない事は無い。代償は貰うが>

代償といっても効果に見合うだけの力を取られるだけである。

「我が光、全てを守りし盾となり、剣とならん【大いなる光(カルバ・レグルオ)

巖真の体から放たれた光が、この地獄とも言える戦場で戦う全ての者たちに降り注ぐ。その光は、彼らの武器に光の加護を与えていく。巖真も刈田と一緒に目につく端から魔物や魔獣を斬り殺していく。



「副長!『精霊使い』が現れました!味方してくれる模様です!!」

部下の報告を聞いた副長事、城塞都市ルーラン守護騎士団 副長 ギリア・ドントスは持ち前の大斧を目の前の魔物に叩きつけながら、

「馬鹿野郎!!夢見てないで敵を殺せ!!『精霊使い』がここに居るわけがないだろうが!!」

報告にきた部下に怒鳴りながらも、その手は死を量産していく。

『精霊使い』と言うのは、1人で百の軍勢を超えるとまで言われる。その為、国が責任をもって保護というなの管理を行っている。こんな辺境の都市に居るわけがないし、覚醒しやすい『稀人』も団長らが王都へと移送しているのだ。そんな状況で嘘の報告をしてきた部下をもう一度怒鳴りつけようとした時、ギリアの大斧にも巖真の光が降り注いだ。周りで戦っている兵士や騎士全員に光の加護が付与されていく。

「これは、白系統の力か。確かにこれだけの規模となると『精霊使い』がいるな」

精霊使いの存在も気にはなるが、今はそれよりも目の前にいる魔物たちを殺しつくすのが先決である。ギリアの大斧は先ほどよりも多くの死を量産し始めた。


巖真の加護を受けた兵士たちは先ほどよりも早いベースで敵を倒していく。相手は、魔物として黒の力を微力ながら帯びてはいるが、素の状態でも倒せない事はない程度のレベルだからだ。光の加護は白の神の系統であり、黒の神の力に対して効果が高い。逆もまた同じだが、下級の魔物クラスでは抵抗することすら出来ずに、殺されていく。戦況は、劣勢から優勢へと移っていく。


「オイ、『中』に攻め込んだ奴らが死んでいくぞ」

魔藻の軍勢に囲まれた青年が隣に居る、ローブに身を包んだ者に疑問を飛ばす。

「どうやら、あなたと同じ『稀人』が居たのでしょう。その者が覚醒したという事でしょうか」

「チッ、楽に落とせると思ったんだがなァ。まぁ、いいオーガを行かせろ」

「これは前哨戦ですよ?それでも行かせるのですか?」

「あぁ?前哨戦と決めたのはお前らだろうが。敵は殺せる時に殺す。それだけだろ」

「・・・ わかりました。オーガを投入します。ですが、明日もまだあるのですから今回は様子見ですよ」

「あぁ?わかったよ。お前に任せる」

傍らにいる彼としては、ここで一気に決めてしまいたかったらしいが私としてはそれは不本意である。

(まだまだ、焦っては仕方ありません。ここはじっくりと徐々に相手の戦力を削る時ですよ)

ローブの中で不敵な笑みを浮かべた。


巖真達が加わった事と巖真の光の加護により東門前の広場にいた魔物たちはあらかた掃討されていた。

(このまま門まで行って閉じるとするか)

そう思い、巖真は植田達と合流し東門へと移動していく。移動しながらも魔物たちを斬り殺していく。

「これなら、楽勝だな!巖真」

「確かにこれならなんとかなりそうだな。」

「おお!マジでこれならいけるって」

巖真達が適当に軽口を叩きながら、東門へと向かっていた。その時、東門の方で大きな音と怒声が聞こえた。そして、門方面から戦っていたはずの兵士体が走ってくる。

「オーガが出たぞーー!弓兵は直ちに高台へ移動しろ!!」

その声は切羽詰まっていた。そこから察するにオーガというのはこれまでの魔物よりも強い個体らしい。

それでも、巖真達は歩みを止めない。自分達が行く事で何かが変わるかもしれないからだ。


副長のギリアは最前線とも言える門付近で戦っていた。その存在に気付いたのは彼の長年の勘であった。

「なんかヤベェな、一度下がるぞ」

その指示に周辺で戦っていた兵士たちは怪訝な視線を投げかけるが、ギリアは自分の勘と言うのを信じている。

「一時撤退!退路を開け!!」

指示を出したその瞬間、勘に促されるように後方へと飛ぶように下がる。

下がったと同時に目の前に大きな拳が通り過ぎて行った。見上げた視線の先には

「オーガ・・・だと!?撤退!退却しろ!!今の状態でオーガはムリだ!体勢を立て直すぞ!」

周辺の騎士たちをつれ、後方へと下がる。

(オーガまでいるのかよ。これはマジでヤベェかもしんねぇな)

オーガとは、全長は5mほどの2足歩行の巨人である。その重量から打ち出される拳はただの兵士を一瞬で肉塊へとかえる。そして、驚異的な回復力をもった魔物である。ただの傷ならば数秒で塞がる程である。常套手段としては機動力の無さを狙い、遠距離から高威力の魔法で殺す事だ。


(クソ、魔法を使える奴は団長がほとんど持っていきやがった。どうする・・・)

後方へと下がりながら、考えている途中兵士以外の奴等とすれ違った。

「オイ、お前ら、どこへ行く!!」


いきなり髭面で強面のおっさんから怒鳴られた。

「どこへって、そりゃ門を閉めに」

と植田が返す。

「門の前にはオーガがいる。お前らじゃ無理だ。とにかく下がれ」

それにムッとしたのか植田が

「ムリとかおっさんが決める事じゃない。おっさんに出来なくても俺たちになら出来るかもしれないだろ」

「お前らみたいな子供に何が出来る!とにかく今は下がれ!」

「おっさん、こっちには巖真がいるし、負けそうになったら下がるから気にしないでおっさんたちは下がれよ」

「巖真ぁ!?だれだそりゃ・・・」

怪訝な顔をするギリアの前に巖真が進み出る。

「先程の仲間の植田から紹介されました 巖真と言う者です。オーガとはそれほどまでに強いものなのですか?」

進み出てきた青年は、ギリアたちよりも強い光の加護を宿していた。その瞬間、ギリアは

(コイツが『精霊使い』か。なら、試す価値はあるか・・)

「お前は、『精霊使い』なのか、なら、遠距離から殺す事が出来る技はあるか?」

それを聞いた巖真は

(クリスハイト、出来るか?)

<我は、騎士ぞ!卑怯な真似は出来ぬ>

騎士が遠距離から攻撃すると卑怯らしい。

「まだ、あなたの言う『精霊使い』となって日が浅いもので。そういった技はありません。」

「なら、辞めとけ。オーガの回復力の前にこの程度の加護じゃこっちのスタミナが切れる。」

それを聞いた巖真と名乗る精霊使いの青年は、ふむと頷き

「加護が強ければいいんですね? 集え、光よ【明光の加護(レグリス・リオ)】」

その瞬間、巖真の剣と盾に先程よりの数十倍の加護が宿る。それをみた植田が

「ライトセーバーだな」

巖真の剣はすでに、もとの刀身の数倍の長さまで光の剣となっている。

それに苦笑しながら、巖真は

「これならどうでしょう?」

それをみたギリアは、驚きながらも後ろにいた兵士たちに

「オイ!お前ら、いまからこいつらを援護する。オーガを殺るぞ!」

オオ!と後ろから声が聞こえてくる。

「そう言う事だ、いっちょよろしく頼むぜ、『精霊使い』さんよ」

「私の名前は先程言いましたよ、精霊使いではなく巖真です。こちらこそ、よろしくお願いします。副長のギリア・ドントス殿」

ギリアはこの青年が自分の名前をしっている事に驚いた。副長としてこの都市の住人には知られてはいるが、初対面で、おそらく『稀人』の青年が知っているとは思わなかったからだ。

「あー、わかったよ、巖真。お前以外の奴じゃオーガは倒せねェ、何があってもお前はオーガだけを倒せ。あとはこっちが受け持つ」

その返答に満足したのか、巖真達は門へと走って行く。

光の加護を受けし軍勢が、一度は放棄した戦場へと戻って行く。

その先にある明日を得る為に。

先頭は光の騎士を宿し青年とその仲間達。

彼等は歩みを止めはしない。止まる事で切り拓ける未来はないのだから。


久々の投稿です。

風邪をひいたり、仕事に追われたりさんざんでした。

今年こそはと思っていたのですが。待っていた方(居ないと思いますが)申し訳ありません。

まだまだ拙い文章ですが、これからもよろしくお願い致します。

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