第三十五話 歯車は知らずに回る
新章突入かなっと思います
「せいやッ!」
夢の気合のこもった声が響き渡る。いつもの日課になりつつある水神との素手での稽古だ。あれからルルゥも何故か魔術の修行以外でも見に来るようになった。
フェリオスとの死闘が終わった後、神力が尽きかけていたルルゥは、自分の神域を閉ざした所で力尽きてしまい、夢が家まで運んだのだ。夢自身もそのままルルゥの家の床で寝たのだが、次の日の朝事件が色々あったらしい。夢もルルゥもその話題はしないようにしている。
夢の周りにはあの日から色々と変化があった。最初にルルゥの態度が少し、ほんの少しだけ柔らかくなったことや、フェリオスという助言者兼居候兼友人を得た事、そして自分が気をまったくといって扱えないという事を知った。
フェリオスはあれから呑気に夢の魔力を使い、狼として実体化したりしていた。サイズは肩に乗る程度ではあるが、本人は別に気にしてはいない。そして夢に適当な助言と神話やらを聞かせ、腹が減る訳も無いはずなのに飯を食べて夢の中に戻っていく事を繰り返していた。本人いわくヒマつぶしだそうだ。
そして、夢としては気が扱えないと言う事の方が問題であった。気が扱えないという事は体の強化術や気を用いた攻撃等が出来ないからだ。気を用いた攻撃は魔術で代用出来るとしても体の強化術を魔力でやるとなると10倍の魔力が必要になる。魔力に関しては、魔霊であり神の生まれ変わりであるルルゥにも匹敵する程であり常人以上だが、それを加味しても気による強化術が使えないのは痛い。元の世界で夢もたまに言ってはいたが
「世界は全てにおいてバランスがとられている」と。
イケメンは女子にもてるがオタクにモテない。イケメンからすればオタクにモテなくてもいいだろうが、どこかに偏りが出ればどこかで偏りが生まれる訳だ。夢は魔力が多い分、気力が少ないという結果になったのだろう。
「今日はここまで!」
水神の一声で稽古が終わる。夢は荒い息を整えながら一礼を行う。礼に始まり礼に終わるのが武術の基本だからだ。
「ありがとうございました!!」
そうすると水神が近づいて来て
「なぁ夢よ、お前らの世界の話を聞かせてくれ」
水神はよっぽどの夢の元の世界に興味があるのか、ここ最近は稽古が終わるたびに頼みにきていた。夢としては今日は、フェリオスの力を使う訓練やら魔術の練習をしたかったため
「昨日も話しただろ、今日はダメだ。」
「それは分かっておるが、頼む!」
全然分かってないだろと思いつつ、どうやって諦めさせようか夢が考えていたらルルゥが
「リヴァニウス様、少しお話があります。今からよろしいですね?」
「むぅ?お前の話はつまらん。そんな事より夢の話が聞きたいのだ!」
そんな事を喚く水神のそばにスッとルルゥが耳打ちする。
「なんだと!?――――――分かった。すまぬが、夢よ。話は後にしてくれ」
夢としては願ったり叶ったりである、そして水神はそれだけ言い残しルルゥと一緒にどこかへ移動していく。
(なんか有ったのかなー)
と思いつつも自分の修行に入る。独りになった夢の肩に白銀の狼が現れる。
〈合言葉〉
それに集中しながら
「分かってるよ」と答え紡ぐ。
「天に有りし月に咆える狼は何ぞ想ふ。《天狼咆月》」
その瞬間、夢の体を神殺しの魔狼の力包み込む。最初の頃に比べて大分安定して来た。最初は包んだ力が勝手に暴走し、周りにあるものを手当たり次第喰らい尽くしていたが今では夢の意思で動かせるようになってきた。そのままの状態で一通りの型を練習し力を解く。その瞬間ドッと疲労感が体を包み込む。
〈まだまだだな・・・〉
「最初の頃よりはマシだっつうの」
最初は解いた瞬間ぶっ倒れた。今はそれが、立っているのだからたいした進歩だと思う。
〈神ごとき力を扱うにはお前の体は貧弱すぎるのだ〉
一度、フェリオスに聞いて見たら構造的には問題はないらしいが神格的に足りないらしい。その反動が体に疲労感という形で現れているとのことだ。フェリオスいわく
〈神ごとき力を扱うならばあの女のように人とは違うモノになるしかない〉
確かにルルゥは魔霊であり、神である。そして、魔霊と人は姿は同じでも本質はまったく違うのだから。
フェリオスの力を使った訓練を終了し魔術の訓練に移ろうとした時、水神とどこかに行っていたルルゥが戻って来ていた。そして、
「夢、あなたに大事な話があります」
その顔はポーカーフェイスなルルゥには珍しく、焦燥と不安がにじみ出ていた。
そして、運命は動き出す。
白も黒も新たな力を加え、加速する。侵色戦争へと
久々の更新となります。申し訳ないです。
社会人一年目にして、上司と二人しかいないラインなのに関わらず
上司が異動になったりと色々大変であります。
更新していきたいんですが、地元の友人に誘われて始めたアーケードゲームにハマったりとすいません。読んでくださる人もいるので頑張って行きます!
では、また次回お会いできたらいいなぁと思います。