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第二十七話 過ぎた『技』は身を『削る』

なんで俺は前の話を三十二話したのだろうか・・・

直しておきました。

巖真が色々、悩んでいる頃夢はというとこちらも悩んでいるのであった。

『神域』というのは、外の世界と比較すると時間の進むスピードが違うらしい。これを、水神から聞いた時、某有名マンガ「龍玉」のある部屋を思い浮かべたのは仕方がないと思う。それも、『神域』には階層という概念があり一番下の階層ならそこまで外の世界との「ズレ」はないらしいけど、水神や魔霊(ジン)が居るような階層だと外との誤差は約0.5日だそうだ。伝聞系なのは、水神やルルゥに聞いても、外の世界を気にしていないからだ。まさか、外の1時間がこっちの半日だと夢が知るのはもう少し後の事である。


誰もが夏休みの最後の日とかに欲しいと思う空間で夢は、水神のシゴキとルルゥの「教育的指導」と言う名の魔術訓練を受け続けていた。水神リヴァニウスと体術の訓練をしていた時、水神から

「お前は、『気』の力が『魔力』に比べて極端に少ないな」と。『気』とは普通に身体の持つ力であり、『魔力』とは精神依存の力である。『気』が多い方が近接戦闘においては遊離になる事が多いそうだ。単純に身体能力の強化で使えば、気×1.5倍=魔力消費くらいだそうだ。いや、それでも「こっち」の世界の人と同じくらいには扱えるんですよ?と誰も聞いていないだろうけど反論しとく。

簡潔にいうと『稀人』としては極端に少ないそうだ。まるで誰かに奪われているようだって水神は言ってたけど、特になんか有った訳でもないし、元からそういうもんなんだろうと夢は思っている。そのせいか、最近の水神とのシゴキは「素体」である身体の動かし方に重点を置いた修行になりつつある。

 魔術の訓練はというと、ほとんど一人っきりに近いものがある。ルルゥは見てはいるが口を出したりはしない。それは、魔術の使う感覚がイメージ、即ち本人の問題である為教える事の方が少ないのからだ。ルルゥの役目はというと、夢が魔力の使い過ぎを防ぐためにいる。一度、夢1人で訓練をさせた時に魔力の使い過ぎによる精神疲労で倒れた前科があるからだ。

その時の言い訳が

「つい、楽しくてね!!」だったらしい。

向こうの世界では使えなかった魔術にハマってしまうのも仕方がない事だろうが、それで倒れるのはどうなんだ?といのがルルゥの意見らしい。

それからは、夢もぶっ倒れるほどの無茶をしなくなったのだから良しとすべきであろう。


一通りの訓練が終われば、後は自由である。夢に与えられた一室にはたくさんの本が置いてあり、夢も最初のころはこれらの本を読んで過ごしていた。だが、読み始めて外の時間で一日、即ち内部時間で一週間足らずでほとんどの本を読み切ってしまった。それは、夢が持つ唯一の特技ともいえる速読のおかげであった。

あくまで、本の内容を「読んだ」だけでありそれと「理解」しているかは別であるが。それでも、巖真達が調べていたこの世界の常識については有る程度の「理解」はすでにしている。自分の置かれている状況が「特殊」という事も。


 そして、夢は自由時間を使い一度読んだ本の中でも魔術に関する本を片手に訓練を始める。

その訓練とは魔力の『圧縮』である。本には、魔力も気力と同様に身体に纏わせたりできる。ただ、燃費が悪い為使われる事が無いとも書き添えてあったが。

この文を読んだときは、(ならなんで書いたんだ・・・)と突っ込みたくなったのは夢だけであろうか・・

その本によると、『圧縮』とは2の力を1の力にする事、簡単に言えば、2の魔力を1の魔力の規模にすればいいと言う事だ。通常は魔力を増やせば、増やした分だけ規模は大きくなる比例関係が成立している。2の力を『圧縮』し、1の規模にしたらどうなるのか、それは、魔力の『密度』』が上がる事になる。『密度』が上がれば、その範囲内での威力が上がる事と同じである。だが、この『圧縮』というのが思った以上に難しい。すでにこの練習を始めて3日目であるが、2の力を1の規模に出来ても3の力を1の規模にくらいならそれほど難しくは無かったが、10の力を1の規模に・・・100の力を1の規模にとなってくると難しくなる。今の夢では、100>>1に出来る確率は良くて10%である。それも、集中できる環境下での事であり実戦で使うとなると10>>1にすることすら難しいかもしれない。書いてあった本にも、『圧縮』という技術は素晴らしくとも使える場面が無い。と記載されていた。

なら、なぜ夢が『圧縮』に拘るかと言うと、『圧縮』のもう一つの側面があったからだ。それを夢は『解放(かいほう)』と名付けた。『圧縮』の本を書いた著者は知っていたのかは知らないが、2>>1にし、それを2の規模で解き放つと、範囲が2の時よりも大きくなる。それは、2の力でより広い範囲を攻撃できる事になるのではと考えたからだ。『解放』に気付いたのは『圧縮』の練習中に誤って集中力を切らし、魔力の制御が乱れた時の「暴発」で気付いた。最初は単純に「暴発」しただけかと思ったが、何度か試すうちに気がついた。

『解放』するには、一度『圧縮』しなくてはならない事。

『解放』した瞬間に魔力を注ぐ事で更に規模を大きくできる事。

この2点である。とくに2点目は、注ぐ魔力も『圧縮』の効果をある程度受けるのである。だが、『解放』した瞬間に注ぐ魔力だけが有効であり、タイミングはシビアである。『圧縮』率が上がる程、それはどんどんシビアになっていく。

 

そして、夢が今日行うのは、100>>1に『圧縮』し、それを『解放』し尚且つ、今瞬間に注ぎ込める最大限の魔力を注ぐ事である。


 自分の部屋から、少し離れた所にある湖の上で集中する。水神の神域であるせいかこの神域は水が多い。夢の部屋は湖の真ん中にあるロッジみたいな所である。水と言っても普通に歩く事が出来るのがまさに何でもアリの空間である。

そして、湖の上で深呼吸をひとつ

あとは、念じるだけ、研ぎ澄ますだけ、集中そして、『解放』のタイミングを捉えるように。

集中

集 中

集  中

集   中

段々と、周りの音が遠ざかる。感じるのは己の魔力と、その流れだけになる。

そして、

100の力を

1に『圧縮』し

それを解き放つ

魔力が膨れ上がり瞬こうと力を振う瞬間に

持てる力を注ぎ込む。

『圧縮』された魔力が、

解き放たれた魔力が

注ぎ込まれた魔力が

全てを破壊する『力』へと

変貌した。



その瞬間、夢は実験の成功と失敗を同時に知ることになった。


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