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第二十六話 道は、交叉すべく時を待つ

門といってもここは城塞都市である。門だけで東西南北に大きな門があり、その合間に小さな門がある。ルーランにある門は合計で8つであった。人の流れを見る限り、今回は大門の1つである東門に《|稀人〈まれびと〉》がやって来たらしい。巖真達が来たのも東門からであった。その事が巖真の頭から離れなかった。なぜなら、《稀人》は異世界の人である。即ちこの時期にやってきた《稀人》は自分達と同じ世界の人である。そして、自分達とやってきた方向が同じという事は、彼等である可能性が高かった。

東門に駆けながら巖真は考える。彼等がどうなるのかにも興味があるが、それよりも彼等が自分達の事をばらさないかの方が重要である。彼等がどうなろうが、巖真自身は知ったことではないと考えている。他の仲間達はどう思うか知らないが、この世界についても、自分達の立場についても彼等は〈無知〉すぎる。ここでふと、水瀬がよく言っていたなと思いだした。水瀬は

「〈無知〉とは、罪である。〈無知〉で有るが故に他を傷つける。そして、『俺は知らなかった。だから、俺は悪く無い』と言う。何が悪くないというんだ?知らなかったら全て許されるのか?知っていようが知っていまいが関係ない。起した事実は変わりはしない。そこに〈傷〉が生まれるのならば、それは〈罪〉だ。〈罪〉を負わない為に、俺達は〈学ぶ〉こんな退屈な教科書に埋もれ、必要がない〈知識〉に溺れ、それでも学ぶ。〈無知〉で有るが故に〈他〉を〈傷〉つけない為に。そして自分を〈守る〉為に。」

こんな事を言い出したのが、ただの学校のテスト勉強で人に勉強を教えている時だった。教えている相手にお前は無知だと言っているように聞こえたが、状況が変わればあの言葉の意味も少しは分かる。〈無知〉が故に彼等が俺達の事を話し、仲間に危害が加わる前に自分が出来る事に手を尽くす。今はそう心に決め巖真は東門へと、人が集まる中へと進んでいく。


東門へとついてみるとすでに人垣が何層にもわたって出来あがっていた。それだけ、この世界の人々にとって『稀人』とは意味のある存在であるということだろう。人垣をなんとか押しのけ、向こうから見えずこちらかギリギリ見える位置へ移動する。

やはり、巖真の想像した人物達が居た。それは、この城塞都市ルーランに来る前に別れた信藤たちであった。丁度、このルーランを守る〈軍〉の体調である男と話している。

(やっぱり信藤さん達か・・・それにしても人数が少ない気がする。それと服がやけに破れているな・・・どういうことだ?)

巖真達と信藤達が通って来た道はほぼ同じはずである。出現するであろう敵も同じはずだ。それなのに巖真達よりも被害を受け過ぎている気がしたのだ。丁度、その時〈軍〉の隊長である男が突然膝をついた。

見ていた周囲の人々からどよめきが上がる。その隊長が周りの人すべてに聞こえるような声で

「ここに居られるは、『稀人』の方々である!今回の【闇の胎動期】に合わせ我らが主神が呼びつかまった英雄で在られるぞ!!」

それを聞いた瞬間、人々から大きな歓声があがる。

その声に煽てられるかのように、信藤達が人々に手を振っている。その様子を見た巖真は周囲との温度差を感じていた。

巖真達の世界ではこのような『英雄』と呼ばれる人はいなかった。だからこそ、この民衆の盛り上がりとただの人であるはずの自分達との温度差が余計に感じられていたのだ。そして、信藤達は隊長に連れられ〈軍〉の本部へと向かうらしい。それに合わせて人々も元の生活に戻る人やそのままついていく人に別れていく。その人波にまぎれるように巖真と刈田もそこを立ち去った。


信藤達がこの城塞都市ルーランに来てから2.3日が経った。この2.3日の間にも何度か見かける事はあったが〈軍〉の護衛を連れておりこちらからもあちらからも声を掛け合う事は無かった。巖真は、信藤達との接触を避けるように植田や他の仲間に頼んだ。やはり、皆難色を示したがなんとか納得してくれたと思う。

この2.3日巖真は、調べ物を刈田にまかせ信藤達の様子を観察し続けた。その結果、感じた事は〈軍〉の護衛は

(護衛と言うより、見張りと言った方がしっくり来るな・・・信藤達を逃がさないようにするためか?)

護衛と言うのは、周囲に気を配るものだが、信藤達の傍に兵はどちらかというと信藤達に気を配っているように見えたからだ。それに、噂話程度があと数日したら信藤達は『首都』へ向かうらしい。そこで、今代の英雄王に謁見し晴れて『稀人』としての地位を得るのだと言う。これは、今までの『稀人』が現れてからお決まりの行事らしい。


巖真自身、このまま生活していく気は無い。だが、今は信藤達のように名乗り出るのもなぜか気が引けた。自分以外の者の意思で踊らされているようでたまらないのだ。この世界に飛ばされただけですでに自分の意思ではない。これ以上、好き勝手にされてたまるかとも思うが、今の現状では元の世界にもどる手段すら分からないのだ。結局は信藤達のように〈軍〉へ入るのが一番の近道なのかもしれない。だが、それでも今ばかりは彼等と共に行く気には何故かなれなった。

この決断が、彼等と巖真達との立場を変える事になると思わなかった。彼らの非日常がすでに日常になりかけている時、この世界の非日常がすぐ傍まで迫っているとは誰もが思いもしなかった。


 巖真が一度は別れた仲間と会いそして、また別れの選択をしている時、夢はまだに青の神域】で水神とルルゥにしごかれていた。だが、夢も遠からず城塞都市ルーランへと行く事になる。そこで起きた事件から仲間を救うべく。そして、別れた仲間と出会い、道は幾重にも交わりまた、それぞれの道へと回帰していく事になる。


誤字脱字ありましたら、すいません。

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