間章 他の仲間達の日常
お気に入りが増えてたりするとやる気が出るのは俺だけでしょうか?
「やぁ、おはよう!今日も調べ物かい?」
「ええ、そうなんです。なかなか、いい文献が見つからなくて・・・」
巖真達がこの城塞都市ルーランに来て、すでに5日が経つ。その間に、ルーランにある図書館や酒場などで聞き込みや社会がどのようなシステムで動いているのかを調べたり周りの住民と交流を深めてきた。その甲斐あってか徐々にではあるが気さくに話しかけられたりもするようになりつつあるが、本命の調べ物自体は一向に進んではいない。その為、巖真と刈田は今日も図書館へと向かうのである。他の仲間達はと言うと、宿代を稼ぎに出かけている。
「中々、見つからないね・・。巖真」
「そうだね。なんか重要なとこだけ伏せられている気がするね。」
今まで図書館で村や門番で聞いた『稀人』について調べていたが、ほとんどの文献に英雄神に導かれしモノとしか記載が無いのがほとんどであった。そして、住民や司書の方の話では『稀人』とは神話における英雄神が召喚した人物、後の初代英雄王になった人物が元になっているらしい。最近の意味では、闇の躍動期に英雄神が召喚することから、裏では闇の訪れ人、光の導とも呼ばれる事があるらしい。総じて、この世界の人よりも身体能力などが秀でている個体が多いとの話だった。そして、『稀人』候補は首都へ移送され現英雄王との面会を経て正式に『稀人』と認定され、軍へと加入し魔物、魔獣と戦っていく事が決まっている。
軍への加入を断った『稀人』は居ないのかと聞いたところ、表舞台にはそういう話は出てこないとの事だ。関係がない話かもしれないが『稀人』と偽る事はこの国では重罪に当たる。『稀人』と認定される事で様々な恩恵を受けれる為、それを目当てで偽る輩が多いらしいが英雄王に代々継がれている方法で調べれば『稀人』かどうかなどすぐ分かるらしい。
この話をしてくれた司書の方があまりにも詳しすぎた事で一時は、疑っていたが話を聞くと昔は、首都で働いていて、その時に首都の保管庫にある書物や噂話を自分でまとめたとのことだった。今はすでに、一線から身を引いた気さくなおじいさんって感じであった。
「今日も調べ物かい?毎日、せいが出るねぇ。」
顔なじみになりつつある司書のおじいさんに声をかけられる。
「おはようございます。田舎から出てきたもので紙の書物が珍しくて。」
「確かに、まだまだ紙の書物は普及してるとは言い難いからねぇ。まぁ、あまり根を詰め過ぎるとモヤシになっちまうから気いつけな。」
「はい、たまには外の空気を吸いに行きますよ。」
「おじいさん、これ。あげる!」
刈田が取りだしたのは、来る途中の店で買ったお菓子だ。元の世界で言うとどら焼きに近い食べ物である。
「あとで、一緒にお茶でも飲もうね♪」
「おお、これはあの店のかね?わしはこれには目が無いんだよ。いつも悪いねぇ。」
「ううん、いつもお世話になってるのはこっちだし、それにおじいさんの話は面白いから私は好きよ」
お菓子を渡しながら刈田が言う。巖真はそれを見ながら図書館の奥の方へと進んでいく。
(今日は、どこらへんを攻めるか・・・『稀人』を愚直に調べてもほとんど意味は無かったしなぁ・・・初代英雄王とか神話について調べてみるとするかな)
書棚を歩きながら、今日調べる範囲を決めていく。巖真が探していた書棚辺りに来たころ、刈田も合流した。小さな声で
「いつも、ありがと。」
「ううん、あんまり調べ物で役に立ってないからアレくらいはするよ。」
心の中ではそんな事はないと思いながらも、
「俺は、神話のあたりから調べてみるよ。かっちゃんはどうする?」
「う~ん、基礎的な社会の仕組みとか調べてみようと思うの。いいかな?」
「わかった。俺たちに足りないのは知識とか常識だから頼むよ。」
「うん、それじゃまたあとでね」
刈田が自分の調べ物をする書棚に向かっていくのを見送りながら、適当に目の前にある世界の成り立ちとか神話~一から百まで全て丸解り!~とかいう怪しげな本とか、色々手にとって傍にある机に積んでいく。何冊かを机の上に積み、これでとりあえず取るのを止めようとした時、ある著者が目に入った。
その著者の名は「アルツ・ハイゼン・ロウヒベルト」
勿論、巖真はこれが誰だが知るはずは勿論無い。だが、なぜか目にとまった。
(俺、なんか聞いたことあるな・・・なんだっけ?)
どこか、頭の奥底で引っかかっている記憶を思い出そうとする。
(う~ん、確か・・・この図書館に来た初めての日か?あの司書の爺さんから基本的な事を聞いたときに爺さんが首都の保管庫からパチったとかいう本を見せてくれた時にあった本の1つに「アルツ・ハイゼンのメモ書き」とかいうのがあったよな)
魔術や術技など、量自体は少ないのだが分かりやすくまとめてあった本だから覚えていたのかもしれない。
これは期待できるかもと思いながら「アルツ・ハイゼン・ロウヒベルト著 創世神話とその解釈」を手に取り、机の上に広げて読み始める巖真であった。
~創世~
世界は1つの神の手によって作られた。神は、様々なモノを作ったとされる。私達が暮らしているこの大地も作ったのは神だとされている。先程、モノと書いたがこれは神が大地や空気といった物以外にも、今でいう、英雄神や暗黒神を創ったとされているからだ。そして、世界がある程度成熟し、神々もある程度育った頃1つ言い放ったらしい。
「世界を己の色で染め上げよ」と
これを聞いた6色の神は、他の神々を従え戦争を繰り返していた。それが、神話学者などがいう『神色戦争』と呼ばれるものだ。だが、この時神々における戦いに決着は着かなかったとされている。そして、その状況を見かねた神、創造主たる神が更に手を加えた。今、世界に存在するモノを使い戦えと。また直接的な干渉を禁ずると法をしいた。
これにより、神々の戦争から世界に生きるモノを対象にした代理戦争へと戦いが移ったのだ。
6色の神の内、白と黒以外の神々は困った。自分達が担当していた生物達では、
2色の神の生物とでは差が元からあったのだ。これを創造主たる神に訴えたが聞いてもらえなかったらしい。白の神は、他の世界から優れた個体「英雄」を呼び戦力とし、黒の神は自らの力をより使える個体「魔物」を生み出し戦力とした。そして、この戦争は今も続いているという。それを証明するのが、『稀人』と『闇の躍動期』の存在だと私は考える。だが、疑問も残る。他の4色の神はどこへ行ったのだと。神話学者は、口をそろえて言う。英雄神と暗黒神の元へ下ったのだと。だが、私は果たしてそうなのかと思う。どこかでまだ機を覗っているのではないかと。私は選ばれた人間ではない。『紋章』をもっている訳でもない。だが、世界に6属性があるようにまだ、他の神々もこの世界のどこかに居るかもしれない。
~第1章~神々の特色へと続く
PV40000とユニークが10000突破!!ありがとうございます^^ほんとうにこんな拙い作品を読んでいただきありがとうございます<(_ _)>ちょっとだけ、欲を出して言いますとお気に入りや評価をしてもらえるとうれしいです(●^o^●)
これからもまだまだ書いていきますのでよろしくお願いします^^