第三話 人は、減り、PTを組む
目が覚めて、辺りを窺ってみると寝る前と同じように石畳の部屋が広がっていた。
(夢ではなかったか・・・)
寝る前と違うのは、明らかに部屋にいる人数が減っている事だ。一体軽く寝ている間に何があったのだろう。
夢が起きたのに気づいたのか植田が声をかけてくる。
「お目覚めかい?」
言外によくこんな状況で寝れるなと非難しているようだ。それに対して、
「寝たい時に寝るべきだよ!それより、人が減っているように思えるけど何かあったの?」
あぁ、それかと言わんばかりに植田が簡単に説明してくれた。要約すると、扉が見つかった後、出るべきだという意見と、留まるべきという意見が対立したらしい。反抗していたグループの大半はすでに外へと出て行ったらしい。自治会がまとめていたグループでも先遣隊という形で何人か外に送ったが戻ってきていない。今の現状を何も変えてくれない自治会に対して、不満が爆発し一時期凄い騒ぎになったとのこと。信藤さんもどうしようなく、「これからは、各グループで行動すればいい」と言ってしまい、小さなグループ単位でまとまるようになってしまったのだという。
「まぁ、仕方ないんじゃないの?どっちにしろ、いつかは不満が爆発すると思ってたし」
「そうなのか?お前としては、まとまることに意味があるんじゃなかったのか?」
「まとまることって言うより、パニックによる暴動を避けたかっただけ。今の現状なら人数も減ってパニックが起こることはないと思うしね」
そうかと言い残し、植田もグループの方へ戻っていく。それを見送りながら、また思考の海へと沈んでいく。
あの声は、俺達をただ殺したいわけでない。殺したいだけなら意識を失っている間に殺すはずだ。思い出せ、あの声が言っていた言葉にヒントがあるはずだ。可能性を示せ――これは抽象的すぎて意味はない。他に何か言っていたかったか・・・手助けになるものを渡してある――このポーチだけか?もし、そうなれば扉の外で何かを拾うということだが、本当にそうなのか?それとも、俺達が気付かない所にすでに何かあるのか?隠してあるとするならどこだ?部屋の中央付近は俺達がいて何かあれば気づくだろう。そうすると、あと可能性としては部屋の隅か、または・・・
ある程度、思考がまとまった所で切り上げて辺りを窺う。どこのグループもまだ一度も寝ていないようだ。顔に、疲れが滲み出ているグループばかりであった。部屋を速く調べたかったが、この状況下で1人だけが異様な動きをしていたら、確実に怪しまれる。怪しまれるだけならまだしも、下手をしたら反感を買い暴行へと発展する可能性もある。調べるなら、みなが寝静まったその時しかない。今は、機会を窺うべく他の人と同様にグループの一員として振舞うことにした。グループ内では、「ここはどこなの?」「何が目的なんだ?」など意味のない会話が繰り返されていた。
ほとんどのグループが睡魔に負け、寝静まった頃を見計らい扉が見つかったのとは逆の壁へと向かう。とりあえず、可能性として隅に何かあると思ったが何もなかった。他の隅も同じだろうと思う。次は壁を調べる。調べるといっても手触りと壁を叩いた時の音で調べるだけの簡素なものである。隅から隅へと向かうように手でノックするように調べていく。
ゴツゴツ・・・
扉の反対側の壁には特に怪しい所はなかった。そのまま、左手側の壁も同じように調べていく。
ゴツゴツ・・・コツ
突然音が変わった。重い音から軽い音に変わったということは奥に何か空洞があるということだ。音の変わる範囲を調べてみると、丁度、2人通れるようなスペースの範囲だけ音が変っていた。手触りも石というよりは木だと思うが、目で見る限りは完全に周りの壁と同じく無骨な石の壁である。今の所は目印だけにしとき、壁を調べることに専念する。
その結果、左右の壁に2か所づつ音が変わる部分を見つけることが出来た。最初の音が変わった壁の前で考える。
音が変わったことや、手触りで判断する限り木であるとは思う。だが、目で見るように俺の知らない技術で石が薄くなっているだけかもしれない。破る方法としては、タックルや蹴りなど色々あるがタックルでは、勢いがありすぎて突き破った先に何があるかわからない現状では使えない。蹴りなら怪我はすることは少ないが音が大きそうだ・・ここは原始的に殴ることにした。
ただ殴るのでは音が大きすぎるため、上着を一枚脱ぎ、右手に巻きつける。もし、壁が石だったときに拳を痛める可能性を少しでも減らすことも出来る。
壁の前に右手が振りぬける間隔で立ち、腰を低めに構える。いわゆる、正拳突きの構えである。深呼吸を1つ置き、息を止め、腹に力を入れ、そのまま右足で体全体を前に押し出すように床を蹴り、腰を回転させ、右手を一気に前へと押し出すように振り切る!
「ハァッ!!」
自然と声が出た。
バキィッ!
拳が壁を突き抜け、壁に穴があいた。材質は、やはり木だったようだ。拳で開けた穴を広げ、人が1人入れるスペースを開ける。開けたところで、部屋の中央で寝ている人たちを見てみるが誰も気づいた様子はない。広げた穴から壁の裏側へと入ってみた。その瞬間、
「ッッッッ!!?」
突然、燭台に灯がともり壁の裏側を一気に照らし全容を見せてくれた。この燭台も、よく考えると自分の周りや人が多いところ以外はついていないようにも思う。それはともかく、壁の裏側というより燭台のおかげでわかったがここは、衣裳部屋らしい。コートや、鎧といったゲームでいう防具が所せましと並べられている。
「おお!!」
現実で、西洋の鎧など見たことがなく感嘆の声が思わずもれた。手前側に重い西洋鎧があり、奥側にコートやローブといった軽めのものが置いてある配置のようだ。西洋鎧を装備してみたいが、確実に全部着たら、20kgは越える。剣道の防具を来た時でさえ、満足に動くことが出来なかった自分には来たとしても生き残れないと思う。無難にコートやローブといった軽めの物を物色する。その時、目に留まるものがあった。全体が白く、青いラインが入った外套つきのローブである。夢は、服を買う時いつもインスピレーションで買うためあとで後悔することも多いが、惹かれるものがあるのだからしょうがないとおもう。この白いローブに関しても着たいと思ってしまった。似合うかどうかは別として。早速、そのローブを着てみるが丁度丈もあっているらしく、地面とスレることもない。ここで問題なのは、1人だけ着ていた服が違っていたら誰もが疑問に思う事で、下手したら暴力で吐かされることもある。
どうしよう?持って出て行ったら起きた時に皆にバレる。ここの空間を隠すつもりはないが、バレるなら自然の方がいい。どするべきか・・・・そういえば、このポーチ異様に中の奥行きが広かったな。もしかしたら、入るかも?
希望的観測で、腰についているポーチに白いローブを突っ込んでみる。そうすると、簡単にポーチの中に収納されていく。
これは、ゲームで言うかさばらないカバンみたいなもんか。
他にも、地味な色合いのローブを何着か同様にポーチの中に収納し、部屋から外に出る。そろそろ皆が起きだすであろう時間になりそうだった。自分が開けた穴が自然にバレルまではグループに溶け込むように浅い眠りにつくのであった。
やっと、プロローグが終わりそうです。書いてみると意外と長かった。これからは、魔法などだしていけたらなーと思っています。RPGのような感じで最初のうちはいくつもりです。
意見、感想色々待ってます~ノシ