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第二十四話 生きていると実感出来る、その時は?

夢を放り飛ばした水神リヴァニウスは、指をパチンっと鳴らした。鳴らした音に反応するように、水が人の形を造る。そして、

「テストは簡単だ。ソイツ(・・・)を倒せばいい。それだけだ」

夢に対して簡潔に説明する。それを聞いた夢は投げ飛ばされ着地した姿勢のまま様子を見るが

「忘れていたが、ソイツ(・・・)はお前を殺す為だけに動いているからな」

それを聞いた夢が、ハァ!?と疑問を浮かべた瞬間にソイツ(・・・)は夢に襲いかかる。その一撃をなんとか咄嗟に横に飛ぶ事で回避する夢。だが、頬を浅く切り裂かれていた。目の前に居るソイツは手に何も持っていないが、切れ味は名刀並みにありそうだ。実際、水を高圧で噴射すると物を裁断することが出来るのは事実である。ソイツの攻撃をまともに受けたらスパッと飛んでいくであろう。今の感じだと首と胴体が永遠の別れになるかもしれない。

(あいつ本気で殺しにかかってきてやがる。本気でやらないとヤバイなこれは・・・)

ソイツに対して、きちんと向き合う夢。それを合図にしたかのようにソイツが夢に猛然と襲いかかる。ソイツの攻撃をギリギリでかわしていく夢。着ている服や肌に浅く切り裂かれるが致命傷とまではいかない。

(避けられないほどのスピードじゃないな。これならいける(・・・)か!?)

夢は自分自身が危機狂い(スリルジャンキー)だと認識している。何をするにしてもギリギリな条件や状況の方が楽しく感じる事を理解している。ゲームにしろ、高校時代にやっていた剣道にしろ、ギリギリな状況の方が楽しめると思っている。その方が自分が生きていると実感できるからだ。某有名なモンスターを狩るゲームでも下手をしたら一撃死程度の防御力で戦うのが好きであった。そういう条件でないと自分は上手くなることが出来ないとも思っていたからだ。今の状況も表面上は冷静にとりつくっているが、心の中では狂ったような笑みを浮かべている。そして、追い込まれれば追い込まれるほどに自分のギアが上がって行くことを知っている。これを知っているのは夢の友人である1人を除いて知る者は居ない。夢自身、これは狂っていると分かっているからだ。だが、それでも危機狂い(スリルジャンキー)を辞めることは出来ない。だから、ソレを見ているルルゥが少し心配しても可笑しくは無いのかもしれない。

「主、アレでは本当に水瀬 夢が死んでしまいますよ?」

ルルゥが、言外に、もしくは自分では気づいていないかもしれないが主に対して止めるべきではと進言しているのを聞いたリヴァニウスは、内心でルルゥの申し出に驚きを感じながらも

「大丈夫であろう。アレくらいで死ぬようでは我が使徒は務まらん。」

確かに主の言う事も一理あると思い、静かに夢と水の人形の戦いを見ることに専念した。何かあったらすぐに止めれるように魔力を静かに練り上げながら。

そんなルルゥの心配を余所に、夢自身はノリ始める。相手の自分との力が拮抗すればする程にギアが上がって行くのが夢である。すでに、目の前にいるソイツの攻撃は掠りもしなくなって来ている。だが、夢がいくら相手を殴ったとしても相手はあくまでも水で出来ている。殴られた所が吹き飛んでもすぐさま再生してしまうのだ。相手の攻撃を掠りもしないが、こちらの攻撃は相手にダメージを与えない。そんな攻防が10分程度続く。それを見ていたリヴァニウスがまた指を鳴らす。その瞬間、ソイツのスピードが格段と上がる。それを咄嗟に回避しながらリヴァニウスに悪態をつく。

「テメェ!!何するんだよ!!」

「今のままじゃお前を殺せないと思ってな。」

至極冷静に告げるリヴァニウスに、内心で

(こんのクソ神がぁぁッッッ!!)

と思いながら、目の前の水の人形の攻撃を回避し続ける。

「本当にこのままだと死んでしまいますが?」

ルルゥが、投げかけるが主たるリヴァニウスは平然と夢と水の人形の戦いを指さしながら

「まだ、生きているから大丈夫だ。」

と答える。

確かに、まだ生きてはいるが先ほどよりも余裕は少ない。本当にギリギリで回避している感じである。先程とは違い反撃することすら出来ていない。

「アイツは、自分が追い込まれないと力を出せないタイプなのだよ。だから、何にしても追い込まなければならない。特に、こういった技術を学ばせるなら生死がかかっている方が覚えるやすい。」

確かに主の言うとおり身体の動かし方などは生死をかけてい方が早く身に付くとは思うが、いささか行き過ぎな気がしてならない。



さすがに、先ほどよりも苛烈になった攻撃に対して回避に専念する。それを感じた水の人形が足元にある水面に手を伸ばす。

(何をする気だ??)

疑問に感じながらも、警戒を怠らないようにする夢。手を離した瞬間、ソイツの手には一本の水で出来た剣が握られていた。形的には片手で扱うような細身のショートソードと呼ばれるような剣であった。それをソイツが夢目がけて振う。剣の射程で考えたら届かない距離ではあるが、直感的に危険を感じた夢はすぐさまその場を飛び退く。その瞬間、夢が居た空間を水の斬撃が駆け抜けた。水面も軽く裂けている。直撃していたら真っ二つであろう。

さすがの夢もこれ以上、長引かせるのはヤバいと思ったのか本気で相手を壊す事にした。打撃で壊せないというならそれ以外の力で叩きつぶせばいいだけの事。こっちの世界には魔術という力があるのだから。

【術式:豪雨】

先程見せた魔術が水の人形へ襲いかかる。自分の打撃が点だとしたら魔術の攻撃は点から面へと幅広く運用できる事が魅力だと思う。夢の魔術が、終わったころには水の人形は後形も無く、砕け散っていた。それを見た夢が

「これでテストは終わりか?」

とリヴァニウスに声をかけるが、リヴァニウスは何も答えない。それに疑問を思いながらもリヴァニウスが居る所に足を向けて歩き出そうとした瞬間に、隣に居たルルゥから

「夢っ!!」

切羽つまった声を聞いた瞬間、その場から飛び跳ねるように逃げる。そして、後ろを振り向き驚愕する。

「なッッ!!?」

夢の魔術で粉々に砕け散ったはずの水の人形がそこに存在していたのだ。確かに、さっき見たときは原型は無かったが今は最初のころと変わらない形をしている。

「ソレだが、少しでもカケラが残れば再生するぞ。殺したければ、カケラを残さないようにするしかないぞ?」

この状況が楽しくてならないと声から聞こえてきそうだ。今の夢の魔術の腕では水の人形を後形も無く消し去る技術は無い。そして、先ほどの一撃で脇腹を切られてしまった。最初の時より条件は悪くなった。だが、最初の時よりも高揚している自分が居る事を否定できない。条件が悪かろうとも切り抜けるだけだ。今までそうやって切り抜けてきたのだから。試練はここからさらに激しさを増していく。


主人公の闇といえる部分を見せてみました。ですが、これはあくまで主人公が1人での場合のみです。これに他人を巻き込むことはありません。

PV30000超えました!お気に入りしてくれている方、読んでくださる方ありがとうございます!頑張って更新していきますので、これからもよろしくお願いします<(_ _)>

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