第二十話 試練決着
長らく更新できず申し訳ないです<(_ _)>
水底から上がってきた夢の姿は満身創痍と言っても過言ではなかった。だが、ルルゥが攻撃の手を収める何かがそこにはあったのだ。
《世界を変えるのは言の葉。思いを口に乗せ、世界を改変する。それが、『魔律』(まりつ)と呼ばれる。思いに力を込め、『魔律』とし口に出せ。そうすれば、世界は汝の意思で変える事が出来るはずだ》
水が本来の主人の帰還を祝うように、さざ波揺れる。夢の声がその空間に響き渡る。
【水よ、水よ、我が意に答え力となれ。その力を持って敵を撃て。】
夢の魔律に誘われるかのように水が動き始める。その光景を見てルルゥはゾッとした。『術名』を言う事で、魔律による世界への干渉は完成するからだ。魔霊である自分でさえ魔律なしでは世界へと干渉できないのである。人の身でソレを行う目の前の者は一体何だと言うのか。どれだけ膨大な力を魔律に込めようとも、術式を言わなければただ水に力を通したに過ぎない。
【水よ、四方を抑え、盾となす。その四方を貫けるものは何もない。】【術式:四方水盾】
ルルゥの前に正方形の水の盾が出来上がる。水と言えども圧力を掛ければそれは何人も破れぬ盾となるからだ。
その光景を見ても夢の魔律は止まらない。
【水こそ、全ての原点であり源である。汝ら、偉大な力に勝てる者は無い。全ての敵を倒し、圧し進め!!】
夢の魔律に支配された膨大な量の水が、意思を持った水流となりルルゥへと殺到する。だが、それをルルゥの展開した盾が防ぎ止める。夢の水流とルルゥの盾とが拮抗する。力業をもってして世界へと干渉した夢とプロセスを経て世界へと干渉したルルゥ。どちらが勝つとも言えぬ拮抗が続く。しかし、徐々にルルゥの盾が押され始める。
(なっ!?私の方が押され始めるとは・・・)
すかさず、自らの盾に力を更に込めるがそこで驚愕した。夢の力が自分の盾まで徐々に浸食し始めていたからだ。暴力的な意思で相手の力さえ征服しようとしている。これが、先ほどまで戦っていた相手とは思えなかった。すぐさま、盾へと注ごうとしていた力を自らの身を包むように変更する。その瞬間、膨大な量の水流が盾を食い破りルルゥの体を洞窟の壁へと圧しつける。
夢は、ルルゥが自らの水流に圧し流されて行くのを見て勝負を決めるべく動く。世界を変えるのを己の意思が全てなのだから。それを叶えるべく静かに呟く。
【術式:水面割り】
ルルゥは、壁に圧しつけられた衝撃で朦朧としてても自らの意思で立ち、自分を倒す相手を見つめる。右腕を引き絞り、その右腕に追従するように水が彗星のごとくたなびく夢の姿を。
そして、洞窟に響き渡る片方が倒れる音が。夢が試された試練は終わる。1人の勝者と1人の愚者という結果だけが残った。
量が少ないですが、一応第一章完ということでここで区切らせてもらいました。
リアルで卒論やらがあり、ちと忙しいのですいません。