第十八話 歯車は動きだす
久々の投稿ですいませんでした。最初の方の描写が微妙な感じに・・・((+_+))
ただひたすら落ちていく。水の中を下へ下へと落ちていく。上に目線を上げれば月明かりに照らされた水の中を月明かりがキラキラと瞬いていた。周りの音は一切聞こえない。静かな空間をひたすら下へと落ちていく。目線を下に戻せば、深い青色がただ無限に広がっているだけでそれ以上何も無い。夢は自分の身を落ちる速度に任せ、月明かりが届かない世界へと沈んでいくのであった。
一体どれほど時間が経ったのであろう?と思いを巡らす。すでに、夢の周りを包む水の色は漆黒と表してもいい色合いである。どこまで、沈むのか、それともこのまま何も無いのか、それすらも分からない。何かに引っ張られるように水の底へと沈んでいく。その時、目の前にあの紋章が浮かび上がった。そして、夢の体は紋章に引き寄せられるようにぶつかる。
その瞬間、世界が変わった。世界が変わった瞬間に対応できず、硬い何かに叩きつけられる。
「ウグッ!!」
まるで、地面に叩きつけられたのかと思ったほどだ。
(いきなり、何するんだ!?)
そう思いながらも立ち上がり、周りを見てみるとそこは先程までの水の中ではなく、広々とした洞窟のような所であった。自分が落ちてきたであろう天井を見ても、あの湖自体が嘘であったかのように無骨な岩盤があるだけでそれ以上何もない。急激な変化に若干の戸惑いを感じている時、洞窟の奥から声が聞こえた。あの八つの双眸を持つ者の声だ。
《こっちへ来い、そのまま道なりに進め》
夢は、道なりって言っても道が無くね?と思っている時に、突然青色の光が一直線に灯る。ここを進めと言わんばかりに。
(なんという、親切設計!)
だが、敢えて断る!光で出来た道の外側を歩きながら奥へと声のした方に進んでいく。少し、進んだ所で地面が無くなっていた。その先に広がるのは、水面しかない。光りはその水面の上を真っ直ぐ示している。
(普通、水の上は歩けないだろ・・・)
と思案している時、どこかで見ているかのようなタイミングで
《『気』は覚えたのだろ?それを使えば渡れるはずだ》
その声に従うのは癪だが、今はそれ以外の手段があるわけでもなかった。目を閉じて自分の体の中へと意識を集中する。体の周りを包んでいた『気』を足元に集めるように意識する。集めるときのイメージは、気に触れた水の強度を上げるイメージで自分が沈まないようにする。そして、そのまま水の上へと一歩踏み出す。沈まない事を確認し、光の道の外側を奥へと進んでいく。そして、光が無くなっている地点にまで来た。だが、目の前には何もない。
(釣られたか?)
と思い始めていた時、そいつは姿を現した。
そいつは、簡単に言えば蛇であろう。だが、もっと詳しく言えば東洋の龍であった。蛇とは違い、口の中に歯が並び、角みたいなものも見受けられる。8つの双眸は無かったが。
《便宜上、この形の方が受け入れやすいかと思ったが違かったか?》
夢の中で出会ったイメージがいきなり目の前に現れたら、確かに身が竦むかもしれない。あいての自分に対する思いやりに、
「いや、そっちの方が受け入れやすいよ。ありがとう」
その返答に、安堵したのかこちらを青色の目で見つめてくる。
しばし、無言の時間が流れる。それに耐えれなくなった夢が、
「なぁ、ここはどこなんだ?」
言外に、あの湖の底では無いだろと言っているように聞こえた。
《この場所は、一言でいえば神域だ。簡単に言えば異界であろう。あの湖とは存在する空間が違う》
「ふ~ん、この世界は何なんだ?」
《その質問に答えるにはまだ、早いな。だが、一言だけ言えるのはお前が住んでいた世界とは全く別の世界という事だ》
夢もその事にはうすうす気づいていた。似てはいるが別の世界であると。
「それで、俺をここに呼んだ理由は?神域と呼ぶ場所なら普通に入れる場所じゃないんだろ?」
《お前を呼んだのは興味があったからだ。お前の心の在りようにな。あと、お前の可能性を見極めるためだ。お前の右手に宿る『紋章』は俺の力なのだからな。これでも神の一柱なのだからな。俺は》
この右手の紋章はトゥースって言うのか。改めて右手の紋章を良く見る。独特な幾何学模様以外に分かる事は無かった。
《俺はあいつとは違うのでな。実際にお前の可能性を見せてもらうぞ!ルルゥ、やれ》
右手から目線を上げて、前を向くとあいつの体の脇から1人の女性が出てくるのが見えた。そして、その女性があいつとアイコンタクトをした瞬間、姿が掻き消えた。その途端、背後から殺気を感じ、反射的に後ろに振り向き防御する。
「なッッ!!!?」
防御したにも関わらず、数メートル飛ばされた。そして、夢が肉眼で捉えようとした瞬間にはすでにそこに姿が無い。そして、防御したまま恰好であった体に上から衝撃を受ける。跳躍からのとび蹴りであったらしい。衝撃に叩きこまれるように水の中へと沈む。
(何なんだ?いきなり。あいつも可能性を見せろとか言っていたが、まさかアレを倒すのか?)
水の中にまでは追ってこないのか、水上で佇む女性を見る。技量、速度、全てで負けている気がした。そして、相手は明確な殺意を持って襲ってきている。あいつも、あの女性に負けるようでは価値が無いとでも思っているのであろうか。
考えているうちに、水面が近くなってくる。水面から出る前に、体の中にある気を一気に燃やす。生身であの攻撃が当たれば運がよくて骨折、悪ければ当たった箇所は無くなるかもしれない。気を纏い、女性と対峙する。女性が
「構えを・・・」
こちらが構えるまでは襲ってこないらしい。だが、夢はただの学生であり、特別に武術を嗜んできた訳でもない。一番、オーソドックスなファイティグポーズを取る。構えを見せた夢に
「では、行きます」
冷酷な響きを持って、女性が襲いかかる。気により先程よりは女性の動きについていけるが、速度が違いすぎる。そして、ボクシングの構えは素手でのガードを想定していない。素手の場合は相手の攻撃を撃ち落とすか、腕を体から離し攻撃を受けなければダメージが体にまで伝わってしまうのだ。ひたすらに、相手の攻撃を撃ち落とす事に専念する。次第に、相手の攻撃を撃ち落とせず、体に掠り始める。
(まだ、上に上がるのか!?)
そう思った瞬間、相手の蹴りが脇腹に当たる。
ドンッ!
夢の体が、数十メートル飛ばされ水の上を水切りみたいに何度か跳ねる。気のお陰で沈む事は無かったが、脇腹に貰った一撃のダメージは大きい。
相手の女性は、「そんなものですか?」と軽蔑したような瞳でこちらを見ている。
その目を見た瞬間、夢の中で何かが切れた。
「ハハハハ!やってやるよ、お前。やっと体が温まって来たんだ。ギアを上げようゼ!!」
足と脚に、腕と手に集めるだけの気を集め、相手に突っ込む。いきなり、豹変した態度と今までとの速度差に女性の対応が遅れる。
「しまっ――」
焦りを感じる声に被せるように、夢の
「おせぇよ」
冷徹な声が乗る。そして、先ほどよりも数倍の大きさの音が洞窟内に響いた。
ドゴンッ!!
夢に撃ち抜かれた女性が、光の無い方へと飛ばされる。夢は追撃をするわけでもなく、その場所に佇む。そして、暗闇から
「なぜ、拳を握らなかったのですか?」
暗闇から姿を現した女性の鎖骨の間の布だけが千切れ飛んでいた。夢が、拳ではなく掌底で撃ち抜いたからだ。
「あなたも、私を分けるのですか?」
女性の体から、目に見えるほどの何かが吹きあがる。
「あなたも、私と――を分けるのですか?」
《ルルゥ!待て、もう終わりだ!》
あいつの切羽詰まった声が聞こえたが、相手の女性は止まらない。また
「あなたも、私と――を分けるのですか?」
その声がすぐ傍で聞こえた。女性と数メートル開けて対峙していたはずなのにすでに、目の前に迫り、技を繰り出していた。
夢は、ただ咄嗟に腕を上げ、全部の気を込める。そして、女性の技が夢の体を捉えた。防御したのにも関わらず、意識が飛ばされた。
読んでくださり、ありがとうございます!久々の更新ですいませんでした。今度から土日の更新が多くなると思います・・・申し訳ありません。
拙い作品ですが、続けていきたいと思っていますのでよろしくお願いします!!誤字、脱字の報告などお待ちしてます~
感想を書いてくださった方ありがとうございます<(_ _)>励みになりました!では、また次回後書きにて~ノシ