その三 ヤバくない⁉ 腐敗と言う名の地獄に落とされる!
街を行きかう人々に変な目で見られながら、怪物を倒した少年とその相棒は堂々と警察署に入っていった。
警官たちは子供二人が死体袋と不審物を持ってきたので警戒した。
「うわ、何だ、君たち!」
「二人で化物を倒したので、報告に来ました」シルフが自信満々に言った。「あと、こいつだけじゃなくて、もっとたくさんの化物が廃墟群の中に潜伏していてこの街を狙ってるかもしれないんです。なんか、対策を考えてくれません?」
『こいつら俺たちのこと舐めてるのか?』と、警官の誰もが思ったが、スクリプトの背負っているリュックを見ると、それの中身が自らガヤガヤと騒ぎながらうごめいているのが分かった。アライグマかスッポンなどの害獣でも入っているのではと思ったが、どう聞いてもしっかりと認識できる言葉で、機械音でもない。
「見てもらった方が早い。見せてやれよ」
スクリプトはそう言われて怪物の頭部をリュックから出して掲げた。
「おい、離せよ⁉ ただのガキにやられるなんてどんなジョークだよ!」頭だけの化物はで怒鳴った。
「うわっ⁉ なんだそいつ⁉」警官の一人が思わず叫んだ。
「こいつが証拠だ! こんな化物がこの街を襲おうとしているんだ!」
すると、騒ぎを聞きつけた署長がやってきた。彼女は、少年に掲げられた化物の頭部を見て、驚いた顔をした。まさか、本気だったとは……。
「お前ら! そいつを置いてこっちに来い!」
キンキンした幼い声が聞こえた方を向くと、そこには自分たちと同い年かそれよりずっと年下にしか見えないくらい、可愛らしい容姿をした女性警察署長がいた。
シルフはその姿を見て、あんなにちんまりした女性も警察署長になれる時代が来たと、嬉しく思った。ああいう立派な女性がいれば、男女平等社会は近いと思った。
他の警官たちが別に気にしていない様子を見て、本当に彼女が署長だとわかり、スクリプトは思わず騒ぎまくっている頭部を置いた。それを見て、シルフは担いでいた体の入った袋を置いた。
警官たちに怪しまれる中、二人の少年は連行されるように署長室に連れていかれた。中にあるデスクに署長は座り、まるで校長先生のようだとスクリプトは思った。さしずめ、自分たちは説教をされる生徒のようだと思った。
「さて、聞くが、あの化物をどうやって倒した?」
「廃墟群で発見して、危害を自分たちに加えようとしたので……」シルフは冷静な様子で説明しようとした。「彼がチャクラムでやっつけました。あ、だけど、命令したのはオレです。もし、悪い事をしたのなら、オレが全部責任を取ります」
「おい⁉」
「大丈夫だ、オレに任せろ!」
「ふざけるな!」署長は駄々をこねるように腕を振って怒鳴った。「苦労して作り出した化物を、子供が倒しただと⁉ このガキどもが! 怖がるどころか自慢するように説明しやがって! お前たちはおれたちに喧嘩を売ったんだぞ! わかってるのか?」
「は? どういうこと?」スクリプトは思わず言った。
「白を切るか⁉ お前たちの正体はわかっている! 公安とかそういう奴らだろ! 少年の姿に化けたからって騙せると思ったか⁉」
「いや、公安じゃありませんし!」スクリプトも怒鳴り返した。
「ただのガキがレーザーアイを倒せるわけがないだろ⁉」
「わかったぞ!」シルフは怒鳴るように言った。「さては、署長も化物たちとグルなんだな? 奴らに脅されたか、賄賂を渡されて協力するように言われ、廃墟に巣くっているレーザーアイのような化物たちをわざと野放しにしている! そして、彼らに都合が悪い事が起こると、それを隠蔽している! 違うか⁉」
署長は怒った顔から拍子抜けしたような表情をして、シルフを見た。なんでそんなことを知っているのだ、こいつは。と、思っているような顔だ。
「お前ら、本当にただの子供なのか?」
「いや、そうだと思いますけど」シルフは自慢げに言った。
すると、所長はまた駄々をこねるような手ぶりをして二人を見た。
「……落ちろ!」
すると、またありえないことが起こった。二人の少年の足元がすっぽりとなくなり、巨大な穴が現れた! そして、二人は悲鳴を上げる暇もないままその奈落の底へ落ちて行ってしまった……。