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第二話 最初の出会い

 

 ……


 ――望んだのは君か?


 ……?


 ――君は、ケモナーなのか?


 ……あ、え……? どうなんだろ。私なんかがケモナー名乗ったら色んな人から怒られそうだけど。


 ――え、あ、そうなんだ……


 確かに私はケモノ大好きだけど他の人に比べたらまだまだ若輩者っていうか、ほらケモナーっていってもどのレベルのケモノが好みなのかとかあるじゃない? 私はケモナレベル2が好きなんだけど……あ、ケモナレベルっていうのは私の中で決めてるケモノの段階であって、それでね。ケモナレベル2っていうのはケモ耳とかケモしっぽとかがあって、それプラスで髪とかがモッフモッフしててちょっとだけどどこかケモノの雰囲気が強くって擦り寄ってきてくれてあぁもう一緒に寝よーっ! って感じのちょー可愛いレベルでね? でもでもケモナレベル1とか5とかが嫌いってわけじゃなくって――


 ――分かったから! 一旦ストップ!


 え、いやまだまだ話したいことばっかりですが? なんで? そっちから話を振ってきたんでしょ? だったらこっちの気が済むまで


 ――えーいこの娘にきーめたっ☆


 ちょっと話聞いてます? あ、ちなみに私の推しは狐なんですけど、ほら。どこかツンケンしてそうで、でもなんだか甘えてくれそうで。撫で心地とか最っ高なんだろうなって想うんですけどいかがいたします???????


 ――最早厄介オタクみたいになり始めちゃってるからね!? それ、友達の前とかでやってないよね、大丈夫だよね!?!?!?


 やってませんよ何言ってるんですか。そりゃたまにこっちの道に引きずり降ろそうとはしてますけど


 ――引きずり降ろすって言ったね!? 今!


 あぁ、いやそれは言葉の綾というか。私、この想いに誇り持ってますので。


 ――……少なくとも君はあの人の血を持ってるんだろうなってことは察したよ。


 え? それってどういう……


 ――じゃ、面接はこの辺りで終了とさせていただきます。


 ちょ、ちょっと待って! 合否だけでもお聞かせ願えませんかぁ!?


 ――……己の目で確かめることじゃ。ほっほっほっほっほ……


 急にじいさんみたいな喋り方になった!? って、あれ、私は今まで何を……?

 って、んんん??? どこですかここは?


 真っ暗な宇宙みたいな感じの場所に浮いてるんですけど??

 え、なに。さっきの人も気になるけど今の自分の状態も私、気になります!

 って、やっとる場合か! あぁ、ダメだ落ち着け。こんな時こそご先祖様の経典を……って無いし!?


 家に置いてきた? いやそもそも私家から出た記憶ないんですけどねー。

 あー、無理。むりぽ。


 ちょ、やめっ! ガッしないで……!


 ――ぷっ


 まだいるんじゃん!? そのおならみたいな笑い方される方の気持ちにもなって!?


 ――いや、ほら。もうすぐだからさ。大人しくしてて欲しいんだけど?


 あーはいはい。そうやって人をだまそうったってそうはいかない……ってマジか。なんか光が見えてきた……!


 吸い込まれるみたいに突っ込んでいってるけど、これ大丈夫? 飛び出た先が空で落下死ENDとか嫌だからね?


 あっ、急に眠気が……。


 死の恐怖から逃げるための自己防衛みたいなやつ? 逆に感謝した方が良い状況なのか、これ。

 どっちにしろ……もう、意識が……。


「――っだぁぁぁあああ!?!?」


 痛い痛いっ! ちょ、落ちた!? 落ちたのか私!?

 どうせなら完全に意識がなくなってからにして欲しかったんだけど。中途半端に意識があったからめちゃくちゃ怖かったし心臓ハッスルし過ぎて破裂しそうなんだけど。


 で、結局どこなのよ此処は。


「……藁?」


 どうやら私は今、大量の藁の上にひっくり返っているらしい。

 痛かったのは間違いないけど、怪我がないのを見るにこの大量の藁が守ってくれたのだろう。あぁ、ありがとうここに藁を集めてた人……。


 まぁ、あのヘンテコリンがわざわざここを選んで落としたって可能性もゼロじゃないけどさ。

 というより、そっちの方が自然なのか。


 よいしょっと。

 何とか身体を起こして周りを見てみると家の中、というより物置小屋みたいな感じか。

 天井を突き破ってきた形跡は……なし。空間を捻じ曲げてピンポイントでここに落とされたってわけだ。


「いよいよご先祖様のお話が現実味を帯びてきましたね、これは」


 独り言でも言って場を盛り上げなきゃやってらんないっての。

 小説好きな子から聞いた話では異世界転生的なやつなんでしょうよ、きっと。てか私死んでないんだけどね? 転生ってよりも転移ってやつなのかな。


 ありがとう友よ。君のおかげで私、こんな状況でもなんとか状況を整理できてるよ……。

 きっとこの話をしたらズルいってブチギレるんだろうな。うん、やっぱ内緒にする方向だな。


 くっ、ケモナー道を共に進む覚悟を決めていたらもしかしたら一緒に来れていたかもしれないのに……! 残念だ!


「で、どうすりゃいいのよ。私は」


 しまった。私も話半分に聞き流してしまっていた導入部分がこんなにも重要な部分だったとは。

 人の嗜好を無視するもんじゃないな、一つ学んだ。学んだが、現状の解決には至らぬ、か。


 とりあえず外に出るか。なんか、見つかったら怖いからそっとだけど。

 もしここがご先祖様の言うケモノの世界なら、大の字寝転がってになってモフモフに囲まれてみたいんだけどね。


「きゅ?」


 しまった。早速誰かに見つかった。およそぶりっ子してる人間でもなければそんな声は出さないだろう。

 多分魔物的なヤバい奴だ。油断すればここで、私は死ぬ……!


「……ッハ! お、お前は……」


「んきゅ??」


「うぐぅっ……!?」


 その仕草に心を撃ち抜かれた。あぁいや、物理的にじゃなくてね?


「か、可愛いじゃねぇか……!」


 狐だ。どこからどう見ても狐だ。

 頭の部分の三日月の模様がメッチャ可愛い。おめめとかまん丸で手とか足とか小っちゃくって、え? なにこの子。


 擦り寄ってきてくれたんですけど??????


 はぁ? どんだけ可愛いの? これは仰がなくても尊死ですわ。


「え~? なに~? 嬉しいの? あら嬉しいんだねぇ? わしわししちゃうけどいいのかな?? あぁわしわし嬉しいねぇ~!」


 はい私の時代来ました。これは勝ち確でしょうよ、えぇ。

 ここはケモノの世界。私の望んだ夢の世界……!


「ん、何? 一緒に寝るの? そうだね一緒に寝んねしようね~」


 さっきの藁を良い感じに敷いて、即席だけどお布団の完成。

 チクチクして寝心地最悪だけど狐ちゃんがいればそんなこと関係ないZE☆


 モフモフ……モフモフが私の腕の中に……!

 たまらん。これはたまりませんぞ母上! 姉上!


「ねー……いい子、だね~……」


「んきゅぅ~」


 一生こうしていたい。

 けど、眠気が……急に……。


 …………。

 目が覚めたら家のベットの中とか、絶対にやめて欲しいんだけど、なぁ……――

 

 

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