窓の外の景色
「何だ?あれは…。って何だ?どう見ても誰かが死んだんだろう?通夜が始まるんだろうね…。」
彼は冷静に言葉を紡ぐ。
「君が何も考えずに、日々を過ごしている最中にも、世界は休まずに回っているんだよ。君が部屋と云う世界から出ずに、好きな事を好きな時にしていた日々に、隣の棟で飛び降り自殺があった事も知らずにノンビリとしているものだから…。」
ー全く…。呆れるよ…。
そしてー。
彼は煙草を吸う。
「最上階から飛び降りたのだそうだ。全身の骨が砕けていたらしいよ。その女性は…。君もよく知っている人だと言うのに…。」
そう言うとー。
彼は「ほら…。」と言いー。
「同級生だっただろう?」ーと。
煙草の煙と言葉を同時に吐いていく。
「千崎。千崎ユキだよ。」
私はー。
窓の外の景色をボンヤリと見てー
「それと。くねくねが白い物体でなくてはならない事に、何の関係があるんだよ?」
と言った。
「関係?あるじゃないか…。くねくねにも。君にもさ…。」
陰鬱そうな表情だった。
彼は窓の方へ歩み、窓を全開に開ける。
風が吹いた。生温い風だ。
冷房機の無い部屋にー。
隣の棟から発せられているのであろう、線香の匂いが微かに運ばれてくる。それは扇風機の風で拡散していく。
「俺にも?」
そう。私は人非人だ。
好きな事を好きな時にしてー。
想った事を思った儘に口にする。
他人の事等、考えた事は無い。