関わり
「呪うって…。黒魔術とかの?」
聞き間違いなのだろうか?
呪いなんて、日常で使用される言葉ではない。
それも、爽やかに微笑んで使用する言葉でもない。
「うん。呪い…。」
彼は、間違い無く、そう言った。
それからー。
彼は呪文の様に言葉を募らせる。
「千崎はさ。君を愛していたんだ。きっと海よりも深くね。深く深く愛して、愛して。そしてー。気付いてしまったんだろうね…。人の心の深い闇をさ…。君を愛する程に【嫉妬】と云う感情に囚われていった…。彼女の内にある【嫉妬】、そしてー。周囲の人間の【嫉妬】だね。彼女は優しすぎたんだよ。誰よりも純粋だった…。」
彼は手にしていた鈴をチリンと奏でた。
「この世界は残酷だよ。そんな彼女に周囲は嫌がらせをしたんだ…。誹謗中傷に耐えられなくなった彼女の心は朽ちていったんだよ。透明な水の様な彼女の心は醜く淀んだ…。淀んで澱んで、嫉妬は渦巻き、周囲との関係を更に捻らせていった…。」
彼は此方を視ている。
「彼女は君に助けを求めていたんじゃないか?話を聞いて欲しかったんじゃないか?何度か君の家を訪ねたみたいだけど…。君は会わなかったんだろ?」
「あぁ。煩わしかった。」
人非人なのだ。人の気持ちは理解出来ない。
「まぁ。境界線は必要だけどさ…。君が望む、望まないに関わらずに、世界は廻っているんだ…。夜は明けて、朝は来るんだよ。関わりを棄てたと思っていても棄てられるモノでは無いんだ。」
彼は溜息を吐いた。




