聞こえる律動
私は、ソレを振り払うかの様にー。
言葉を並べる。
「何となくは分かったけどさ。。。それが、くねくねと何の関係があるんだ?さっきからずっと話が廻ってないか?」
「だからね。その量子なんだけどね…。」
彼は気怠そうに言葉を吐く。
「量子…。」
「物凄く分かりやすく言うとね。量子とは、物理学において用いられる、様々な物理現象における物理量の最小単位の事を指すんだ。だけどね…。」
「だけど?」
「その最小単位である量子を無理矢理に引き千切るとね。」
彼は欠伸をしている。
「量子のペア。つまりは双子になる。」
「双子…。」
「分かりやすく言うとだよ?」
彼はまた、欠伸をする。
「さっき話したけど、量子は観測された時に事象は収束される。その双子の量子は、何方かが観測されると、タイムラグ無く、もう片方も観測されたと事象を収束するのだそうだ。」
「それって…。」
「タイムラグが無い。つまりは距離は関係ない。そう考えるとさ…。時間すら関係ないとも考えられないか?」
彼は煙草の煙を見つめている。ユラユラと揺れる煙。
その煙は、白くクネクネと揺れ動いている。
隣の棟から何やらー。
言葉が一定の律動で聞こえてくる。
様々な宗派で聞く経典だと思う。
それを聞いた彼はー。
言葉を読み上げた。
「あぁ。この経典はー。存在もするし存在はしない。そう教えているのだったかな。」
そう言ってからー。
「もしも…。もしもだ…。自分を構成する量子が何かしらの原因で知らぬ内に双子になっていたとしたら…。」
と続けた。




