15/25
落陽
あぁー。
私は、そう呟いた。呟いたもののー。
気付いた訳では無い。況してや、理解とは程遠かった。
脳内は混乱している。
彼はそんな私を他所に言葉を置いていく。
「まぁ。その状況はシュレーディンガーの猫の状況に似ている訳だよ。そして、その状況を脳では情報処理出来なかったのだろう。だから脳は防衛手段としてー。自我の崩壊を選んだって訳だ…。」
またしてもー。
想像していなかった言葉が、漂った。
彼はー。
私の様相からー。
理解していない事を察したのだろう。
再び、言葉を並べていった。
ベランダから見える景色は、私の心を染色していく。
沈んでいく太陽はー。
気味が悪くなる程に赤く染まっていた。
【赤鴉】。
この言葉が似つかわしい。そう私は、感じたのだった。
「シュレーディンガーの猫とはー。」
陰鬱そうな声が、ベランダに木霊する。
そしてー。
その言葉の意味が私を彼岸へと誘うのだった。




