過去へと遡る
「ちょっと待ってくれ…。」
頭の中を整理しなければ理解出来そうも無かった。
くねくねについて考察しようとしていた筈なのだがー。
話が何時からか、ずれている気がする。
何故、千崎が関係しているのだろうかー。
しかも千崎の死には、私が関係していると彼は言う。
彼は何と言っていた?
私は少し前の過去の記憶を辿る。
くねくねとはー。
死んだ人間の魂魄のー。
魄と呼ばれる、肉体的な気の集まりなのだとー。
彼は言った。
魄とはー。
人間の外観。
骨組み。
生まれながらに持っている身体の設計図。
そう云ったモノなのだそうだ。
彼曰く…。
くねくねとはー。
近い未来、全身を強打して死んでしまったー。
白い死装束を纏う自分の姿。
そうだ。
違和感があったのだ。
近い未来で【死んでしまった】自分の姿。
この言葉だ。この言葉の所為だ。
この言葉では、過去と未来が交錯している。
未来で死ぬ自分…。なのではない。
未来で死んでしまった自分なのだ…。
もしー。
彼の考えが正しいのなら…。
くねくねが…。
未来で死んでしまった自分なのなら…。
「気付いたかい?」
陰鬱な声が私の思考を停止させるー。
彼は私の瞳を覗いている…。
私の瞳を覗く、彼の瞳は艶のない漆黒だった。
闇よりも深い色。
私の体温は数度下がった感覚に陥る。
制御の出来ない身体の震えが心の奥底から這い上がってくる。
「気付いたようだね…。」
彼はー。
また煙草に火を点けた。
ユラユラとした煙をー。
口から吐き出している。
だからだよー。
「だから…。見てしまうと知的障害になるんだよ…。」
と、そう言った。




