拡散する形
「視る人によって、形が変わるとはどういう事なんだい?」
私はユラユラと蠢く人形の煙を見ている。
その煙は徐々に、その輪郭を曖昧にさせー。
そしてー。
拡散して消えていった。
「それはだね…。」
彼はそう言いかけてー。
視線を地面へと堕とす。
「どうした?」
「あぁ。何でもないよ…。くねくねは…。其れが何であるか理解してしまうと、不味いのだろ?」
彼の視線は、未だに地面を捉えている。
「そうだね。理解してしまうと知能障害になると言われてるね。」
私は彼の問いに言葉を返した。
「まぁ。僕の考えでは、くねくねとは…。近い未来で死んでしまった自分の姿なのではないかと思うのだよ…。そして…。死因は様々なのだろうけども、その何れもが、全身を強打している…。」
彼の言葉は、吐き出した煙と共に空へと消えていく。
「要は…。近い未来、全身を強打して死ぬ者以外には…。ただの白い物体にしか見えない…。」
私はー。
彼の言葉が理解出来なかった。
空は朱色に染まっていく。
隣の棟から漂う線香の匂いはー。
少しずつ強くなっている気がした。
「多分だ…。」
陰鬱そうな声が頭に響く。
「千崎ユキは…。くねくねを見てしまっていたのだろうね…。」
彼は地面を指差しー。
「最上階から飛び降り、全身を強打して…。骨が粉々に砕けてしまったのだから。」
とー。
言葉を告げた。




