そのもの。
「死装束を身に纏う幽霊だから…。くねくねは、白くなければならなかった…。そう言いたいのかい??」
私は彼に言葉を投げる。
私の脳裏に死装束を身に纏う幽霊の姿が投影されていく。
けれど…。
それは私が想像していた、くねくねの姿と、かけ離れていた。
そうなのだ。
それならば幽霊を見たのだと言えば話が早い筈だ。
何故、白い物体だったのだろうか?ー。
白い物体と表現していた理由があるのだろうか?ー。
私は想った事を思った儘に、口にしていく。
そんな私にー。
彼は言葉を紡いでいった。
「団扇ってあるだろ?」
彼は、そういうと私が手にしていた扇子を指差した。
何処にでもある普通の団扇だ。
「はぁ?団扇?唐突に何を言うんだ?」
そうだった。彼は予想だにしない言葉を時折、放つのだ。
「君が今、手にしている団扇。それは木と紙で出来ているだろ?」
そう言って、彼は次に私の左に指を指しー。
「そこには襖があるのだけれども…。それも木と紙で出来ている訳だ。同じ素材なのだが、用途は違うものだよな?」
と言った。
「あぁ。同じ素材で用途は違うね。見た目も…。」
「解りやすく言うのならば、くねくねと幽霊の関係もそういったモノなのだろうね…。要は魂魄の魄から産み出された用途が違うモノなのだよ。」
「用途が違う?」
「そうそう。用途が違うんだよ。幽霊とは誰が見ても幽霊なのだろ?でも、くねくねは視る者によって形が変わるのではないか…。と僕は思うんだよ…。」
彼はそう言うとー。
また、煙草に火を点ける。
そして隣の棟の屋上を煙草で指し示したのだった。
クネクネと立ち上る煙がー。
屋上の上にあるかの様に私の瞳に映った。
そう。錯覚だ。そう見えているだけだ。
でもー。
それが錯覚なのかは、誰が決めるのだろう?
その煙が、くねくねと、揺らめく人形の様に見えたのだ。




