白い物体
「まぁまぁ。気付いてないのなら、それはそれで幸せなんだろうけどさ…。」
彼はそう云うとベランダへと出る。それから私に手招きをして、ベランダへ出る様に指示を出した。
「外の方が涼しいじゃないか…。」
私はポツリと言葉を漏らす。
コンクリート造りの建物は熱を吸収している。その熱は部屋に留まり、空気を熱していたのだろう。ベランダの外へ出ると風が身体を撫でた。そして、身体に纏わりつく空気の層を薄くしていく。だから涼しく感じるのだろう。
彼はベランダに出ても煙草に火を点けてー。
その煙で遊んでいる。そしてー。
「くねくねって、田んぼや川沿いで見かけられる事が多いだろ?それってさ。水が関係しているとは思わないか?」
と言った。
「水?」
「そうそう。水だよ。水…。そして、水に集まるものがあるだろう?」
「水に集まる?」
「分かりやすく云うのならば…。霊だよ。霊…。」
「霊って幽霊の??」
「分かりやすく云うのならばね。中国の思想によると、人は死んだら魂魄となる…。魂魄とは、魂と魄を指しているんだよ。魂とは、肝に宿り、人間を成長させるモノであり、また心を統制する役割を持つね。まぁ、精神的な気の集まりと考えてみよう。そして魄とは、肺に宿る。人間の外観、骨組み、生まれながらに持っている身体の設計図という意味だよ。五官の働きを促進させ、成長させる作用がある。まぁ、こちらは肉体的な気の集まりと考えればいいね。そしてだ…。肉体は水を欲するだろ?要は魂魄の魄が水を求めている訳だよ。」
彼はまた、水を1口飲んだ。
「だから…。早い話がくねくねは、魄と呼ばれるモノなんじゃないかな?要するに死んだ人間。つまりは幽霊って事になるね。」
彼はそう言うとー。
「だから死装束に身を包んでいるんだよ…。死装束は真っ白な服だろ?」
と続けた。




