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「シガア地域編」前半を書きました

【第15話「十二体目のゴーレム」】

 この回でライヴォークの新たな手がかりを得ますが、これは期せずして「第2の発見と決断」の役割を果たしています。アイナの「望み」が変化するからです。

 ただ創作論Aのいう「第2の発見と決断」は、「見せかけの挫折」から這い上がるほどの衝撃的な内容が相応しいようです。そこまでの重みは持たせられませんでした。


 作中で筆頭書家の名前は明かされません。「サトシ」と設定してあるのですが、名乗らないほうが彼らしいと判断し、出すのを止めました。それはよかったと思うのですが、そのために、アアヤに「白衣の男」だとか、単に「男」だとか言わせねばならず、面倒なことになりました。


 ライヴォークの擬態は、有数の魔術程式書家にすら見破られません。この点が読者にどう受け入れられているのかは、少し気になっています。私の感覚としては、転移魔術すらある物語世界ですし、ハイファンタジーで定番のマジックバッグなどと比べたら児戯のような魔術です。

 カノンの化粧魔術で例示は済ませてあるのですが、もう少しこの物語世界の擬態魔術の水準を示しておいたほうが丁寧だったのかもしれません。


 ライヴォークは「Live Oak」で、植物事典を調べて採用しました。アルファベットの綴りを作中に出すかどうかは迷いましたが、英単語が物語世界に馴染まないように感じてやめました。


 本作は2つの編に分けました。これは編を分けると、目次が見通しやすくなるためです。私は読み手としては、目次をその作品が好みに合うかどうかを判断する材料にしています。ですので目次にも気を配っています。ちなみに2作目は全4編92話から成るのですが、PVを集計すると、編の分かれ目は拾い読みされやすい傾向がありました。

 なお、キンキイ編は4月から12月までの9ヶ月の物語ですが、シガア編は6日間の物語になります。このことに、編分けを検討するまで気づいていませんでした。



【第16~17話「東回りと西回り」、「シガアの村」】

 これらは、もとは1つの話です。1万文字近くになったので2つに分けました。アイナはその抱える「窮乏」と「望み」により、「死への訪問」に繋がる行動を選択します。


 冒頭、キンキイとシガアの地域境の場面から、時を遡ってゴショの場面に移ります。創作論Aによれば、こういう展開を自在にできる点が語り部の利点なのだそうです。しかしどうにも上手く場面転換できなくて、変わり目の文章表現をずいぶんと試行錯誤しました。読者を混乱させていないかどうか、気になっている箇所です。


 大湖は、遠い未来の琵琶湖です。干上がっていて現在より小さくなり、形も異なっています。この物語世界が現在の日本と繋がっているという設定を前面に打ち出していたら、逆に混乱を招きかねないので、地図を挿絵で提示する必要があったでしょう。


 途中で村に立ち寄るのは、シガアの民の様子を示すためです。想定していたよりもずっと多くの字数を費やしました。新しい舞台を登場させると、書いても書いても話が進みません……。

 とあるツールで分析すると、食堂のゴーレムを調整するくだりが、本作でもっともポジティブな語が集中している箇所になります。読んでいてそうは感じないと思うのですが、確かにアイナたち四人も食堂の女性も喜んでいるので、なるほどとは思いました。


 なおシガアの民は、植物のマナ器官を移植して身体が変化してきた民と設定しています。これが小食でそれほど睡眠を取らなくても生活できる理由なのですが、作中で紹介する機会をつくれませんでした。



【第18話「責務」】

 この回は、ゴショとシガアの、いわば武器取り引きの関係を示す話になっています。執筆時はユートの「第1の発見」の一部分と位置づけていました。第8話「ユート」の続きです。ですがここでの情報はアイナの最終話での決断に繋がるので、「第3の発見」の一部分と捉えるべきなのでしょう。

 ただいずれにしても、この発見はアイナの直近の行動に影響を及ぼしません。親やライヴォークに関係する情報では無いからです。このままでは読者に事の重大さが伝わらないので、カノンにその衝撃を表明させました。

 のちにアイナの価値観の変容に繋がる材料にはなりますが、ほかに上手い見せ方はなかっただろうかと気にかかっているエピソードです。



【第19~20話「知らない魔術程式」、「足がかり」】

 これらも1万文字を越えたので、2つに分割しました。

 執筆時は、コタロウの隷属程式も「第1の発見」の一部分と位置づけていました。しかしこれも先と同じく「第3の発見」の一部と見なすべきでしょう。


 ここから話は急転直下します。自分の行動が間接的であれど引き金になって仲間がさらわれたので、アイナも動揺します。しかしここは主人公視点ではない語り部という手法の不得手なところで、そうした心情を書き表すのが難しかったです。アアヤはアイナの母親で、その語りは上から目線、余裕に満ちたものであったので、そこを切り替えて緊迫感を醸し出すのに苦労しました。


 マナ玉の扱いにも手間取りました。最終話の都合でアアヤの視聴覚の基点をライヴォークもしくはマナ玉と設定するのですが、そうするとアアヤは連れ去られたコタロウの状況を把握できることになります。もちろんだからといって、アアヤにコタロウの様子を実況中継させるわけにはいきません。その語りが、アイナたちの心境からますますかけ離れたものになってしまうでしょう。

 これらの辻褄を合わせるために、「ライヴォークはマナ器官の負担を軽減するために、マナ玉の機能を制限している」という、ややっこしい状況を捻り出しました。


 第20話ではシガアの若者、シナサヒとアドガが登場します。彼らの服装は革ジャンにジーンズでブーツを履いているのですが、そのようなファッションを思い浮かべて読んでいる読者は恐らく一人もいないでしょう。

 アアヤは2人の容姿に言及していますが、最小限のものです。緊迫している中でアアヤに2人の外見を描写させると、間が抜けてしまうのです。こういうときはどうすればいいのか、そのさじ加減を掴めませんでした。こういったところも、語り部を利用している他の作品を研究してみたいです。


 なお最初期のプロットでは、この2人は登場しません。2人の役割は、擬態を解いたライヴォークに担わせていました。この旧プロットでは、ライヴォークはアイナの封印を解くまで父親であることを隠します。話が複雑になるし、アイナの心情が偽情報に翻弄される感情移入し難い展開になるしで、ボツにしました。

 その代わりを最終プロットでは、男女2人に担わせたわけです。2人にしたのは、そのほうがシガアの事情説明の語り方に変化を持たせられ、話が単調になるのを防げるからです。



【第21話「虜」】

 もともとはこの回で、ライヴォークを創作論Aの「味方のふりをした対抗者」、「読者への漏洩」として活躍させる予定でした。擬態を解きただのシガアの民として同行するライヴォークは、アイナの「望み」を妨害していることになり、その正体を読者だけが知っている状態になります。

 プロット改稿後は、「味方のふりをした対抗者」に相当するキャラクターは登場しません。そうしたキャラクターを新たに造形し、物語に入れるのは困難でした。また「読者への漏洩」は、物語冒頭からずっと行っている状態になりました。


 最終稿では、アイナたちはいったんコタロウに会って別れます。これはそこで得た情報をもとにシガア強襲を計画させるためと、アイナ自身にライヴォークに負荷をかける意思決定をさせるためです。マナ玉で細かな情報を得られない設定に変更した影響が、この展開にも及んでいます。

 まだまだ子どもであるアイナたち3人を無理なく戦いに巻き込ませようとした結果、まどろこしい展開になっていきました。


 シガアの民の風習について、未成年には名前が無いとしました。これは制限程式も含めて、シガアの民の未成年に対する厳しさを象徴する「シンボル」の役割を果たしています。



【第22話「クアドラプル」】

 この回では改めて「死への訪問」を「計画」します。

 しかしアイナ自身が立案、決断に係わっていないので、創作論Aが提唱しているものとは別物と捉えるべきでしょう。


 もし創作論Aを遵守するなら、「『魔術程式コンテスト』で技能を競うも、作成した魔術程式が街中のニーズを拾えていなくて敗退。劇的な出来事によりそのことに気づいて翌年は優勝、有名になって親にも会える」といった展開でしょうか。どうにも発想がバトルものから離れられなくて、武力衝突が無い物語を思いつけません。

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