表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/38

「キンキイ地域編」後半を書きました

【第7話「開発、開発、開発」】

 この回では主人公の「弱点」や「望み」が悪い形で顔を出します。しかしそうした創作論Aの段階を進めることよりも、重要な設定を読者に提示することに重きを置いた回です。


 カノンの制限処理(リミッター)付け忘れとマナブーストかけ過ぎにより、授業用ゴーレム『こんこん』は一時的に高い性能を示すものの、マナ器官の過負荷(オーバー・ロード)を起こしてしまいます。このくだりについては、『こんこん』を修理不能にするかどうかで迷いました。

 そこまで壊してしまうと、代替ゴーレムを用意する展開が必要になります。アイナもカノンに対して猛烈に怒るでしょう。ゴーレム開発の演習の話はコンパクトにしたかったこともあり、故障を劇的な展開にするのは踏ん切れず、マナ器官は無事だったことにしました。一方で壊していれば、物語後半のアイナの決断の重みは遥かに増し、読者にも実感を持ちやすくなっていたはずです。

 今振り返ると、ここは壊すべきだったかとも思っています。


『こんこん』、『わんみゃー』、『ぶひー』、これらゴーレムには、あらすじの段階では名前はありませんでした。しかし本番書きをしていると描写が面倒なことになって付けました。アイナたちがゴーレムに愛着を持っていることも表せます。

 一方で例えば、担任、副担任の名前は付けていません。彼らについては役割名で記載したほうが、読者が話を理解しやすいと判断したからです。



【第8話「ユート」】

 この回から3話連続で、創作論Aの「対抗者の計画と反撃」、「第1の発見と決断」を扱います。第1の発見を「対抗者それぞれが首席を目指していることを知る」とし、「味方」でもあり「対抗者」でもある3人の仲間のエピソードを順に紹介します。


 冒頭でアイナが街の人々から声をかけられ、「うちの子を診てあげて」と言われています。程式工房はゴーレムだけではなく、人間の程式の調整もしています。人によってマナ肺、マナ頭脳、マナ筋肉の能力が異なるので、例えば同じ水魔術でもその人に合わせて調整しないとマナの使用効率が悪くなるのです。この設定は物語展開に絡まないので、作中で説明していません。

 今考えると、フォクリックの民からコタロウ奪還を試みる際に、アイナたちにシガアの隊員たちの程式を調整させればよかったのかもしれません。そうすれば、最後の決戦でアイナたちが他力本願になってしまっている状況を少しは緩和できたでしょう。


 ユートは「対抗者」色の強い「仲間」と位置づけています。ですが書いてみると、アイナよりもカノンとぶつかる機会のほうが増えてしまいました。ユートはアイナの無定見ぶりが気に入りませんが、アイナはユートなんて眼中にないですからね。仲間と意見のぶつかり合いを通してアークさせようとしているのに、アイナを「暖簾に腕押し」、「柳に風」状態にしてしまいました。


 ユートが河川敷で行っているトレーニングは、世界的に有名な高強度インターバルトレーニングをモデルにしています。たまたま新型コロナウイルスの影響で室内トレーニングを調べていて、その存在を知りました。何が切っ掛けでネタが見つかるものか、分からないものです。


 後半、オープンカフェでのユートとの話で、アイナの「望み」がまた少し変化します。これも創作論Aの「発見と決断」の1つです。



【第9話「コタロウ」】

 コタロウの回です。コタロウについては、あらすじ書きを通してスパイという設定を変更し、また、本番書きを通して年齢設定を変更しています。もっとも設定変更の多かったキャラクターです。


 最初期は「スパイ」と設定し、創作論Aの「偽味方の対抗者」の役割を担わせていました。しかし、「裏切りから敵側にまわり、戦いを通じて和解する」という展開をいろいろな面からまとめられず、ボツにしました。

 次に、2つ年上の悪ぶっている青年という設定にしていたのですが、第5話の野獣狩りのくだりを本番書きしていて困りました。台詞や行動が、カノンと差別化できないのです。

 そこで年齢を逆に2つ下にして、背伸びをしている少年にしました。書き表すのは難しかったのですが、粗暴なふりをしている年相応の善良な少年にすることで、カノンとの違いを出せるようになりました。


 コタロウにはフォクリックの民の事情を体現してもらっているのですが、それぞれシノサカを体現するカノン、ゴショを体現するユートと、三すくみの関係を成立させています。

 カノンは、その治世に不満のあるユートを攻撃する。コタロウは、その差別に苦しめられているカノンを攻撃する。ユートは、その善政によってコタロウに一目置かれている。という具合です。

 アイナは自分が何者かすら分からないこともあり、この三すくみについては蚊帳の外です。


 オープンカフェの4人の会話を通して、アイナの学校嫌いの理由が明かされます。このエピソードは創作論Aとは関係なく半ば無意識に設けたのですが、アイナの「弱点」を改めて読者に喚起していると思います。



【第10話「働く理由」】

 カノンによる「第1の発見と決断」の回です。


 設定の段階では、カノンとユートをくっつける予定は全くありませんでした。第8話でアイナにユートの事情に気づかせたり、この第10話でカノンの事情に気づかせたりするために双方を利用していたら、互いを意識する展開になっていました。


 醜鬼のマナ器官の移植は、カノンの行動動機や性格の説明、アイナの秘密の前振りなどと、とても重要な役割を果たしている設定です。もともとは創作論Aの四隅に主要キャラクターを配置せよという示唆から、カノンを特徴付けるために創り出した設定なのですが、ここまで利用できるとは思いませんでした。

 なお醜鬼も、むやみにマナ器官を移植し続けた、とある日本人一族のなれの果てという設定です。


 8、9、10話と、オープンカフェでの会話シーンが続いてしまいました。一方で、1人がほかの3人に身の上話を語る、自然なシチュエーションも思い浮かばず。アイナだけが他の3人の事情を知ればいいのですが、彼女自身はそうした話に興味を持とうとしません。タイミングをばらけさせれば良かったのでしょうか。いずれにしてもシーンの工夫が足りませんでした。



【第11話「アイナの一日」】

 この回は創作論AとB、あと後半の展開を盛り上げるために、多くの技法的な役割を持たせようとしました。――有り体に書くと、これらの役割をほかの話に持ち込めず後回しにし続けた結果、この回に集中してしまったという、とばっちりを受けた回です。こうした事情もあって、あらすじ書きではこの回は最後まで残り、とても苦戦しました。


 創作論Aの上では、「計画」と「進撃(drive)」を満たそうとしています。結局どちらも、学校に残って遅くまで勉強している様子をさらりと書いて済ませます。「計画」のほうは必須7段階の1つに上げられるほど重要な要素なのですが、首席を取るという「望み」に対して、話が盛り上がるような「計画」を思いつきませんでした。「進撃」も同様。物語のボリュームを稼ぐ段階なのですが、そうする意義を見いだせませんでした。


 創作論Bの上ではその知見に従って、日常シーンを描いています。一時は、朝から晩までエピソードのてんこ盛りにしようと考えていました。

 そこまでしないにしても、この回ではライヴォークに『ヴォン』、『ヴォーン』などと、どんどん発話させたかったところです。アイナがライヴォークに指示を出しておらずその切っ掛けを掴めなかったのが原因ですが、今振り返ると、やりようは幾らでもありました。


 などと、反省の多い回です。

 それでも、アイナがアワジマの2人に手紙を書くくだりは、本作で唯一の親娘三人水入らずの日常シーンです。とても愛おしく感じている回です。



【第12話「最後の演習」】

 創作論Aの「味方による攻撃」を意図した回です。前回の第6話「開発方針会議」ではユートが軽く攻撃しただけですが、この回ではコタロウがアイナを激しく攻撃します。


 3つ目のグループ課題は、3体のゴーレムの連携としました。これは実際のプログラミングでも、難度が高そうですね。

 PCゲームでロボットたちに簡易プログラミングをして団体戦をさせるシミュレーションゲームを遊んだことがあるのですが、私はチュートリアルの段階で白旗を上げました。ロボットたちがまったく意図通りに協調してくれないのです。

 このようなていたらくな筆者なので、アイナたちが課題に取り組む具体的な様子を書けるはずもありません。次の第13話で魔術程式を工夫する様子を描くのですが、それを私でも書けるレベルにするよう、この第12話では開発方針を誘導するのに腐心しました。



【第13話「動作テスト」】

 この回は創作論Aの22段階を含んでいません。課題8においてシーンを洗い出す過程で、話をつなげるのに必要と判断した回です。席次発表の前に、グループ課題に取り組む具体的な様子を提示すべきと考えました。

 合わせて、物語後半でのシガアの民とフォクリックの民の戦いや、アイナのマナ能力の高さを仄めかすことも狙いました。


 ここまでで3回のグループ演習が実施されています。しかしどれも、最初の企画段階から、先生に課題を提出して評価を受ける最後の段階までを描写していません。以前の私なら書いていたかもしれませんが、創作論Aの22段階と照らし合わせるとそのような展開を話に持ち込む余地が見いだせないのです。

 いえ、創作論Aに言わせれば、3つのグループ演習に取り組む様子をそれぞれ一通り描くのなら、物語の22段階を3回盛り込め、ということになるでしょう。

 後半でアイナたちの開発したゴーレムが大活躍する展開なら、グループ演習を詳述する価値はあったのかもしれません。しかしそうはなりません。企画から課題提出までの開発工程は、3つのグループ演習に散りばめて描写するだけに留めました。


 アイナが1人でテストに挑む場面は、本作で最初の疾走感を持たせたアクションシーンになります。基本、短い文を畳みかけていくのですが、語り部アアヤの口調を残しながらも短くするのに苦労しました。シガア地域編の戦いの場面も同様です。語り部を使用している他の作品がどうしているのか、研究したいです。



【第14話「席次発表」】

 この回は「見せかけの挫折(Apparent defeat)」をする回です。創作論Aは、主人公に徹底的に絶望させることを求めます。えっと、その後に立ち直るので、「見せかけ」と付くようです。

「第2の発見と決断」を「ユートの正体を知る」としていたのですが、これは本来の役目を果たしていません。アイナの新たな「望み」や「決断」を引き起こさないからです。こうして振り返ってみて、ようやく気づきました……。


 成績発表の場面では、教室が大騒ぎになったり、静かになったりを繰り返します。この様子を、似たような表現を用いずに描写するのに苦労しました。

 各創作論とも文章表現については指南していないので、この問題は自力で解決するしかありません。ちなみに多くの創作論は、文章力については、書いていれば上達する、とにかく量を書け、という体育会系のノリです……。


 ところでこの回、あるツールを用いて分析すると、作品全体で2番目にポジティブな語が集中している場面になります。「拍手」という語が多いのも、その一因のもよう。ツールも、ポジティブな語が主人公にかかっているのか否かまでは分析できないでしょうから、ともすればこのような見当違いの結果をはじき出すのでしょう。


 そんなアイナの絶望も、すぐに解決してはしまいますが。

 この回についてはアイナの必死さをできるだけ表現したく、文を足したり、表現を変更したりと、投稿直前まで推敲を繰り返しました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ