プロットやシーンを作成しました(※グラフあり)
【「語り部」を採用しました】
多くの創作論では、使用している用語に差異こそあれ、「ストーリー」と「プロット」を区別しています。ストーリーは物語を構成する様々な要素が織りなす多次元の構造体であり、プロットはストーリーを読者に披露するための切り口の1つである、といった具合です。小説は基本、一次元の文字列ですからね。
さらに創作論Aでは、プロットを「出来事そのもの」と「見せ方」の組み合わせとして捉えています。それが故に。創作論Aはプロットを検討する前に、「語り部(The story teller)」を採用するかしないかを決定すべきと主張します。語り部は主観を通して物語を語るのに加え、話の順序も自由にできるからです。
当初、私はこのあたりを深く理解せず、語り部は不採用と決めて、プロット作成を進めました。1月に模写した小説に習って、本作は3人称主人公視点にすると決めてかかっていたという理由もあります。しかしプロットの検討を進めていくと、それでは大きな問題があるのが見えてきました。ゴーレムに擬態している父親の様子を、主人公視点だと十分に描写できそうにないのです。
この問題を解決するのに語り部は都合が良さそうでしたが、すぐには決断できず。語り部を採用している小説で、手本になりそうな作品が思い当たらなかったからです。読んだ覚えも無い技法を用いて執筆するのは、リスキーに感じました。創作論Aは映画を中心に多数の作品を紹介してくれているのですが、原作小説の翻訳本はあっても電子書籍はないものばかりで、図書館は新型コロナのために閉鎖が始まっていました。ネットに当たっても思うように検索できません。明治時代の文豪による、猫視点で人間を風刺する著名小説を見つけ出すのがせいぜいでした。
ですが語り部を検討しているうちに、そうした不安よりも、自分にとって未知の手法に取り組む好奇心のほうが勝るようになります。こうして、ゴーレムの正体を知っている、既に他界している主人公の母親を「語り部」に据えました。
【課題7:プロットを作成しました】
創作論Aは物語を構成する22個の段階を抽出しており、課題7ではその各段階を記述していきます。22個の段階には以前取り上げた7つの段階も含まれているのですが、これも厳しい課題でした。1月に読んだ創作論の中には、「多すぎるだろ」と創作論Aをdisっているものがあるくらいです。追加された15個は必須にはされていないのですが、せっかくここまで創作論Aに従ってきたのですから、すべての段階を盛り込むことにしました。
ここでその検討過程を一通り紹介するようなことはしませんが、特に苦労したのは「発見と決断」を3回用意する点でした。しかもその発見は、回を追うごとに劇的にすべきとされているのです。これにはかなり悪戦苦闘し、最終的には「対抗者たちがそれぞれの事情を抱えながらも、首席を目指していることを知る」、「王子の正体を知る」、「自分の正体を知る」としました。2番目は無理やりなところがあって、作品でも生かせなかった嫌いがあります。
なおこの3回に「ゴーレムの正体を知る」が入っていないのは、主人公が自分の正体を知るのとほぼ同時期だからです。この2つの発見については、課題9で物語の詳細を書き進めるうちに、間隔を開けるのは無理だと気づきました。父親に会えた時点で、主人公が大きな行動動機を失ってしまうからです。
【課題8:シーンを洗い出しました、のはずが……】
シーンというのは、時間や空間が同一の場面のことです。場所が切り替わるのはもちろん、同じ場所のままでも時間が空けば別シーンと捉えます(移動についてはケースバイケース)。課題7で創ったプロットをシーンに展開し、それぞれを1文か2文で表現していきます。
これは多くの創作論で指摘されているのですが、シーンが変わるとその新たなシーンについての状況説明が必要になり、物語の進行がもたつきます。私はこれまでの作品で気ままに場面を転換していましたが、そのような安易な姿勢で行うことではないのです。まあ映像作品などは、制作費の増大に直結するという事情もあるように思いますが。
ここで全シーンを紹介するのは冗長なので、第1シーンのみを例示します。
・主人公が護衛ゴーレムを連れて、リゾート地から家出しようとする。説得に来た家政婦に応じないが、商業街のゴーレム工房への紹介状を受け取る。商業街に転移する。
こういった書き方で、初版では23個のシーンを用意しました。――今振り返ると、これは明らかに少なすぎます。この数倍はあるはず。先の課題で作った22個の段階を物語に落とし込むことに気を取られて、シーンを洗い出すという本来の課題の目的を忘れていたようです。従って、無駄に分かれているシーンを統合したり、あるいは物語を円滑に進行させるためにシーンを追加したり、といった精査ができていません。大きな失敗をしていました。
この課題8を意図された通りにこなしていれば、例えば第8話から第10話にかけてオープンカフェでの会話シーンが頻発しているといったことに、気づけていたかもしれません……。
【課題9:シーンを構築しました】
いよいよ最後の課題、全シーンを「構築」していきます。創作論Aは、シーン一つ一つが物語全体の中で何らかの役割を果たし、それ単体でミニストーリーを構成していることを求めます。ミニストーリーを構成できないなら、そのシーンを用意する必要が無い、というわけですね。とてつもなく要求水準が高い。まさに「構築」なのです。
さらに手順も手が込んでいて、まず会話文無しで物語を一通り記述します。安易に会話文で物語を進行させるような手抜きを許してくれません。そうした上で会話文を、行動説明をするもの、価値観にまつわるもの、決め台詞的なものと、3段階に分けて足し込んでいきます。難度が高すぎ、膨大な時間を要することが予見され、私にはとてもでは無いですが、できそうにありませんでした。
そこで手順を独自に簡略化します。まずはあらすじを、といっても後に描写する人物の行動はすべて記載する粒度で物語を記述し、それから本番書きすることにしました。一旦は会話文に頼らず物語を作り上げるというところは課題に準じるが、直しが入る前提の本番書きをする気力はないので簡易的に書く、という妥協手順です。このように4段階の工程を2段階にしました。
具体的にどのような記述をしたのか、第1話の一部を抜粋して例示します。
・いよいよアイナの番。ライヴォークに前進指示を出すが反応がない。これは今までなかったこと。後ろの行商人が先に行くよと声をかける。アイナが列を外れるとライヴォークが追随する。行商人の石製四つ足ゴーレムが荷車を曳いて転移していく。行商人も入っていく。
・アイナがライヴォークの挙動に戸惑っていると、アイナを呼ぶ声が聞こえてくる。日常の世話をしてもらっていた家政婦リーエのもの。アイナはライヴォークのせいで見つかってしまったと怒る。
描写等を省いているだけで、それなりに詳細に記述していることを見て取れると思います。
このあらすじは、全体で4万文字弱になりました。最終稿は14万文字なので、おおよそ1/4に相当します。またかなりの文を書くので、この時点で人名や地名も練り上げました。最終稿とほぼ同じになっています。
この構築を通してシーンの問題点に気づくこともあり、その場合は前の課題に戻ってやり直しをしています。特に「スパイ」を仲間に復帰させる展開は1800文字ほど書き進めて無理があるとあきらめ、キャラクター設定にまで遡って作り直しました。シーンも後半6個を捨てて、1個追加し7個のシーンに書き直し。これを本番書きで行っていたら、大変な手戻りになっていたところです。以降でも言及しますが、この「スパイ」、のちの「コタロウ」は本作の鬼門的存在で、扱いにとても苦労しました。
この課題9については大きく反省していることがあり、それは決め台詞の扱いです。本作にそのような台詞は出てこないと思っていたので、全く意識していませんでした。しかし今振り返ると、ライヴォークの『ヴォン』は、物語に丁寧に差し込むべきだったと後悔しています。そうしていればアイナが制限処理を停止した時のライヴォークの反応に、もっと重みを持たせられたのではないかと思うからです。
このあらすじは、順不同に書きました。特に物語後半の戦いから結末にかけては、早めに書いたと思います。
そうして最後まで残ったのが、第11話「アイナの一日」です。この回は「核となる一文」に沿う役割を持っていません。創作論Bで「多くのベストセラーには、日常シーンがある」と紹介されていたのと、キンキイ編でアイナとライヴォークがやり取りする場面が少ないのとで、用意しました。と、そこまでは良かったのですが、いざとなると日常エピソードがなかなか思い浮かばずに苦しめられました。
【設定しました】
ここではいくつかの設定について、考えたことを述べていきます。
まず登場人物の名前と地名について。
本作の舞台は、現文明が衰退した数百年以上未来の日本です。謎のエネルギー体系が地球を覆い、現在の生態系がくつがえされたという世界観でした。ただ、どこか新型コロナウイルスによって新しい生活様式に変わるのを想起させるように感じられて、物語の前面に出すのは控えました。――そんな話はともかく、そうした背景に基づいて、人名や地名は日本風にしています。
主人公たちの年齢は小学校卒業相当としました。その理由はこの「後書き」各所で言及していますが、文明が衰退したのなら独り立ちする年齢は下がっているだろうというのもあります。本作は2020年発表の作品ですが、この時代で12歳の子どもらしい名前に感じられるよう、2008年前後の赤ちゃんの名前ランキングを参考にして、愛菜、花音、悠人、小太郎と名付けていきました。コタロウは民が異なるので、他の三人とは違って古風な響きのある名前にしています。ほかの登場人物たちも、年齢設定に従って、その時代の名前ランキングを元にしています。
地域については、日本でもっともマナが似合う場所はどこかと考え、琵琶湖を選びました。そこから周辺地域をピックアップし、随分と試行錯誤しましたが、近畿地域の淡路島、新大阪、御所、二条、大江山、奈良、滋賀地域の長浜、朽木、新旭、安曇川、竹生、北陸地域などと読みを鈍らせ、地名を決めていきました。
続いて魔術程式について。
これはコンピュータープログラムの魔法版をイメージしています。そしてコンピューターに相当するのがマナ器官です。当初はCPUやメモリに類する設定を考えていたのですが、読者によっては馴染みがなくて分かりづらいと思い、ボツに。動物の器官に仕組みを寄せて、マナ肺、マナ頭脳、マナ筋肉を考案しました。
マナ肺活量については、具体的な数値を扱うのには抵抗がありました。これを出すと少年漫画のようなバトルが続くのかと、読者に誤解されそうだからです。ですが、物語後半に登場するダブル、トリプルといったシガアの民と、キンキイの民との格差を際立たせたい。妙案も浮かばなかったので、扱うことにしました。
【本番書きをしました】
約4万文字のシーン構築、あらすじ書きを終えたのが4月の中旬、そこから6月上旬まで本番書きを進めました。以下にこの期間の執筆累積文字数のグラフを示します。
平均で一日3000文字強のペースですが、日によって1000~5000文字とバラツキがあります。少ない日は筆が乗らなかったわけではなくて、ソシャゲのイベントの影響です……。
このペースは過去作執筆時よりも早いのですが、比較は困難です。その理由は新型コロナの影響で生活パターンが大きく変化しているため。往復2時間の通勤回数が大幅に減ったことを考慮すると、むしろ遅くなっているような気もします。
本番書きの順序は、詳細なあらすじを用意したこともあり、物語の順番そのままに進めました。これは私にとって、長編4作目にして初めてのことです。
文体については、空行を多用しない、普通の書籍向け風にしました。1月に購入した小説に感化された経緯もあって、正統に書きたかったのです。内容が多くの「なろう」読者に受けるようなものではなく、文体だけを「なろう」に寄せたところでしょうがない、とも考えました。
【推敲しました】
投稿前の推敲には、一週間程度をかけました。これは個人的にはかなり短い期間です。詳細なあらすじを書いたことにより、大きな直しが発生しなかったのも省力化につながりました。
一般的な推敲以外に行った作業として、以下、2つを紹介します。
1つは、話の区切り付けとタイトルの見直しです。
一通り書き終えた時点では、課題8で作成したシーンに従って24話分ありました。そこから1万文字を越えた回などを中心に分けていき、全30話構成にしました。それに伴い、各話のタイトルも付け直していきました。センスがあるかどうかは別にして、このタイトル付けは大好きな作業の1つです。
もう1つはルビ振り。
この時点で「魔術程式書家」には、「魔術程式書家」と、いわゆる「厨二病的なふりがな(Deep Furigana)」を付けるつもりでいました。しかし問題が発生します。
「魔術程式書家」はいいのですが、文中にはほかにも「魔術」、「魔術程式」、「程式」、「程式書家」、「程式書き」などと、その部分集合の語句が登場します。どこまでが「スクロール」で、どこからが「コーダー」なのか。「コーダー」は場合によっては「コード」、「コーディング」になります。私の中では一貫して付けられるのですが、読者は混乱しそうな気がしました。
さらにやっかいだったのが、語の切り出し方によって読ませ方が異なるところ。ワープロの機能で、ふりがなの一括付与ができません。
結局、音を上げて、こうしたふりがなを付けるのはボツにしました。
ほかに十分できなかったのは、人物や風景、あるいは心情の描写を書き足すことでしょうか。毎回ここまで作品が仕上がると、投稿したいという気持ちが強くなって抑えられなくなるのです。多くの創作論が、一通り書いた後にどれだけ書き直せるか、どれだけ書いた原稿を捨てられるかで作品の完成度が決まる、などと述べています。ですが私にはまだまだ、そうした高位の物書きの段階には昇れそうにありません。
以上、長くなりましたが創作論Aの課題にまつわる話は終わりです。




