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第5話:いざ!王都へ!

「ちくしょう・・・俺の完璧な作戦が・・・」


一人嘆いている要。前の様子を見て嘆いているのだ。

3人がいる先には馬に乗っているアークとフィアの姿があった。


馬車はモンスターとの戦闘により壊れてしまい、王女一人では馬に乗れないため、団長であるアークがフィアと共に馬に乗っているのだ。


「何故だ!俺の「助けて頂いてありがとうございます。私、あなたのことが・・・ぃゃ〜ん♪」大作戦が成功したのに、何故あのイケメン騎士が美味しい役をやっているんだ!」


色々と突っ込み所満載なのだが、大和は一つだけ頼み事をした。


「要、そういうことはお前の脳内だけに仕舞っとけ、間違っても口に出すな。そもそもお前馬なんて乗れるのか?」


「馬だって?当たり前じゃんか。馬なんて脅して乗ればいけるに決まってるだろ」


明らかにおかしい内容に大和はため息と共に言葉を漏らす。


「お前と乗ったら姫さん大怪我するだろうが・・・」


「はん!そこを助けてさらにポイントアップだろうが!そして俺は・・・むふふふふ」


物凄くヤバイことを妄想してるであろう要を放置することに決定した。


「でも実際、要の行動のおかげでこうやって人に会えた訳だし、あの人もお姫様なんだからお礼もお金とか貰えるんじゃないかな?王都って言う位だから相当な大きさだろうし、大きな街に行けて、お金も手に入って、最初の難題はもうクリアしてるんじゃない?」


朗の中ではお金を貰うことは決定事項なのだろう。たしかにお金の問題は切実であるため願ったり叶ったりだが。


「この先、どうすっかねぇ〜」


頭を掻きながらポツリと零す。


「決まってんじゃん、姫さんを落として俺が王様に・・・・」


スパコーーーン。伝家の宝刀「ハリセン」が要の顔にクリンヒットした。


「てめぇの意見は聞いてないんじゃボケェ!」


「ってぇなぁ!つか何でお前ハリセンなんて持ってんだよ!」


「んなもん旅行バッグの中に入れといたからに決まってるだろ!」


大和について訂正しよう。やはり大和も普通じゃないかもしれない・・・。


いつも通りのくだらないやり取り。その光景を見て何も変わらないね、と静かに呟き笑っている朗であった。




国境に着きライオネル王国内に入ると新しい馬車が待っていた。


「王女様、ご無事そうでなによりです。此度の政務、誠にお疲れ様でした」


「アーサー様こそ、このような場所にお越し頂き苦労を掛けますわ」


アーサーと呼ばれた男は初老の男性。年齢は50歳くらいであろうか、高貴な服を身に纏い雰囲気もまさに貴族そのものだった。

アーサーはチラっとこちらを見て近くに寄ってきた。


「君達が王女様を助けてくれたんだってね、本当にありがとう」


頭を下げお礼の言葉を述べる。するとそこへアークが近寄ってきてアーサーに注意を促した。


「父上、王国貴族家の当主である父上が人に簡単に頭を下げるのもどうかと思いますが?」


注意されたためか、一旦顔を上げ、アークを睨む。


「アーク、我が国の王女様を助けて頂いた恩人に対して王国貴族である私が頭を下げるな、と?陛下は間違いなくこの英雄達に感謝の意を込めて頭を下げるであろう。そうであるのに私にはその権利がないと?些か陛下に対する忠誠心が足りぬのではないか?」


鋭い視線に耐えられなかったのか、顔を伏せるアーク。


「うぉっ、さすが貴族。威圧感が違うねぇ〜」


要は大和にだけ聞こえるようにそっと耳打ちした。


「初めましてシュリンゲル卿、私の名はアキ=ダイゴと申します。こちらはカナメ=ハシバ、ヤマト=フシミと申します。卿自らの感謝のお言葉、深く感嘆の意を申し上げます」


父上、王国貴族という2つの単語からアーサーの立場を即座に理解した朗は先制口撃を仕掛けた。


アークを睨みつけていたアーサーであったが、少し驚いた顔をした後、優しい笑みで朗を見た。


「これはこれは、お若いのになんと礼節を弁えていることか。おっと、失礼、私は名乗っていなかったね。私の名前はアーサー=レクス=シュリンゲル。王国貴族といってもしがない男だよ」


明らかに貴族オーラが漂うアーサーだが決して嫌な感じはしない。


「先程の愚息の戯言、許してやって貰いたい」


「いえ、アーク殿の仰る通り、王国貴族であるアーサー様が頭を下げられては他の者に示しがつきません。ご聡明なアーサー様のことです、アーク殿の真意はご理解されているのでしょう?」


アーサーと同じように微笑みながら話す朗。

再び驚き顔になったアーサーであったがすぐに持ち直し、今度は真面目な面持になった。


「本当にお若いのに随分と思慮深きお方だ。旅人と報告を受けたが、どこかの名家のお方であるのか?」


「いえ、私達はしがない田舎村出身の旅人ですよ」


色々と情報が欲しいのか、様々な事を話す2人。アーサーと朗は共通する何かが存在するのか笑顔で話している。多数の口撃手段を持つ朗であるが、名門貴族との会話で習う事があるのか、笑顔の裏には黒いオーラが見え隠れしていたのだ。


そんな2人のやり取りを眺めるだけの大和と要。


((つ・・・ついてけねぇ・・・))


2人の心がシンクロしたのであった。








新しく馬車が着たこともあり、3人も馬車に乗っての移動となった。


「せっかく馬車に乗っても姫さんいなきゃ意味ねぇじゃんかよ〜」


いくら恩人とはいえ、王族と同じ馬車に乗る訳にもいかなかったので、3人は別の馬車に乗っていた。


「まぁ歩き疲れてたから馬車に乗れるだけでもよかったでしょ?それに、話したい事もあったしね」


馬車の中には3人しかいない。朗の話したい事とはこの世界についてだろう。2人は頷いて朗の話を聞き始めた。


「この世界は異世界で間違いないと思う。モンスターがいたし、魔法もあった訳だしね。でもこの世界でも魔法は珍しいんだと思う」


「あん?異世界に魔法って常識だろ?」


相変わらず謎な常識論を語りだす要。


「怪我人を癒した治癒魔法、でもね、アークさんが「姫様がいるから、大丈夫」って言ったんだよ。治癒魔法を使ったのは姫様であって騎士じゃない。普通魔法が盛んだったなら魔法使いが近衛に1人や2人いてもおかしくないと思わない?」


その時の光景を思い出し、頷く大和。


「たしかにそうだな、姫さんしか魔法をつかってなかったしな。他は使える人がいなかったと考えるべきか」


朗の推測に理解を示す。


「うん、予想でしかないけど、魔法はあるけど、広く一般的ではない、ってことかな。王族の姫様が使ってるところを見ると、魔法を使えるのは、ほんの一握りって感じだろうね」


「え〜なんだよ、折角俺も魔法を覚えようと思ってたのに」


異世界に憧れを持っていた要は残念そうに言う。


「まぁ推測の話だよ、実際は違うかもしれないし」


フォローが入ったため要の表情が明るくなった。


「っと、話がちょっと逸れちゃった。それでさ、今から向かう先はライオネル王国の王都「ラスティン」って言う街らしいんだよね。そこに着いてから何をするべきか、ってこと」


「何って、そうだな・・・帰る方法を探すってのが一番だと思うけど」


「えーーー、帰るの?俺帰りたくねぇよ〜」


一人駄々をこねる要。


「んじゃお前は置いて帰るとして、やっぱ可能性があるのは魔法ってことか?」


さらっと冷たい発言をして要を放置する。横からは「うわっ、それが親友に対していう言葉かよ!」とか何か騒いでいるが放置プレイを続行。


「そうだね、魔法が一番可能性がありそうなんだけど、どんな魔法があって、どんな使われ方をしてるかも分かんないし、まずは情報収集から始めないとね」


まだキャンキャン騒いでいる要。朗までもが放置プレイをしているため寂しくなったのだろう、ボソリと一言呟いた。


「ウサギってさ・・・・寂しいと死んじゃうんだぜ・・・」


渾身のボケ(本人自覚無し)までもスルーされたためか、要は街に着くまで馬車の隅っこで「の」の字を書いていた。



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