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第20話:続・激闘!男のロマンを懸けた戦い!

「セシルの初めてはワシが絶対に奪うと楽しみにしていたのに・・・ワシの楽しみをどうしてくれるんだ!」


アルディスは地団駄を踏み子供の様に拗ねている。その姿は可愛らしい・・・訳も無く、地団駄を踏みながらも魔法の玉は増え続けているその様子は恐怖の象徴でしかなかった。


「この恨み、晴らさでおくべきか!!」


ビシッと要を指差し睨みつける。逸早く復活した要は目を輝かせながらアルディスを賞賛した。


「王様!アンタ漢だぜ!アンタの言いたい事は分かる、だけどな・・・」


要はニヤっと笑ってアルディスを指差し返した。


「良い女は良い男に揉まれてこそ大きく育つもんだ!だから俺が揉みまくってやるよ!」


何言っとんじゃこいつはーー!と兵士達の心がシンクロした中、要理論に胸を打たれたアルディスは愕然とした表情をする。


「そうか・・・そうだな!そなたの言う通りだ!だったらワシが揉んで揉んで揉みまくっても問題ない訳だな!」


お前もかーーーーーー!と再びシンクロする兵士達。2人の会話は一歩間違えば犯罪者同士の会話にしか聞こえないため、他の人達は中々正気に戻る事が出来なかった。そんな中、アークだけは復活を遂げ秘策を実行するために近衛団員に耳打ちし行動に移させる。そしてアークは要の下へと駆け寄ったのだ。

しかし、2人の会話は止まる事を知らず阿呆なやり取りはまだ続いていたのだ。


「問題大有りだぜ!揉むのは俺だ!」


「何を!ではどちらがセシルの小さな山を育てるのに相応しいか決めようではないか!」


何か内容が掏り替わってないですかー!と心の中で突っ込みを入れる大和。彼らの頭の中では一体何を揉む話になっているのだろうか・・・。

一触即発な空気の中、アークは要に助言を掛ける。


「カナメ殿、助太刀いたす」


「ん?助太刀?なんで?」


アークの姿を確認したアルディスは顔を歪めて禍々しいオーラを纏っていた。


「なんじゃアーク。そなたもセシル「の」を揉みたいのか?くっくっく、セシル「の」を揉むのはワシじゃよ!」


「の」って何だよ「の」って!「の」は別にいらんだろーが!お前らやっぱり何か間違ってるって!と突っ込む大和だが恐ろしすぎて声には出せないのだ。


くっくっくと笑いながら禍々しいオーラを要とアークに向かって放つ。あまりの巨大なオーラに要は一歩後退った。


「や・・・やっぱ助太刀欲しいかも」


「あぁ・・・陛下は化け物だからな・・・」


そしてアークは万全の体制で迎えるため号令を掛ける。


「近衛隊!集合だ!陣を取れ!」


アークの言葉にはっと意識を取り戻し行動を開始する。アークは近衛のみならず魔剣士団をも呼び出した。


「魔剣士団!団長を・・・セシル様を守りたければお前達も来い!」


呼びかけに呼応して近衛騎士団、魔剣士団共にアルディスの前に揃って隊列を作ったのだ。その様子をじっと黙って眺めていたアルディス。ひい、ふう、みいと相手の数を数える姿は某お皿の数が足りないと嘆く人的な感じがしたそうだ・・・。


「なんだこれしか集まらんかったのか?貴様らワシのセシルのは揉むに値せぬと言うのか!許せぬ!許せぬぞ!まだ未熟ではあるがこれからに期待出来ると言うのに!だがセシルのを揉む事はもっと許さん!」


我侭大王理論を出したアルディスに突っ込み大王の大和は流石にもう耐え切れなくなり、大声を上げて死地へと向かう言葉を発してしまったのだ。


「無茶苦茶理論だしてんじゃねぇ!つか揉むの意味が何気に変わってんじゃねぇかよ!!真面目にやらんかぁーーー!!!」


一同は大和の突っ込みに顔を向けた。アーク他兵士一同は「ご尤もです!」と共感していたのだが、当の2人はそうではなかった。


「なんだそなたも揉みたかったのか、ほれ、下りてこんか」


クイクイッと指で誘う。初めは意味が理解出来なかったのだが、次第に指の意味を理解し青ざめる。


「し・・・死まったぁぁーーーーーー!?!?」


大和参戦決定!




ドタバタ劇を繰り広げている男達を他所にフィアはセシルの下へと行き、治癒の力でセシルの回復を祈っていた。衝撃は凄かったのだが、突き当てたのが鎧であったため目立った外傷はなく、衝撃により意識を失っているだけであった。

ん・・・と言いながら目を覚ましたセシルを見てフィアは安堵の表情を浮かべる。


「姉様・・・私は一体・・・というかアレは何だ?」


中央ではアルディス VS 大和・要・アーク・近衛騎士団・魔剣士団連合軍の戦いが行われていた。何故この様な状況になっているのか理解出来ないセシルは首を傾げる事しか出来なかった。




(このおっさん半端ねぇ!)


要がアルディスに感じた印象である。一対多数という絶対的に不利な戦況であるにも関わらず、苦戦を強いられているのは連合軍であった。驚異的な強さを見せるアルディスに連合軍の数はあっという間に半数以下になってしまったのだ。

間合いを詰めるため近づこうとすればアルディスの前に土の壁が現れ進行を妨げられ、一旦距離を置けば魔法に狙撃されるといった状況である。頻繁に魔法を使うアルディスの魔力は直ぐに底を尽きるのでは?と思ってしまうが、実はアルディスに蓄積されている魔力は半分も消費されていなかった。これはアルディスの巧みな魔力の調整によるものである。いくら魔法を放たれたとしても、距離が離れていれば避ける事は可能なのだ。しかしアルディスは相手が避ける事も計算し、魔法を放っていたのだ。相手の注意を向ける牽制用の魔法には発動に必要な最小限の魔力しか込めず、相手を倒す魔法には戦闘不能にすることが出来る最低限の魔力しか込めていなかったのだ。

連合軍からすればアルディスはただ魔法を連発している様にしか見えないのだが、実際には緻密に計算された戦略なのであった。しかし連合軍がそれに気付く事は無く、残すは大和・要・アークの3人だけとなっていた。アルディスの戦略による完敗である。


「後はそなたらだけか、まぁ予想通りの3人が残ったな」


勝利を確信しているのか、アルディスは余裕の表情で3人を見ている。アークと要は顔を歪め、対策を考えていた。大和は一人、なんで俺が残るんだよ!神よ!アンタは俺を見捨てたのか!?と無宗教であるにも関わらず神に文句を言っていた。実は3人が残ったのは偶然でも実力でも無く、アルディスがワザと残したのであった。最も楽しめそうな3人を残しガチンゴ勝負をしようと思っていたのだ。要とアークを残した選択は間違っていないのだが、大和は一般人である。アークやフラン同様アルディスも大和は強いと勘違いしていたのだ。あまりに場違いな空気にガクガク震えている大和であったが、アルディスの目には「能ある鷹は爪を隠す」といった様に見えていたのだ。


勘違いするに至った理由は大和が追撃用の魔法を避けていたからである。牽制用の魔法を前に出る事で避け、死角から襲い掛かってきた追撃用の魔法は身を深く屈め避けていたのだ。大和の一連の動作を見たアルディスは大和を強者と認識したのだ。

アルディスの戦法は牽制用の魔法を巧みにコントロールし相手が避ける方向を一つに絞らせる。回避する方向を操作しているため、牽制用の魔法を回避した直後に追撃用の魔法を相手の死角から当てるのだ。

大抵の兵士達は魔法に恐怖心を抱き、避けるとすれば後方へ、迫りくる角度によっては左右と逃げの回避を取るため、回避方向を操作するのは容易であった。

しかし、大和は初めて見た魔法に恐怖せず、前に向かって攻めの回避をしたのだ。前に出る事で回避した直後に当たるはずだった魔法も若干のタイムラグが生じる。その僅かな時間を用いて振り返る事も無く、身を屈めるだけで見事に回避したのだ。

アルディスの目には大和は才溢れる若き少年に映っていたのだが・・・事実とは悲しき事。

真実を明かすため、少し時間を遡ってみよう。




(なんで俺がこんな事を!ちくしょう、三十六計逃げるが勝ちだな!)


基本的に戦闘経験の少ない大和はもちろん乱戦など一度も経験が無かった。最初から自分が戦力になるとは思っていないので逃げ回る事に専念していたのだ。周りを見ればアルディスの魔法で次々に倒される兵士達が目に映る。いずれ自身にも向かう魔法に注意しながら逃げ回っていたのだ。するとふと目の前に「とある物」が落ちているのだ。それは大和専用の伝家の宝刀「ハリセン」であった。


(やっべぇ!早く拾わねぇと潰されちまうっ)


物凄い動揺が大和を襲う。まるで命の危機に瀕したかの様な面持で焦っていたのだ。

大和が常に持ち歩いているハリセン―正式名称"対突っ込み用最終兵器折り畳み式ハリセン"

このネーミングセンスは如何なものかと思うが製作した人間が付けた名前である以上その呼び名が正式名称なのだ。

このハリセンを作り上げたのは幼馴染の女の子と伏見家暴君タイラントの字を持つ大和の妹・撫子なこであった。何故この様な物を作ったのか尋ねたところ


『馬鹿ね、女にだって突っ込みたい時はあるのよ!』


と素晴らしい理論で諭されたのだ。本来このハリセンは幼馴染の女の子が使用していたのだが紆余曲折を経て、大和の手に収まったのだ。受け取った際に、大切に扱うようにと念を押されていたため、潰して使い物にならなくなれば現実世界に帰っても大和の死は確実となる。己の命を守るため、大和は乱戦の中に身を投じ、ハリセンを見事に拾い上げたのだ。この一連の動作が大和が魔法を避けた本当の真実なのであった。




要はアルディスの余裕の態度に負けてられるかと意気込み、強気な態度で言い放つ。


「当たり前じゃん!この俺と俺の マイ ベッド フレンド の大和がそう簡単にやられるかってんだ!」


「それを言うならベストフレンドだろボケェ!変な事言ってんじゃねぇ!つかお前のベストフレンドって何か嫌だなおい!」


「なっ何!?熱く激しく語ったあの夜を忘れたっていうのか!?」


「だがら勘違い発言はやめんかぁーーー!!」


余談ではあるが2人のやり取りを聞いていた女性兵士達は頬に手を当てながら赤らめていたという。・・・どの世界にも「この手」を嗜む者は居るということですね。


大和は必死に否定しているのだが、それはある種の照れ隠しの様に思え、アルディスは2人の関係を勘違いし驚愕していた。


「そ、そなた達は・・・」


そして目を瞑り顔を俯け、何かを考える仕草をしていた。数秒後顔を上げ目を開けたアルディスはそれはもう満面の笑みで寛大な大人の顔をしていたという。


「大丈夫だ!ワシは理解があるからな!そなた達のことは応援するぞ!」


両手を大の字に広げ、さぁワシの胸に飛び込んでおいでと言わんばかりの体勢を取り、理解を示す。2人を見つめるその眼差しは慈愛に満ち溢れていた。大和はそんな状況に耐え切れなくなり、人として大切な何かを失った気がしたのだ。


「そんな目でみるなぁーーーーーー!!!!!」


大和の悲痛の叫びが場内に木霊したのだ。




気が付けば残りは後2人。要とアークだけになっていた。大和はというと・・・精神的に大打撃を受けたため何時の間にやら隅っこに移動しており、壁に向かって体育座りをし、違う違うと呟いていた。


アークは2人の仲を勘違いしていないため、哀れみの目で大和を眺めていた。くっと顔を俯けながら目を瞑る。既に廃人と化している大和を見ると哀れ過ぎて目頭が熱くなっていたのだ。しかし今はまだ戦闘中であるため、気を取り直しアルディスへと顔を向けると、突如辺りの空気が一変したのだ。


「まぁあの子が抜けたのは勿体無いがそなた達でも楽しめるだろう。さて―死合おうか?」


その言葉と同時に無数の魔法の玉が2人に襲い掛かる。2人は反対方向へ飛び、別々の行動をすることでアルディスをかく乱させようとしていた。2人の戦法は至極単純であるが、1人を相手にする際には最も有効なのだ手段なのだ。しかしアルディスは2人の猛攻を物ともせず今だ互角、いや優勢を保っているのだ。

アークはアルディスの強さを身をもって知っているため険しい表情をしているのだが、要は野生の勘により何か違和感があると気付く。


(なんかおかしいな・・・タネがあるに違いねぇ。勝機を見つけるためにはソコが分からんとやべぇな・・・)


先程から捉えたと思われる一撃も難なく避けられていた。当たると思われた瞬間アルディスの動きが急に速くなり避けられているのだ。緩急のある動き、といえばそれまでなのだが要はその緩急のある動きも何かがおかしいと感じていた。巧みな緩急の使い手と仕合をした経験があったのだが、その相手はアルディスの様な違和感はなかったのだ。緩急だけでは片付けられない何かを感じながらも、確信を得られず戦闘は続けられていた。


対策の一つも練れない状況の中で戦況は一気に変化を迎えた。2人掛かりでもアルディスが優位であったのに、アークに魔法が直撃し動きが動きが止まってしまったのだ。槍を支えに何とか立てる状態であるため最早戦闘の続行は不可能と察し、アルディスは要へと振り向き、最後の攻防を繰り広げようとしていた。

緊迫した空気が張り詰める中、突如幼い女の子の声が場内に響いたのだ。


「父上!何をやっておるのじゃ!」



※大和の台詞は誤字ではありませんよ

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