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第2話:此処はどこ?

「いててて・・・」


目を覚ますと辺りは森一面。突然の出来事に固まる。


「ちょ、ちょっと・・・って要!朗!」


まだ気が付いてない要と朗を見つけ叩き起こした。無論、叩き起こされたのは要だけだが。


「いてぇ・・・って時間は!?」


辺りを見回しハテナマークが頭に浮かんでいる要。


「はて?ここはどこ?私はだぁれ?」


パコーーーンという音。

お約束のギャグをかまし、大和に激しいツッコミをくらう。


「このアホ!いちいちボケるな!」


「うるせぇ!ここはやっとくべきだろ!」


2人の無駄極まりない争いを他所に、朗は辺りを見渡し冷静に分析していた。


「2人とも、落ち着いて、今の置かれてる状況を考えようか」


朗に言われ、さすがにおかしいと思い素直に言うことを聞く。


「僕達は駅に向かうために急いで走っていた訳だよね?それなのに気がついたら森の中。普通に考えればありえない事態だけど、目の前のことが事実だからありえないことじゃない」


冷静に分析する朗に要が冷やかしを入れる。


「朗は走ってたんじゃなくて、俺にお姫様抱っこされてたんだけどな」


ニヤニヤと笑い顔で茶化す。


「・・っ!僕だって好きで抱かれてた訳じゃないよ!って話を端折らないでよ!」


顔を真っ赤にして文句を言う。


「ゴホン。とりあえず何か思うところはある?」


2人に「一応」尋ねる。


「あ〜俺はわっかんねぇや、風になることだけを考えてたから」


スパコーーーン。大和の突っ込みが再度入る。


「だからいちいちボケるな。俺がわかることは俺達はどこかに落ちた?って感じなのかな。俺が着地しようと足元見たら、なんか知らんけど穴が開いてたし」


ふむ・・・と考える仕草をする朗。

一度携帯を見て、ここが圏外であることを確認したのだ。


「それじゃあ断定はできないけど・・・ここは異世界、または平行世界って可能性があるね」


異世界という言葉に敏感に反応した要。


「異世界!?まじで?うぉーーーついに俺の時代がーーーキターーーーーー」


最早突っ込むことすら面倒になったのだろう、要のことは放置して2人で話し合う。


「異世界か平行世界って・・・あるのか?そんなこと」


「だからまだ断定はできないよって、ただ考えてもみなよ、都会の真ん中から森の中へ、なんてことが起こったらさ、可能性として有りえる、ってことだけどね」


後ろからはヒャッホーだのゥィェ〜ィだの謎の声が聞こえてくる。


「まぁたしかにな、有りえんことはないけど・・・ってかアイツ煩過ぎる」


後ろでまだ叫んでいる要を見てムカついたのか、足元に落ちていた石を投げつけた。

10回投げて1回でも起こるか起こらないかの奇跡の投石。速度、威力は申し分なく、見事に要の後頭部を目掛けている。

石の存在に気づいていない要の後頭部に当たると思われた直後、後ろに目でもついてるんじゃないかと疑いたくなるように頭を右に逸らし、左手で石をキャッチしたのだ。


「あぶねぇじゃんかよ!」


「てめぇが煩過ぎんだよ!」


再び2人の言い争いが始まり、呆れ果てた朗は2人にこう告げた。


「ここに居ても何も変わらなさそうだし、人里でも探すために移動しない?」


その魅力的な提案にただ頷くだけの2人であった。










「異世界♪異世界♪やってきたぁ〜♪」


謎な歌詞とメロディーを奏でる要。


------------------------------------------------------------------------------------------------


おい、なんでポ○ョっぽいメロディーなんだよ・・・


ん?あれ?何?俺の視点?主人公視点?・・・よく分からんがまぁいいや。


俺の目の前にいる謎の歌を歌っている馬鹿について少し話しておこうか。


こいつは羽柴僧院流槍術の後継者・・・って、え?もう知ってる?それじゃあいっか。


異世界、異世界歌ってる訳だけど、こいつさ、滅茶苦茶強いんだけど物凄い「オタク」なんだよね。

そりゃあ家に行けば、同人誌も山ほどあるし、ラノベの小説も山ほどあるし、年齢制限ついてるゲームソフトも山ほどあるし・・・・・・え?まだ18歳未満だよねって?もちろんそうだけどそれは気にしちゃ駄目さ。


まぁそんなこいつにも夢があってさ。小学校の卒業文集に書いたぐらいなんだ。

気になる?やっぱり気になるよなぁ〜、でもあんまり人に教えれる内容じゃないんだけどさ。それでも聞く覚悟はある?

・・・あるのか、わかった、一語一句間違わずに発表しよう。


さて!その内容とは!


「俺の夢! 6年1組 羽柴 要


 俺の夢は異世界に行って王様になることだ!王様って格好いいだろ?憧れるだろ?男のロマンだろ?男子生徒よ!諸君の夢は俺が叶えてやる!」


・・・あまりにデンジャラスな内容に言葉を失ったか?

俺だって最初に見たときは吃驚したさ。たしかにあの作文を提出したとき、要の作文を受け取った担任の教師の表情が固まってたっけ。

その後目に涙が浮かんでたな。懐かしい思い出さ・・・え?俺の書いた夢?聞きたいの?聞きたくないだって?そりゃそうだよなぁ〜俺なんかの小学校の頃の夢なんて聞いてもなぁ〜・・・・・・・・・・え?やっぱり聞きたいの?しょうがないなぁ〜俺の書いた内容は


「俺の夢! 6年1組 伏見 大和

 俺の夢は課長になることだ!」



・・・・え?ちょっと待てって。何帰ろうとしてんだよ。おい、その哀れみの目はやめてくれよ。

課長になるってすんげぇ大変なんだぞ。努力に努力を重ね、下げたくもない頭を下げる。世の中のお父さん世代は本当に大変なんだ。

上司と部下の板ばさみ。ストレス社会の一番の被害者なんだぞ。俺の夢を見て笑った奴。心の中でいい、お父さんに謝っておきなさい。


っと話がそれたな。まぁこの馬鹿はそれほどまでに異世界に憧れていた訳だ。だから今の状況が嬉しくて仕方ないんだろう。まぁ何があるか分からんからこの体力馬鹿が居てくれてマジで助かるんだけどな。


え?次のエピソード?次は何を話そうかな、そうだなアレは中学にあがって・・・ってあれ?何?終わり?ちょ・・・おい、ま・・・・・・・・・・


------------------------------------------------------------------------------------------------



「?どうしたの?」


大和の様子が変わったように感じた朗が不思議そうに尋ねる。


「いや、今物凄く不当な扱いを受けたというか・・・」


「??変なの」


天才少年ですら理解できない内容に朗はただハテナ顔をするのであった。






行く当てもないので、ただ前に進むだけの3人。


「ふっふっふ〜、異世界と言えば金髪美女な王女様とか可愛い子猫ちゃんとかが定番だよなぁ〜♪」


一人ハイテンションな要。王女様は理解できるが可愛い子猫とは如何なことか。

要を他所に言い知れぬ不安が胸を過ぎる。


(可愛い子猫ちゃん、って・・・あぁ、凄く嫌な予感がする・・・)


こんな時の大和の嫌な予感はかなりの確立で的中してしまう。それは特殊能力か?と疑いたくなるが決してそうではない。

ただ日頃から色々な事に巻き込まれしまうため、ある種の悟りが目覚めてしまったのだ。


そんな時、静寂の森に一人の女性の声が響き渡った。


「きゃーーーーー」


女性の悲鳴。元来、悲鳴というのは自らの危機に直面した場合や、普段起きる事のない出来事が起きた場合に出るものである。


その時、ウォーーーーンという獣の雄叫びも聞こえた。


「おっ、これは!イベントか!」


悲鳴と雄叫びが聞こえた方へと一気に駆け走る要。離れる訳にもいかないと2人も後を追いかけた。




どれだけ走っただろうか、草むらの中に身を潜める要を発見した。2人も同じように身を潜め、要が見ている方向へと顔を向けた。


「あれは・・・人と・・・モンスター?」


「おう、金髪美女にでっけぇ子猫ちゃんだぜ」


3人が見ている先は最早森ではなく、しっかり舗装されている道。と、そこには1人の女性と10人以上の男達、そして4メートルはあろうか、大きなライオンのような生き物がいた。

アレが子猫ちゃん・・・?要の思考回路は一体どのようになっているのかが気になるところだ。


「金髪美女って、金髪は分かるけど、美女かどうかなんて分かんねぇじゃん」


こちらからでは後ろ姿しか見えないため、相手の顔は分からない。

たとえこちらを向いていたとしても多少距離があるため顔が確認出来るか定かではないが。


「馬鹿野郎!あの格好を見ろ!絶対にどっかのお偉いさんだぜ。お偉いさん=美女ってのは異世界の常識だよ!」


物凄いどうでもいいことを熱弁する要。


「俺はお前に人としての常識を持って欲しいよ・・・」


呆れながら切実な願いを要に伝えた。


「?俺って常識人じゃん?」


互いの会話は噛み合っておらず首を傾ける要であった。




女性は遠目に見ても高貴だと分かる服装を身に纏っており、一目見ただけで一般人ではないと理解できる。

10人以上の男達も鎧を身に纏い、武器を構え、女性を守るようにしてモンスターに対峙していた。


「そんなことより、どうするの?このままって訳にもいかないよね?」


目の前の状況をどうするべきかと2人に尋ねる朗。


「ん〜やっぱアレ、どうみてもモンスターだよなぁ〜、武器もないしどうしようかなって考えてたんだけど」


目の前の異質な光景にも動じていない要はどうしたものかと考える。


3人がアレコレ話している間に向こうに動きがあったのか、ただモンスターと対峙していただけだった鎧を着た男達が隊列を作りモンスターに向かっていた。


さすがに4メートルもあるモンスターを相手にするのだ、皆必死に戦っている。

しかし、10人以上いてもモンスターの勢いは衰えることなく、一人、また一人とモンスターの獰猛な爪で吹き飛ばされていた。


すると、運良く、と言うべきか、一人の男が3人が隠れている草むら付近に飛ばされてきた。

男は気絶したのか手に持っていた槍を手放し、ピクリとも動かなくなった。


「これはチャンス!待ってろ俺の異世界ライフ!」


阿呆な言葉を叫びながら槍を拾ってモンスターのいる方向へと走っていった。


当然ながら大和と朗の2人は呆れながら追いかけていったのだ。




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