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04 最強のスライム。




 神様と話し終えた私は、椅子に座り、そっと囁く。


「ステータス」


 手を翳した先に、魔力で縁取られたステータスが表示される。


[【名前】

 ルルロッド・ノックス・ラピスラズリ

 【種族】人間族 【性別】女性

 【年齢】16歳


 【魔法】

 生活魔法レベル08 召喚術レベル10 

  水属性レベル08 火属性レベル08

  風属性レベル08 土属性レベル08

  雷属性レベル08 木属性レベル08

  光属性レベル08 闇属性レベル08

 創造魔法レベル08


 【称号】伯爵令嬢 召喚士 加護の保持者 転生者

 【加護】創造の神の加護

 【召喚中】スライム族・ラクシス 幻獣・エゼキエル]


 思わず、吹きそうになった。

 転生者って、記憶を取り戻すと現れる称号なのか。

 創造の神の加護も、今までは空欄だったが、記憶についてきたのだろう。

 創造魔法ってなんだろう。初めて見た。

 好きに魔法が使えるということだろうか。加護の効果かしら。

 召喚術以外オールレベル08なのは、全能的にしてもらったおかげだろう。

 最初はレベル03からのスタートだった。ちなみに通常の人間は、レベル01からのスタートだ。そして、魔法レベルは偏ることが普通。

 例えるなら、水属性が得意ならば、逆に火属性はレベル01のままになるとか。

 私のステータスを聞いた両親は、天才ともてはやした。称号にも、神童があったくらいだ。今はもう成人扱いだから、ないのだけれども。

 しかし、私はレベル03では満足しなかった。高みを目指し、自ら努力を積み重ねて、学園では成績トップはもちろんレベルアップもしたのだ。まぁ、一年前から、レベルアップは止まってしまったのだけれども。

 勇者のステータスを聞いた時は、この勇者で大丈夫かと心配したものだ。

 オールレベル07。それが、勇者アキヒロのステータス。

 そして、戦闘は未経験。だから、冒険者業で近隣で魔獣討伐をしながら戦いに慣れるようにしていた。今もそう。

 私は戦闘経験が豊富だ。学園で男子生徒相手にも負けず、魔法や体術や剣術を使ってきた。

 それに幻獣・エゼキエルを召喚獣にするために、遠くの地まで行き、頼み込んだ。カラスの群れが魔獣に襲われていたところに遭遇し、魔獣を討伐したら、あっさりと幻獣・エゼキエルと契約をしてもらえた。幸運だ。それが最強の幻獣だったのは、嬉しい誤算だった。

 他にも、魔物を倒しては契約を持ちかけて召喚魔にしてきたのだ。

 おかげで、召喚術レベルは限界のレベル10になった。

 この世界最強の召喚士と言っても、驕りではないだろう。

 称号になってもいいくらいだ。


「さてと」


 私は腰を上げて、教会から出た。

 すぐにカラスの姿をした幻獣・エゼキエルが、右肩に留まる。


「次は、ギルドに行きましょう」


 肩慣らしをしておきたい。創造魔法の使い勝手を知っておきたいのだ。

 冒険者ギルドで、魔獣か魔物の討伐依頼を受けよう。

 魔獣は魔物より知能が低く、獰猛で異形な獣。魔物も手なづけることが難しいらしい。

 魔物はラクシスのように従魔になるような人間に敵意のいないものがいれば、人間を食べるものまでいる。

 基本的に弱肉強食。強者の意思に従う。そんな世界だ。

 冒険者ギルドに到着した。

 左右には二階に繋がる階段があり、吹き抜けのデザインのギルドの建物。中央に受付カウンターがあり、右側には掲示板やソファーなどがあり、人が密集していた。


「ゴールドプレートの冒険者、ルルロッドですわ。依頼を受けたいのだけれど」

「ゴールドプレートのルルロッド様」


 三人ほど並んでいたカウンターに、首にかけていたプレートを提示する。

 彫られた名前を確認した受付嬢は、すぐにゴールドプレートの冒険者が引き受けられる依頼を探してくれた。

 冒険者は、六つのランクに分かれる。

 下からレッド、ブルー、グリーン、ブロンズ、シルバー、ゴールドだ。

 最高冒険者はゴールドプレートを持つ資格があるけれど、実はレベル8の魔法さえ使えればあっさりとなれるのだ。他はトータル結果だろう。だから、私からすれば、冒険者のレベルは低い。ゴールド以上のランクがないことが惜しいが、他にいないのだから仕方がないか。


「お一人、でしょうか?」


 手を止めた受付嬢が問う。

 私が勇者パーティーの一員だと覚えていたのだろう。

 念のため、のように確認する。


「一人じゃないですわ」


 私はそれだけを返した。


「失礼しました。ゴールドプレートの冒険者パーティーに頼みたい依頼が、複数あります。巨大蠍型の魔獣の討伐」

『却下だな。蠍の魔獣は子連れが基本だし、毒消しが大量に必要になる』

「獅子型の魔獣の群れの討伐」

『それが良さそうだ。群れと言っても、多くて四体だろう』


 ラクシスが思念伝達で、私だけに意見を言う。


「それを引き受けますわ」

「詳細の依頼書です」

「ありがとうございます」


 カウンターの上に差し出された依頼書を受け取り、早速向かおうと踵を返す。


「あの、ルルロッド様。本当に一人ではないのですよね?」


 受付嬢がまた確認してきた。


「私は召喚士です。常に一人じゃないですわ」


 そう顔だけ振り返って、ニヒルに笑う。

「お待ちください!」と受付嬢が慌てたけれど、私はギルド会館をあとにした。


「南の街外れの森の手前に目撃情報、ね」

『特徴がシルバーの鬣とベージュの胴体と顔か。やはり、シルバーライオンで間違いないな。後ろに従魔をつければ、充分だろう』


 肩から依頼書を覗き込むラクシスが助言をする。

 こんな感じで、ラクシスは助言をくれるのだ。

 勇者一行が嫌がった指示は、私ではなくラクシスのもの。

 賢者と呼ばれるまで成り上がったネラ・クシスの指示だった。


「わかったわ、ラクシス。エゼキエル、前から来る魔獣を殲滅してちょうだい。後ろは気にしないでいいわ」

『了解した』


 右の掌を出すと、ポッとラクシスが杖を吐き出す。

 魔法使いに必須の装備アイテム。先端に瑠璃色の魔力の宝玉がある長い杖。宝玉は、父が高いお金を払って手に入れた代物。魔力の増幅装置と行ったところだろう。これを通じて魔法を行使すると、だいたい魔力が三割増しになるのだ。魔力量を節約したい時には、魔力の宝玉は必須。

 ラクシスが『オレもこれ使ってたー!!』と興奮していたことをよく覚えている。

 ちなみにラクシスの中には、色々収納出来る。生活魔法レベル10の彼が、使える魔法なのだという。

 そう、生活魔法に収納魔法は含まれている。

 私も収納くらい出来るけれど、収納量が違う。


「ラクシス。あなたの収納量は一体いくつだったかしら」

『突然どうした? まぁいいが。無限だ』

「無限」


 それは、差が天と地ほどある。それにレベル10だと無詠唱で済む。

 全く、才知が全能な賢者は便利である。


『ところで、ラクシスはなんでまたスライムに転生したの?』


 ラクシスにだけ思念伝達で話しかけると、スライムボディがぶるんと震えた。


『やっと記憶が戻ったのか!? ルルロッド!』

『ええ、だから神様と話をしてたの。何故か追放を言い渡されたところで、前世を思い出したわ』

『最悪、このまま前世を取り戻さないかと思ったぞ』


 ラクシスがしつこいくらい前世前世前世と言ってくれれば、思い出したかもしれない。しかし、後の祭りだ。


『それで? この世界では、スライムは最弱の存在でしょう? なんでまたそんなスライムに転生を選んだの?』

『何言ってるんだ、ルルロッド。確かにこの世界では物理攻撃でも子どもにすら倒される存在だが、オレは前世のステータスをそのまま持って生まれてきた。物理攻撃無効の魔法を使えるし、全属性の魔法も無効出来る。つまりだ、ルルロッド。オレは史上初の最強スライムとなったんだぞ』


 左肩にしがみ付くスライムを見てみれば、威張った顔をしている。

 3という数字を横にしたような口元で、ドヤ顔。


『そんなオレを従者に出来たことを幸運に思ってもいいんだぞ』

『感謝しているわ。ネラ・クシス様。でもなんでまた私の従者になることを承諾してくれたの?』

『オレが欲しかったのは、最強のスライムの称号だ。それは手に入れたし、転生させる条件だったからな。じゃじゃ馬令嬢だったら、すぐに契約解除しようとは思ってたけど』


 今度は少し口の端を吊り上げた気がする。


『中身は勤勉で努力家の女の子だったからな。オレはずっとそばにいてやることにしたんだ』


 そう言ってくれるラクシスに、私は微笑みを溢す。


『ありがとう、ラクシス。これからもそばにいて』

『お安いご用さ! 我が主!』


 子猫の肉球のように冷たくてぷにぷにするスライムの頭を、人差し指で撫でた。



 


20190920

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