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01 追放されし召喚士。




好きなもの詰めすぎた102作目(。・ω・。)ノぁぃ♪


20190916





 何故、自分は自分なのだろうか。

 そんな疑問が湧いてくる時がたまにある。

 今の自分の人生に対して不満や失望があるわけではなく。

 単純に、自分が自分であることの不思議さを覚える。


 嗚呼、何故、私は私なのだろう。


 そんな現実逃避の思考をしてみた。


「悪いけれど、ルルロッド……こんなことは本当は言いたくないけど、君はパーティーから外れてほしい。ごめんね」


 申し訳なさそうに言うのは、勇者。

 勇者アキヒロ。異世界から召喚されし者。

 世界を支配しようとする魔王を倒すために、あらゆる才能を持った人間を召喚するのだ。今回は、彼が召喚された。

 少し茶色の髪とブラウンの瞳を持っていて、どちらかと言えば、可愛いという印象を抱く顔立ちの少年だ。


「アキヒロ様、もっとはっきり言った方がいいわ! 無能だから、追放だって!」


 その勇者アキヒロが腰を下ろしているソファーに同じく座っているツインテールの少女が、面白がるように言った。

 魔法使いハンナ。広範囲攻撃魔法に優れている。

 性格は悪いと思う。そして勇者アキヒロにメロメロである。


「スライムとカラスしか使わない召喚士なんて、初めから雑魚だってわかってたけど! 今日の魔獣討伐の時の態度は何様ぁ? 指示とかしてきてまじ目障りだった!」


 勇者アキヒロの後ろに立つのは、甲冑を纏っているのに胸の谷間と腹部を見せ付ける格好の女騎士。言わずも剣術に長けている。

 性格は悪い方で男勝り。名前はブリアナ。そして勇者アキヒロにメロメロである。


「そうですわね。攻撃の指示や回復まで指示して……勇者様ならまだしも、無能なあなたにされてはわたくしも怒りを覚えてしまいましたわ」


 勇者の右隣に礼儀正しく座るのは、治癒士の女性。長袖ワンピースの上からでも豊満な胸とくびれがわかるナイスボディー。物腰柔らかい物言いでもやっぱり性格は悪いと感じる。名前は、モリーナ。そして勇者アキヒロにメロメロである。


「で、でも! 的確な指示だっただろう?」


 勇者アキヒロがフォローをすると。


「アキヒロ様ったら! 本当にお優しい!」

「でもこんな無能には必要ない」

「そうですわ、でも仕方ないですわね。勇者様はお優しいのですから」


 目がハートの形になるんじゃないかってくらい、メロメロな表情で勇者を見る三人。そう、メロメロなのである。

 女性を魅了する才能も持っているもよう。

 私には何故かそれは効かないけれど、魅了されているふりはしていた。

 私はこの勇者パーティーにいなければいけなかったからだ。

 馴染むために、居座るために、同調していただけ。


「それに聞いたよ〜?」


 ツインテールの少女ハンナが下衆な笑みを浮かべた。もちろん、勇者アキヒロには見えないように、手で隠して。


「婚約破棄された令嬢なんだってぇ?」

「しかも、嫌がらせしていたっていう悪事を暴かれて」

「公衆の面前で婚約破棄、クスクス」


 私は公爵子息に婚約破棄をされた伯爵令嬢。それを知っているのは、貴族達。そして、事情を話した勇者アキヒロだ。

 勇者アキヒロから聞いたことは明白で、私は黒い瞳を彼に向けた。


「あ、ごめん……」


 また申し訳なさそうな顔をする勇者アキヒロ。

 事情を話したのは、私ではない。私の父である伯爵だ。

 貴族の中で立場が悪くなった私に、名誉挽回のチャンスとして与えられたのは、勇者パーティーへの参加だった。

 父は国王陛下に頼み込み、資金援助の代わりに参加資格をもらったのだ。

 私は通っていた魔法学園でもトップの成績をキープをしていた。

 中でも召喚士という職が合っていたから、国王陛下も力になれると思って許可を下したことを、勇者アキヒロは聞かされたのだ。


「ちょっと! ショックのあまり何も言えないの? あはは!」

「なんとか言えよな、謝罪とかさ」

「本当ですわ」

「皆、やめなよ……そういうことだから、ごめん。ルルロッド」


 追放通告を受けている私は、それどころではなかった。


『この生意気なガキどもに、真実を告げたらどうなんだ? ルルロッド』


 左肩にしがみつくスライムが、思念伝達で言ってくる。

 まるで子猫の肉球のようにひんやりとしてぷにぷにの感触。

 目は持ち合わせていないけれど、ヘコませて目の形を作り、口は3を横にしたような形を保っている愛くるしい水色スライム。


『その必要はない。殺してしまえ。命じればいい、我が主ルルロッド』


 右肩に乗っているカラスもまた、思念伝達で言う。

 漆黒の羽毛に包まれて、とてももふもふが最高。

 瞳だけは紅く光り妖しげ。ハンサムな感じのカラス。

 このカラスもスライムも、私の優秀な従者である。

 この思念伝達は、私だけに伝えたもの。だから、物騒な発言は、勇者一行には届いていない。

 でもそのことで一杯一杯になっているわけではなかった。

 なんでこんなタイミングで思い出したのだろう。

 わからない。

 でも、思い出したのだ。

 勇者アキヒロが召喚されたであろう異世界で生きた記憶。

 前世を思い出したのだ。

 そして、私は神様に拾われた。



 

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