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少女
夏休みの海は人で賑わっていた。
その人々を横目に私は堤防へ向かって歩き出す。
堤防に腰掛け海を眺めていると、横から視線を感じたため横目でちらりと見ると、そこには1匹の黒猫がいた。
「ひとりぼっち?」
当然黒猫は答えない。
私は黒猫と一緒にしばらく海を眺めていた。
夕暮れ時になり辺りが静かになったころ、私は気づいてしまった。
このまま海に飛び込めば悠里のいる世界へいけるかもしれない、と。
しかし私にそんな勇気はない。
ため息をつき、帰ろうと立ち上がったとき、黒猫はもういなかった。
「帰る場所あったんだ」
私は歩きだそうと振り向いたがそこで足が止まる。
目の前には真っ黒の長い髪をなびかせた美しい少女が立っていた。