5/9
中心
帰宅してからも私は進路希望の紙と向き合う気にはなれなかった。
私がしたいことは何なのだろうか。
出来ることならば悠里を取り戻したい。
しかしそれは叶わぬ事だとわかっている。
ならば私の夢など・・・ない。
それから数日が経ち、私は夏休みを迎えた。
手帳を見ると悠里との約束が多く残されていた。
海に行く、ショッピングに行く、一緒に宿題をする・・・。
これはもう全て叶わない。
私は手帳をゴミ箱へ投げ捨てた。
数日ごろごろとベッドで過ごしていた私は、悠里と行くはずだった海へ行くことに決めた。
ヘッドホンを持ち家を出て電車に乗り込む。
ヘッドホンをつけていると、世界はもともと私1人だったように感じる。
「このままどこか遠くへ行けたらいいのに」
悠里がこの世界にいないのならば、悠里がいる世界へ私が行けばいいと思った。
しかしそんなことは出来ない。
そんなことをしたら悠里に怒られるだろう。
私の世界は悠里がいなくなっても悠里を中心に回り続けている。