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喪失
数週間後、私は久しぶりに登校した。
教室に入るのが怖い。
しかし教室内には悠里がいるかもしれない。
全ては夢で、また元気に私を迎えてくれるかもしれない。
そう思い、私は扉を開けた。
騒がしかった教室内は私を見て静寂に包まれる。
しかしすぐにその騒がしさを取り戻していった。
私は悠里の姿を探す。
しかし、悠里の机の上には花が飾られていた。
それは私に悠里がもういないことを知らしめてきた。
「・・・本当にもういないんだ」
私はぽつりと呟いた。
誰にも聞こえないように。
帰り際、担任の先生から呼び出しがあった。
「悠里さんが亡くなって辛いのはわかるわ。それでもあなたは前に進まないといけないの。」
進路希望の紙の提出を求めていることがわかる。
しかし、先生に私の何がわかるの?
悠里を失うことは辛いことで片付けられる問題ではない。
悠里は私の世界そのものだったのだから。
先生の言葉に適当に相槌し、私は職員室を後にした。
いっそのこと、世界が終わればいいのに。
そんなことを願いながら。