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Case5+α.クロマトグラフィー
眩いほどに真っ白で、誰もいない空間に黒いインクがぽたりと落つ。
インクの黒い染みはクロマトグラフィーのように部屋一面に拡がる。
吸い寄せられるように、それでいて自らも意思を持って拡散していくように。
――ズズズ、ズズズ、ズズズ
ずぶずぶと音を立てながら真っ白な部屋を ずぶ ずぶずぶ ずぶずぶずぶ
侵食し、支配し、占領し、洗脳し、攻略し、拡散する。その意志を継承するかの如く白い部屋は穢れを受け入れ、汚れを受け入れる。
べちゃりと爆発的な広がりを見せた黒の侵略だったが、白い部屋のキャパシティに比べればそんな汚れは気にもならない事象である。つーー、と一筋の黒インクは床面を滑ることなく深く深く落ちていく。床面の中にずぶりずぶりと染み込んでいった。一矢報いたと誰かがほくそ笑んでいる。そんな気がした。