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アンチヒーローズ  作者: ドクぺ主食人間
序章  観測者達のプロジェクション
3/20

Case3.駆け足

うんうん




【Open The Eyes----】


 都会よりの田舎、そう表現するにふさわしいこの街には我々の知る限りでない事象(じしょう)が存在する。


 例えば、今しがたすれ違った幼い女の子が実は数百年と生きており語尾(ごび)に「のじゃ」を付けていること。


 例えば、車道を挟んだ向かいの道を行く双子の姉妹は、知れば命を狙われるような情報をいくつも保有(ほゆう)し、保有のみならず情報の売買を生業(なりわい)としていること。


 この街に住む全ての人がトンデモびっくり人間というわけではないが、平凡なように見える人々も焦点次第では世界を揺るがす恐ろしい真実を手に入れた人だっているのかもしれない。


 日常に飽き飽きするものもいれば、非日常に悩まされる人もいる。


 現実世界で英雄(えいゆう)的扱いを受けているものが、ネットワークで繋がった先では罵詈雑言(ばりぞうごん)の嵐に遭遇(そうぐう)したり。 その逆もまた(しか)り。


 接点はなくとも間接的に干渉(かんしょう)することが可能なこの世界。

 目まぐるしく移り変わる世界の(ことわり)に身を(ゆだ)ね、数々のドラマが生まれては消える様を(なが)める。


 【まるで育成キットを外側から眺めている気分だ】




 【ゲームでいうチュートリアルだ。手始めに、先ほどから息を切らしつつ約束の時間に間に合うべく駆け足で歩道を進んでいる人間に焦点を合わせるとしよう】





「はぁ……! はぁ……! クッソぉぉ間に合ってくれえぇぇ!!」


 俺の名前は相馬(そうま)ソウマ。

 よく変な名前と聞かれるが地雷なので触れないでほしい。


 詳しいことは、今急いでいるから勘弁な! 今日もバイトでヒーローのお世話係を任せられているのだが、これがまた刺激(しげき)的な仕事……。

 といえば聞こえは良いが担当するヒーロー達が個性的すぎて中々一筋縄(ひとすじなわ)ではいかないのだ。


 なんでこんな仕事バイトに任せるのかなー? と疑問に思うのだが、俺の担当するヒーローは比較的安全という部類に分けられているからこそアルバイトの仕事が出ているのだろう。 


 微塵(みじん)も安全と思えない人がちらほらいるのだけどね。


 まぁ、今日担当する≪シルバーウィングさん≫は常識人として有名だ。

 何と言っても彼の魅力は名前にもある通りの銀翼(ぎんよく)だ。

 その翼は美しく、そして何より男のロマンのメカなのだ!!


 そう、彼はお手製のメカニックを身に纏い、町の平和を守っている英雄なのである。

 かなり真面目な性格をしており、予定していた時間を遅れようものならどやされるのは確実だ。


 そうならない為にも今こうして走っているのだがおかしいな……? 

 いつもの彼なら、連絡の一つでも寄こしてきそうなものだが、今日は未だに来る気配はない。


 職業柄、急な支援要請はつきものなのだがいつもは、


「すまないソウマよ! ヒーロータイムだ!」


 と、連絡してくれるのだが連絡が来なかったのは今日が初めてだ。何はともあれ彼の家に向かえば何かしら情報がつかめるだろう。


 彼の住む家の玄関にたどり着いた。時間は……ギリギリセーフだ。深呼吸でもして乱れた呼吸を整えよう。

「ス――――ハ――――ス―――…… シルバーさーん? こんばんはー相馬でーす!」


……うーん、やっぱりお仕事に行っちゃってるのかな? 


 そういえば前に合い鍵をもらっていたのだった。

 なんやかんや信頼してくれているのかなーなんて思っちゃったりしているが、もし何かあったとしても彼ほどの強いヒーローなら完璧に対処してしまうのだろう。


「お邪魔しまーす、うわ」 思わず唸ってしまう。


 やはり汚い。

 我が家のモンスターに負けず劣らずといったところだ。世間的には常識人で通っているがこんなルーズな一面があることを知っているのは俺を含め数人しかいないだろう。



 さて、普段の業務は話し相手などもあるが、今日は掃除くらいだろうか。


 早めに帰宅できそうだ。



【ぐるり、と観測する対象が移り変わる。先ほど焦点を当てた好青年は何事もなく作業を終え、帰路(きろ)()くのだろうと】




ねこかいたい

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