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アンチヒーローズ  作者: ドクぺ主食人間
序章  観測者達のプロジェクション
2/20

Case2.ふりだし

続きです。がんばってかいたのでよんでください



 


 とある賃貸(ちんたい)マンションの一室に青年が二人、各々の作業に集中している。黒を基調(きちょう)とした服を身に(まと)っている青年が口を開いた。



「相馬ソウマは平凡なごくごく普通の大学生である。彼を一言で表すならば”パッとしない”飽き性で物事に打ち込むことも、執着していることもなく、今日も(うつ)ろな目をしてこう(つぶや)くのだ」


「「あー、なんか楽しいことないかなぁ……」」

二つの声がシンクロする。




 二人の間に微妙な空気が流れる。

 慣れたような(あき)れたといったように、緑色が好みなのか髪とアウターを暗い緑色に染めた青年。

 相馬ソウマと呼ばれる青年はジト目気味にもう一人の青年を軽く(にら)んだ。



「おーい さっきからブツブツ言ってんの聞こえてるぞ~ オマエのその独り言も考え物だなー」

 

 不服(ふふく)そうに相馬は呟き、手元にあるスマートフォンのディスプレイへと視線を戻した。


 苦言を(てい)された青年はというと、ケロっとした様子で言葉を(つむ)ぐ。


「そう言ってツッコむのは彼の得意分野だと言っても過言ではないだろう、と私は心の中で独り言を終えるのであった」


「いや、心の声()れてますけど……あのさぁ、独り言はオマエの勝手だけどよー」


 相馬はベッドに横たわったまま不満の声をあげている。

 視線の先にあるディスプレイからはピクリとも目を離さない。


「誰かに語り掛けるように話すの(まぎ)らわしいから止めてくんないかなー」


 そう言いつつも相馬は目の焦点を動かさない。


「すまんな相馬ソウマ、俺は俺で事情があるんだ」


 黒い服の青年は口に人差し指を当て、しーっといった具合でまともに取り合わない。

 はぁ、と相馬はため息をつき面倒くさそうに黒い服の青年をあしらう。


「ハイハイ、オマエとは長いこと一緒にいるけどその(くせ)は慣れないなぁ……」

 

 昔から色々と苦労しているようだ。




【ふと、黒服の青年はこちらの存在に気づき、語りかけてきた】




 やぁ、初めまして? であっているのだろうか。まぁ、細かいことは君自身の脳内で補完(ほかん)してくれて構わない。


『事実というものは存在しない。存在するのは解釈(かいしゃく)だけである。』


 俺の大事にしている言葉だ。

 あまり身構えないでくれよ、君を悪くしようとするつもりはない。

 そう、つもりはない。


 つもりはないが、ついつい君に干渉してしまうことがあるかもしれない。

 君の目、耳を奪うことも、我々と君が強く引き寄せられた(あかつき)には君の脳内までも我々の()のまま、といった具合だ。

 だが、安心してくれたまえ、まだ我々にそんな力は存在していないのだから。


 ふふ、まぁ俺のことは頭のおかしいやつだと思ってくれて構わないさ。


 軽く説明を(はさ)もうか。


 相馬と俺は二人で同じ家に住んでいる。シェアハウスというやつだ。

 何故(なぜ)同居しているのか説明する前に、こいつとの出会いを話しておこう。


 初めは家が隣ということもあって親同士の仲がよかったらしい。

 それに付け加え、誕生日も同じ9/12という偶然に始まり、小中高と学校が同じで、俺が理系の学部で相馬は文系ではあるものの同じ大学という数奇(すうき)な運命である。


 大学入学にあたって俺は憧れの一人暮らしを始めたのだが、俺は家事が不得意……というかサボりがちだった。

 見るも無残(むざん)な俺の家に相馬が遊びに来るたびに、料理、掃除、洗濯(せんたく)なんでも完璧(かんぺき)にこなしてくれた。


 ヤツを“パッとしない”と酷評(こくひょう)したものの、そういう面ではとてもありがたい存在である。

 そして相馬は少し距離のある実家から大学へ通っていたこともあり、シェアハウスの提案をしたのだ。

 ……俺が。


 本当は提案というより一人暮らしの厳しさを思い知らされ、助けてくれと。

 まぁその事実もまた、解釈の違いがあるのだろう。


 初めは色々と新鮮だったが、幼馴染(おさななじみ)ということもあってかすぐ慣れたのは言うまでもない。

 そうだ、俺の名前をまだ言ってなかったな。んん……悩みどころだな。


 とりあえずは“(かた)()”と名乗っておくとミステリアスな感じで格好(かっこう)いいのではないだろうか。




【相馬は(くう)を見入っている語り部と名乗る青年を心配そうな顔で見つめている】


 じーっと一点見つめ、しかしながら、ぼんやりとはしておらず集中している様子の語り部。 

 (はた)から見ると相当アホみたいな姿だった。見かねた相馬は声をかける。


「また変なこと考えてるんですかー?」


 突然話しかけられたことにビクっとしつつ語り部は相馬へ返事を返す。


「ふん、……まぁお察しの通りだ」


 焦りを取り戻した語り部は、ふと視線を落とし携帯電話を開き、時間を確認する。

 時刻は17時に差し掛かっていた。


「おい、相馬ソウマよ。もうすぐバイトの時間じゃなかったか?」


 相馬はピクリと反応。聞いてすぐは唖然(あぜん)としていたが、事態を呑み込むうちにみるみる顔が青ざめていった。突如、


「おああああああ!ヤバイヤバイヤバイヤバイ!! 今日はシルバーウィングさんの担当じゃん!! あの人スッゲー時間に厳しいんだった!!」


 相馬は(もう)スピードで(かばん)に荷物を詰め込みどたどたと音を立てながら出ていく。

 部屋に静寂が戻ったと思いきや再度どたどたと足音が近づき相馬が扉からひょこっと顔をだした


「あ、そうそう! 今日は遅くなると思うから戸締りよろしくな! じゃ!」


 再度、相馬は部屋から騒音を連れて駆け出していった。


「あぁ、バイト頑張れよ」一人だと少し広く感じる部屋に静寂が戻った。




自称適当人間。いえ自他ともに認める、の間違いでした、たぶん。

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