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アンチヒーローズ  作者: ドクぺ主食人間
第一章  糸繰り達のガイア理論
13/20

Case10.GO! GO! DANGER!




 何かの部室なのだろうか。

 狭い部屋にホワイトボード、部屋の真ん中には大きな机とパイプ椅子が四つ両脇に二つずつ置いてある。

 部屋の隅にも予備と思われる椅子が折りたたまれた状態で二つ放置されている。


 そこに座るのは、丸眼鏡をかけた真面目な委員長風の女性。

 椅子に浅く座りスマートフォンを弄んでいる男。

 そして漫画を読みふけっているこちらも男。


 ガタンと音を立て、椅子から立ち上がる丸眼鏡ガールは、意欲に満ちた目をして鼻息をふんすと荒げた。


「アナタたち! 取材に行くわよ!」


「え、今からですか?」


「そうよ! 時すでにお寿司ってね!」


「弥生先輩、お寿司でもないし遅しだとしても違いますよ。思い立ったが吉日、って言いたいんですよね」


「そうとも言うわ!」


「そうとしか言わないですよ」


 スマートフォンを弄んでいた少年は、弥生と呼んだ丸眼鏡の女の子へ淡々と対応する。漫画っ子の方は、そんなやりとりにピクリとも反応せずページをめくっている。


「それはそうと、どこに行くんです? グロの事件はもう手詰まりだって言ったじゃないですか」


 ふっふっふ、と腕を組んで得意顔の女子生徒。

 下から支えられた拍子にゆさっと動く、その胸は豊満であった。


「前に私は手詰まりだと言ったわね。……アレは嘘よ!!」


「……」

 ジトーと、女子生徒を睨むスマホボーイ。ツッコミは入れないぞ、といった様子だ。


 見かねた漫画ボーイがやれやれと椅子に深く座って、漫画を閉じる。


「行くぞ!!!!!」

 こいつもアホだった。

 イェーイ、とやけに上機嫌なアホとアホがハイタッチをしている。


 男女各一名ずつのアホと、ツッコミ役が一名。

 一人で捌ききれないのも、この『情報屋』サークルでは日常茶飯事だ。




*************************




 場所は変わり、木造建築の和風な部屋。

 変わっている所と言えば、部屋中を足の踏む場所もないほどに埋め尽くされた電子機器と、明るさ。

 ディスプレイから放たれる光のみで、その部屋は薄暗い。


 カタカタ、と指を動かす少女と思しき一人の人物。光の加減で髪は淡い水色に照らされている。



 ガラッと部屋の扉が開かれた。


「コラ――――――――!!! 姉ちゃんまた部屋の電気消してからに!! 目に悪いよ!!」


 勢いよく姉を怒鳴る妹らしき人物。


 パチン、と部屋の明かりを点ける。


「う……まぶしぃ。 あ、くれちゃん」

 急に明るくなった部屋に少女は目が眩む。


 部屋に籠っていた小柄で細身の少女は裸だった。


 いや、身に何も着けていない訳ではない。

 黒のニーソックスに、首元にも黒いチョーカー。作業中だったためかヘッドホンも着けている。あと水色と白色の縞柄パンツ。

 これは、着けていると言えば着けているのが、その軽い膨らみ程の乳房にワンポイント、乳首だけを隠す絆創膏。二つあるから、ツーポイントか。


「それで、くれちゃんどうかしたの?」


 くれちゃんと呼ばれた人物は、あぁそうそうと手に持っていたものを渡す。

「プリン買ってきたよー」

 部屋が明るくなったことでその人物の顔が照らされる。辻妻紅、情報屋だ。


 その言葉を聞くや否や、ペットのように飼い主の下へ急ぐ。

「プリン! あ、それで今日は服着てるんだねぇ」


 言葉から察するに、この姉妹はいわゆる裸族、なのだろう。


「あいちゃん、情報収集どんな感じ?」

 見れば見るほどそっくりな顔、きっと一卵性双生児だろう。紅は、ササっと電子機器を運び、その空いたスペースにぺたりと座る。


「むーん、手詰まりって感じかなぁ、お友達からも全然入ってこないし」

 モグモグ、とプリンを食しながら蕩けるような笑顔で話す。口に食べ物を入れながら話してはいけません。


「そっかー、じゃあ~またお出かけする?」


「えぇ~! この前家から出たばっかじゃーん!」

 ぶぅぶぅ、とプリンを食しながら不満そうに口をすぼめている。口に食べ物を入れながら話してはいけません。


 この辻妻姉妹は、街の『情報屋』である。


 妹の紅は主に、電話窓口での情報提供担当。

 姉のあいちゃん、辻妻藍は情報収集担当。




*************************




 此処は街外れのバー。あまり柄の良くない者たちがチラホラと席に座り、各々酒を飲んでいる。


 カウンター側の隅の席に大き目の丸テーブルが設置してあり、そこには三人の男がコソコソと話し合っていた。

「もう二週間か。」

「早いっすね~。ジャックさんが殺されてからもうそんなに経ったんすか」

「メンテナンスどうしよかなぁ……金ないし」


 ガシャンと機械造りの左腕を机の上に置くリーダー格と思われる髭を蓄えた男、その騒がしい音に周りの目が一瞬集まり、また目を背ける。


「チッ、どいつもこいつも……あの人がどんだけ街に貢献してきたか忘れてやがるのか!?」


「ま、まぁまぁ。ちょっと飲み過ぎなんじゃないっすか」

 傍らの派手なピアスを付けた金髪の男がリーダーの機嫌を気にする。男の両足はリーダーと同様に機械造りだ。


「うるせぇ! 酒はのんでものまれ、るら……」


――ガシャン、と音がしたのは機械の腕ではなく椅子から転げ落ちた飲んだくれのリーダーだった。


「ちょ、ちょっと! おいビズ! お前もノアさん運ぶの手伝えよ!」


「ぼ、ぼくは力仕事無理ですってば……エヴァンさん頑張ってください」


「あぁ、もう! ほらノアさん行きますよ! ビズ! これで払っとけ!」

 エヴァンと呼ばれる金髪男は、ビズと呼ぶ気弱そうな少年に財布を投げつける。


「も、モノを投げちゃ駄目ですよもう……」


 騒がしい男たちは、店から逃げるように出ていく。

 現在酔っぱらっているリーダー格の「ノア」、ピアスを付けた金髪の「エヴァン」、小柄な少年のような印象の「ビズ」


 そして彼らは「ジャック」と呼ぶ先日殺された男の部下である。



 ジャック。それは街のヒーロー「シルバーウィング」のファーストネームである。





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