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少しといえど満月の光を浴びた俺は1日学校を休んだ。
悠斗と水瀬さんには大丈夫なことをメールすると2人とも謝罪のメールが送ってきた。
お互いが自分とお互いが迷惑をかけたことを綴ったメールはやっぱり似てて、お似合いバカップルと送っておいた。
ほんの少し胸が痛むがそれでも苦笑を浮かべる俺はいろいろと吹っ切れてるのかもしれない。
登校した日、俺は莉音を連れて瀬戸を訪ねた。
もちろんお礼を言う為に。
しかしここで驚くべき事実を聞かされることになった。
「瀬戸だよな、この間は俺を家まで運んでくれてありがとう。」
「どういたしまして。
てか、ボール当てたとこ大丈夫か?」
「まぁ・・・
ていうか、瀬戸もよく莉音の横暴に従ったよな。」
「まぁ、西園寺からそれくらいしか城嶋の吸血行動止めれないって言われたし。」
「そっか・・・って、は!?」
瀬戸の発言に俺は思わず大声を出し隣の莉音を見る。
当の莉音はというと、不服そうなめんどくさそうな顔をしてため息を一つついた。
「前に吸血してるとこ見られて、それから観察対象にされたの。」
「お前!!
だからもっと気を付けろって言ってたんだろ!?
というかそういう重大なことはちゃんと言えよ!!」
俺のもっともな説教に莉音はうるさいとでも言いたげに耳をふさぐ。
「悪かったわよ。
ていうか、今回のことで瀬戸に貸し作っちゃったから千夜も覚悟しなさいよ?」
「は?」
「こいつ、スポーツマンぽく見えてるけどかなりのオカルトオタクなのよ。」
呆れ顔で瀬戸を見る莉音につられ瀬戸を見るとキラキラとした笑顔を見せている。
「本当はオカルト研究会とか入りたいんだけどこの学校ないし、仕方なく勧誘されてたバスケ部に入ったてわけ。」
「仕方なくで入ってレギュラーとか、準レギュたちに謝れ。」
莉音の暴言にもにこにこ顔で聞き入れる瀬戸は鋼の心の持ち主なのかもしれない。
「これで性別違いの吸血鬼の研究ができる!!」
嬉しそうにガッツポーズをする瀬戸の発言に莉音を見るも、莉音はあきらめ顔で肩を落とす。
今回の俺のせいで貸しを作ったと思うと俺に発言権はない。
当分莉音の当たりもきつくなるだろうが、ここは甘んじて受けよう・・・
そう思い俺は心の中でため息をついた。
いつもの放課後、俺と莉音と水瀬さん、そしてなぜか瀬戸も一緒に悠斗の部活終わりを待っている。
今日はこのあとみんなで晩飯を食べる予定だ。
「私、飲み物買ってくる。
琴葉と瀬戸は何が欲しい?」
「私レモンティー。」
「俺は炭酸だったらなんでもいい。」
わかったと言って莉音は教室を出て行った。
「やっぱり仲良しだよね、莉音と城嶋君。」
「何で急にそんなこと?」
「毎回どっちかが飲み物買に行くとき、私のリクエストは聞くのにお互いは聞かずに買ってくるでしょ?
しかも毎回一緒ってわけでもなく。」
そう言われてみれば確かに俺と莉音はわざわざリクエストを聞かない。
なんとなくこれだろうというのが俺はわかるし、莉音が買ってきたものは俺が欲しいと思うものだったりする。
「それはまぁ、幼馴染だしなんとなくわかるっていうか。」
「てか、幼馴染だとしてもお前ら本当仲良いよ。
普通高校まで一緒じゃないし、一緒だとしても付き合い薄くなるだろ?」
「それは・・・」
共通の秘密というか、吸血鬼という仲間意識があるからで・・・というのは瀬戸だけならともかく水瀬さんの前では言えない。
「西園寺、最近繁華街行かなくなったみたいだな。」
ぼそりと瀬戸が俺に言う。
確かに最近莉音はおやつを求めてない。
単に飽きたからなのかはわからないが、まぁ瀬戸にバレたという一件もあるわけだし俺としては一安心だ。
「西園寺に聞いてみれば?
なんで辞めたのか。」
おもしろそうに瀬戸がそう言うと、ちょうど莉音が戻ってきて俺らは悠斗の部活終了まで雑談を続けた。
5人で夕飯を食べ終え、他の3人とは別れて俺と莉音は家路につく。
「もうすぐ満月だね。」
「そうだな。」
「また辛い日が来るのかぁ。」
慣れてるとはいえ辛いものは辛い。
俺らはそろってため息をつく。
「そういえば、お前最近なんでおやつ辞めたんだ?」
吸血をすれば多少だが満月の夜がましになるみたいだったのに、今回はそれをする様子がない。
「んー。
千夜が前に進んだからかな?」
「は?」
「千夜はさ大切だから琴葉の血を吸わなかったでしょ?
私は、欲しい人の血を飲むことができないから他の人で代用してたってわけ。」
「欲しい人の血・・・」
莉音がそこまで血を欲する相手がいたなんて考えたこともなかった。
「でも千夜がヘタレ卒業したから、私ももうそういう自棄になった行為は辞めようと思ったってわけ。」
「ふーん・・・」
俺の水瀬さんへの想いは莉音に筒抜けだったのに、俺には莉音の想い人がわからないというのは正直おもしろくない。
「なんで血を飲めないんだ。」
「・・・・鈍感。」
「ん?」
「私たち吸血鬼が飲めない血って何か考えろ、バカ。」
そう言うと、莉音は足を速め俺の前を歩いて行った。
飲めない血・・・
同性の血は飲めない。
まさか、莉音は女が好き?
あとは・・・
吸血鬼の血は飲めない
・・・・・て、え!?
俺たちの近くに吸血鬼はいない。
まさか・・・いや、ないだろ、ないない・・・
そう思いつつも足を速めて莉音を追いかけたとき、莉音の耳がほんの少し赤く染まっているように感じたのは俺の気のせいか
それとも・・・・
中途半端な気もしなくもないですが、こんな終わり方もありかと思ってます。
最後まで読んでいただきありがとうございました。