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短いですが、きりがいいので切ります。
ごめんなさい
目を覚ましたとき最初に目にしたのは泣きながら怒った器用な顔をした莉音だった。
「ばか!!」
覚醒してない頭にいきなり暴言が入ってくる。
「バカ!!ヘタレのくせにかっこつけてんじゃないわよ!!」
そう言って俺の頬を思いっきりつねってくる。
「いっ!!
にゃんなんだょ、おまへぇは!!」
引っ張られてまともに喋れないが意味は伝わったらしく、莉音はギロリと俺を睨む。
「ばか千夜!!
自分がしたことを思い出せ!!」
上半身を起こし、莉音の手を俺の頬から外し、俺は記憶を遡る。
「…俺、なんで自分の部屋にいるんだ?」
満月の光にあてられて身体が苦しくなって、そんな中、悠斗と水瀬さんが仲直り?出来そうで安心したら後頭部に衝撃が…
そう思い後頭部に手をやると、うん、ズキズキする。
「あんたが私の制止も聞かず飛び出して行って、満月にあてられるんじゃないかと思ったから助けを呼んだの!!」
「悠斗か?」
記憶の最後に現れた悠斗の姿を思い出し聞くと莉音はそれは水瀬さんの為に呼んだのだと言う。
「じゃあ誰だよ?」
「瀬戸っていってバスケ部の奴。
あいつに千夜が苦しんでたら思いっきりボール投げて気絶させてってたのんだの!」
「お前は鬼か!!??」
あの後頭部の衝撃はボールだったのか。
というか、瀬戸とやらはよくもそんな横暴を聞き入れたな。
「気絶した千夜を家まで運んだのも瀬戸だから。
三橋君も手伝ってくれたからちゃんとお礼いいなよ。」
「ああ…」
やり方は横暴だが、あのときの俺を考えたら気絶させる以外方法はなかっただろう。
「…ありがとな。
あと、さっきは言い過ぎたごめん。」
俺たちにとっては自然な行為である吸血を節操がないとか言ったのはさすがに言い過ぎたと冷静になれば判断できる。
「…私も謝る。
自分の身体がどうなるかわかってて琴葉のとこに行った千夜見て、敵わないなぁって思った。」
「敵わない?」
「なんでもない。
私も言い過ぎた、ごめん。」
素直に謝る莉音に拍子抜けしつつも俺は莉音の髪をくしゃりと撫でてベットから出る。
「俺さ、悠斗にも水瀬さんにも自分の気持ちは隠すことにした。」
「いいの?」
「ああ、俺さっきわかったんだよ。
俺はあの2人がどっちも大切で、2人が一緒にいるのが落ち着くんだ。
どっちかかけても意味がない。
だから俺はこのままでいいんだ。」
今度こそ強がりでも無理でもない笑みが自然と溢れると、莉音は少し呆れたようにしながらも笑ってくれた。
「ヘタレは返上してあげる。」