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短いです、すみません

公園にたどり着くとベンチに座っている水瀬さんの姿を見つけた。


「水瀬さん。」


一度息を整えて声をかけると、下を向いてた水瀬さんが俺を見上げる。

もう泣いてはいなかったけど、目はうっすらと赤くなってる。


「城嶋君。」

「莉音心配してた。

莉音家行こう?」


そう言うと水瀬さんは寂しそうな笑みを見せる。


「莉音に聞いて来てくれたの?

本当、城嶋君は優しいね・・・」


嬉しいはずの言葉が嬉しいと思えないのは、きっと彼女が今考えてるのが俺ではなく悠斗のことだとわかってしまうからだ。


「悠斗となんかあった?」


聞くと水瀬さんはこくりと頷く。


「悠斗、本当に私のこと好きなのかな・・・?」

「え?」

「悠斗がさ聞いてきたの、自分より城嶋君の方が私のことわかってて一緒にいたら楽しいんじゃないかって。

私、そんなことないって言いたかったんだけど、急に言われて言葉につまっちゃって・・・

それに、確かに思ったことはあるんだよ、全然相手にしてくれない悠斗より、優しい城嶋君が彼氏だったらって・・・

そしたら悠斗がもういいよってそのまま部活行っちゃって・・・」


俺が彼氏だったらって思ってくれたことがあったのかと思うと少し嬉しい気持ちもある。

でもそう思ったところで彼女が選ぶのは俺じゃない。

優しくてそばに居れる俺より、サッカー馬鹿で彼女をちゃんとかまってあげれない悠斗を彼女は選んだんだ。


「俺はさ、小さいころから莉音がいて少女漫画とか無理やり読ませてきて、言われ続けてたんだ。」

「え?」

「女の子はちゃんと言葉が欲しい、行動が欲しいものなんだって。

想ってるって気持ちだけじゃ伝わらないんだって。」

「そうなんだ・・・」

「悠斗ってサッカー馬鹿で、プロ目指してるし今度の試合もそういうのの関係者が来る大事な試合だって言ってた。」

「うん。」

「あいつにとってプロになるのは小さい頃からの夢で目標で、それを達成するためにいろんな努力してきたって言ってた。」

「うん。」

「普通の学生みたいに遊ぶことがあんまできなくて、我慢してあきらめたこともいっぱいあったって言ってた。

でもさ・・・」


言葉を区切った俺に水瀬さんは首をかしげる。


「水瀬さんのことはあきらめなかった。」

「え?」

「プロになる為にほとんどの時間をサッカーにあててきたあいつだけど、でも水瀬さんとの時間だけはサッカーにあててないんだ。」


今までだっていいなって想う子はいたし、告白されたこともあると言ってた。

でもその彼女たちの為にサッカーの時間を減らそうとは思えなかったんだと話してたのを思い出す。

でも、水瀬さんだけはサッカーに費やす時間を減らしてでも一緒にいたいと思ったんだ。


「あいつ勘違いしてるみたいでさ、俺が水瀬さんのことが好きなんじゃないかって。」

「え?!」


驚いたように目を丸くする彼女は本当に悠斗しか目に入ってないんだなっと苦笑する。


「それで今日ちょっとあいつと言い合いみたいになってさ、それでそんなこと言ったんだと思う。

水瀬さんが悠斗の気持ちに不安になるように、悠斗も水瀬さんの気持ちに不安を覚えたんじゃないかな?」

「そうかな・・・?」

「俺はそう思うけど。」


そう言った俺はちゃんと笑えているだろうか?

でも目の前の水瀬さんはどこかほっとした顔をしているから、きっとちゃんと笑えてるんだろう。


何も解決してないのになぜか俺はスッキリした気分になっている。

でもそのとき


どくん


急に全身が軋むように痛み出し、息がうまくできなくなった。

痛みと共に体中が熱くなる。

まさかと思い空を見るとさっきまでぶ厚かった雲が薄くなり、かすかではあるが月の黄色が見える。


「っくぁ・・・」


突然苦しみ出した俺に水瀬さんが心配して立ち上がり俺に手を伸ばすが、俺はそれを避けるように一歩下がる。


「城嶋君?」


身体の苦しさが増すにつれ、彼女のカオリを濃く感じる。

ダメだ、このまま水瀬さんがいたら俺は我慢できなくなる。

せっかくわかったのに、俺がどうしたいか、悠斗と水瀬さんのことをどう思っているか。

なのにここでもし吸血してしまったらすべてが終わってしまう。

なんとか自分の吸血行動を抑えるようにその場にしゃがみ込む。

せめてもう一度雲がかかってくれたら・・・

そんな俺の願いとは裏腹に俺の身体はどんどん悪化していく。


「琴葉!!」


苦しむ中、水瀬さんを呼ぶ声が聞こえ、見ると必死な形相をした悠斗の姿。


「悠斗!!

城嶋君が突然苦しんで・・・」


パニックになっている水瀬さんを落ち着かせるように肩を抱く悠斗とそれにより少し落ち着きを取り戻す水瀬さんの姿が目に入ると、俺は心の底からほっとする。


ああ、俺はこの2人が・・・・


そう思った瞬間、後頭部に衝撃が走り、俺の意識は途切れた。


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