表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Halloween game  作者: 天音
13/13

第十三話 ギリシャ神話

「なんで……」


学校を激震させるほどの攻撃を受けたにも関わらず、何事もなかったかのように平然と立っている杏。

その手には、見るからに不気味な盾が握られている……


「おいおい……今のくらって死ななかったのかよ……」

透生は驚愕のあまり口が開きっぱなしの状態になっていた。


「みたいだな……」

俺も透生と同じように驚きを隠せなかった。


正直、俺は自分の心がわからない……

生きていたことに対し、喜びを感じるべきなのか……

それとも、村雨 杏が武器を持っていたことに焦るべきなのか……


いや、両方感じるべきなのかもしれない……

それどころか現在の状況を打開する策を講じなくてはいけないのではないだろか……


「杏ちゃんその盾って……」

杏の生存に驚き安心した桜は、涙を止め、不安気に口を開いた。


杏は桜の言葉にピクリと反応した。

「あら?桜さんはこの盾を知ってるのかしら?」


「知ってるよ…だってその盾はギリシャ神話の……」


桜が言いかけたそのとき‼


「うわっ‼ なんだこれ剣のコントロールが効かねぇ!」

桜の言葉を遮ったのは透生だった……


見ると透生の剣が再び輝きを放ち、攻撃態勢へと移っていた。


——マズい……

剣が暴走してやがる……


「透生!早く剣を鞘に戻せ!」


「お、おう!」

俺の指示を受け、透生は急いで剣を鞘に納めようとした。


しかし、

「あれ……入んねぇぞ……剣の大きさに鞘があってねぇよ……」


「・・・・透生、今そんな馬鹿な冗談に付き合ってる余裕ねぇよ!早く入れろ!」


「いや……結構マジなんだわ……」

剣をカツカツと鞘の縁にぶつける音だけが廊下に響く。


・・・・。


「マジ……」


そうこうしている間にも剣から放たれる光はだんだんと強さを増していく。


「ちょ、こうなったら、もう一回くらえ村雨‼」

そう言って透生は剣を村雨に振り下ろした。


「馬鹿!辞めろ!」


しかし、

俺の静止を求める声は透生には届かなかった……


剣から放たれた刃は分裂を繰り返しまっすぐと杏に向かって飛んで行く。


しかし、

杏は微動だにもせず、左手に持つ盾を前へと突き出した。


透生の放った刃に対し、余裕の笑みを浮かべながら杏は言った。

「こんな攻撃で私を殺せると思ってるのかしら?」


複数の風の刃は、杏の持つ盾にぶつかり、ドーンという爆音を轟かせた。

と、先ほどと同様に猛烈な突風が吹き乱れ、視界を遮る砂煙を払う。


突風の中心……そこにはやはり杏がいた。


「凄すぎる……」


俺は思った。

このゲーム武器を持たない者はいつ死んでもおかしくない……

次元が違いすぎる……

俺が一体すら倒せなかったゾンビ達を一掃した剣……その驚異的な攻撃を受けてなお無傷の盾……


勝てない……


ゲームでいう財力の違いで圧倒されていく、くそゲーのパターンだ……


俺は結局のところ透生に助けてもらってるだけ……


自分では何もできない……


……無力だ。



「——ん?」

ふと杏の方を見ると何かを呟いている……

——何だろう?

耳を澄ませると聞こえてきた。


「剣……派手な装飾……願いを叶える力……」

少し俯きながら杏は呪文のように透生の剣について解析していた。

そして……


「……なるほどね。北欧神話に出てくる武器がモチーフなのね。

『願いを叶えてくれる剣』、素晴らしいわ~」

杏は天を仰ぐようにそう言った。


「このゲームとても面白いわ。

ただ食べて、ただ寝て、食べるために働いて、働くために勉強して、それで? 普通の人生なんて何の面白みもないわ~ それに比べてこのゲームはどう? 武器は神器モチーフで無双。雑魚は殺し放題。『勉強しろ』なんて言う親も存在しない。

まさに天国じゃない!

でもね……

私の愛する空間をそんな欠点だらけの武器で終わりにさせられたらとても不愉快なの……

だから有平君……私の永遠の時のために、ここで消えて!」

杏は気の狂ったような笑みを浮かべながらそう言うと、左手に持つ盾を透生に向かって突き出した。


すると‼


杏が持つ盾の表面に不気味な顔の文様が浮かび上がった。


「さよなら、あ・り・ひ・ら・君」

杏の言葉を合図に盾の文様が周囲から黒い光を蓄え、透生目掛けてレーザーのように解き放った。


「うわっ⁉何なんだこの光は……」

透生は盾から放たれる光に眩んだのか、両の手で目を押さえた。


「——なっ⁉」

俺は目の前の光景を疑った……


なんと、透生の足が石化し始めたのだ。

「なんだ……足が動かねぇぞ……」

必死に足を動かそうとする透生だったが、足、腰、胸、と徐々に石化が進んでいく。


「くそっ……ここまでかよ……」

その言葉を最後に透生の腕、顔と残りの部位も動かなくなった。


——ゴ―ゴンの呪いだと……

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ