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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

AiとXの解

作者: h.i.

お試し投稿作品です。

X=解とした数式の答えを求めた時に、Xと解は同類となるのは当然だ。

解を求める為にXを求める。

突き止めたXは解となる。

では、解からXを求める場合はどうなるだろう?

当然、X=解でない場合、Xは違った形を見せる。

それだけXとは不確かな、又、多様性のある存在だ。

問題はX自体が間違いの場合、解どころか数式の全てが曖昧になる。

そこで私は問いたい。

世界の全てがXになるのならば、世界は果たしてどうなるのかと?



Aiーアイーと呼ばれる一見、小学生の少女に見える彼女は今年で16才になる。

正直に言えば、産まれた正確な日時は記憶に無いので大凡の年齢という事になるが、容姿が小学生な以上、私という個人を証明するものが無いため年齢というものはあまり関係は無い。

ある実験によって生み出されたAiは体内に超小型の微粒機械、通称ナノマシンが数億単位で自動活動し、身体機能の不具合などを常時チェックして脳に信号を送っている。

これの副作用による頭痛が、最近の悩みの種だ。


うぅ、ファキンシット…。


幸いにも実験によって生じていた不快感も、とある人物によって実験中止、というか研究施設の壊滅によって永久凍結されている為、私が縛られる事や、私にとってのファキン現象は特にない。

幸福用語で言うならば自由、不幸用語で言うならば不必要な存在だ。

モルモットとして存在していた私は何の為に生きていかなければならないのか?

この解はそもそも、生物の永遠の謎だとある学者が言っていた。

存在理由を問われれば、解は不明だと。

強いて言うならば、同種族の維持と繁殖と言えるが、これは自然全体の循環に必要だからであって個々の存在理由はやはり不明だと言う。

あるいはない事が正しい解なのかも知れない。

人という種が本能に、遺伝子に思考という、雑念を混ぜ込んだ所為で、本来ならば循環としての活動のみを行っていた一種が人として変化した事で、私が存在理由などというものを求めなければ生きていけない環境を、社会を形成しているのではないだろうか?

実のところ、勝手な変化を遂げた人の勝手な都合で作られた私の様な存在にとっての存在理由は人という種を余す事なく駆除する事なのではないだろうか?


うぅ、ファック、ファキンシット!


思考は頭痛を悪化させる。

いつも持ち歩いているお気に入りの頭痛薬を記載されている服薬数の数倍にあたる錠剤を口に流し込み、噛み砕いた。

思考がクリアになり、症状が落ち着いていく。

体内にのナノマシンが全身を巡り、錠剤に含まれている睡眠効果のある成分を駆除していく。

ある程度のこちらからの操作が可能なのだ。

さて、考えるのは止めよう。

解は出ない事を私は知っている。

XはXでしかないのだから。

ならば一先ずは置いておく事にする。

解けない問にいくらXを求めても、解けないという解しか得ないと言うならば、それは時間の無駄である。

丁度いい空腹感を感じてきた所だったので、食料を探す、もとい漁ってみたが何も無かった為、外で何か食べるとしよう。

いつもの薄いピンク色のウサ耳フードを被り事務所を後にした。


あー、ふぁっく、べりーふぁっきん。

あのクソ保護者め、食えるもの位常備しとけ…。


この幼児体型の所為で色々と面倒な事にならないといいのだが、余り外には出歩きたくないものだ。

街中の通りを数分歩いた所で屋台を見つけた。

簡易バーガーショップといった所だろうか。


いい仕事してる。


案外早く昼食に有り付けると気分が高揚した。

店の近くのコルクボードには、お勧め!チリポークバーガーと書かれている。

辛い物は苦手だ。

無難にチキンバーガーにしておこう。


ん、嬢ちゃん、注文かい?


店主らしき男性が気付いたらしく声をかけてきた。

チキンバーガー、と呟く様に伝え紙幣を差し出す。


あいよ、チキンバーガー1つ、落とさない様に気をつけてな。


どうも。


珍しく笑顔を見せたが、恐らくはフードに隠れて店主らしき男性には見えなかっただろう。

紙で包まれたチキンバーガーを優しく取り出し口に咥える。

Aiの口が小さいためか、バーガーを食べる様も上品に見える。

バーガーの面積とAiの口の大きさを見れば当然なのだが、クリームソースが口の周りにベッタリとついてしまっている。

こういった場面だけを切り取れば容姿は年相応に見えるだろう。

ふわふわのパンの感触の後の、香ばしいチキンとシャキシャキした野菜をまとめる様な酸味のあるソースを味わいながら昼食を楽しんだ。


ふぁきん美味でした。


包み紙で乱暴に口周りのソースわ拭いた後、丁寧に畳んでゴミ箱に投げ入れた。

さて、昼食も済んだことだし事務所に帰って昼寝でもしようと腰を上げた時だった。


ーーッ、ファキンシット!


懐かしい様な、それでいて忌まわしい感覚に襲われた。

体内のナノマシンが脳に伝えて来るこの信号を何度感じ取ったことだろう。

昼食で得たふぁきんはっぴーな気持ちが台無しだ。

クローン実験の被害者、というかモルモットは私だけじゃなかった。

その殆どは既にこの世にはいないし、大概は害でもないのだが、この信号はそれに含まれないものだ。

失敗と言っていい成功例の存在は体内のナノマシンを操作し、アクションを起こすことがてきる。

Aiは成功例の1つに含まれている存在であり、それらは体内のナノマシンで互いに同調する。

自分と同じ成功例が近くに居ると自動的に伝わるのだ。

ご同類が近くにいる。

視線を感じた先を見て、気持ちは更に憂鬱になった。

髪の色こそ銀髪ではあったが、そこにいた少女はAiに瓜二つと言っていいほど容姿が同じだった。


はぁ、ファック、ベリーファック!


ため息混じりに呟き全速力で裏路地へと走った。

食事の後にすぐ体を動かすのは好きじゃない。

ファキンキル!

この不快な思いは償ってもらうとしよう。


どこに行くの?おねぇちゃん?


ナノマシンによる細胞の活性化が身体機能を飛躍させる。

辛うじて成功とされたAiとはスペックの差が違う。

ほんの数分で追いつかれてしまった。


ファキンユー、名前とかあるの?


まぁ、お姉さまったら口が悪い。


驚いた表情を見せる白髪の少女は自分にそっくりの為、驚いた時の私はこんな表情をしているのかと考えてしまった。

そういった感情に不愉快さを感じつつ相手の情報を探る。


目的は何?


目的?んー、お姉ちゃんの保護かなぁ?


ファック、お断りよ。ゴートゥヘル。


まぁまぁ、天国があったとしても私たちは地獄行きだよ。


どちらが先に行くのかの話をしてるの、ファッキンユー。


どうせなら一緒に行こうよー。


話が進まない。

現時点で解っていることは戦闘的な性能は向こうの方が上という事だけ。

逃げる事も許されない以上、不意をついて相手をキルするしかない。

周囲の視野情報伝達速度を最大に、身体機能の活性化をナノマシンに指示する。

ほとんど直立姿勢のまま相手の背後へ回り込む。

回り込む際にスカートの中に常に複数隠している銃系統の火器を武装する。

右手にマシンピストル、左手にマグナムを構え、白髪の少女の背中へ向けトリガーを引く。

瞬間、周囲に轟音が響き、閃光と火薬の匂いが立ち込める。

Aiの視線は地面ではなく、空中へと移動する。

強制的に瞳孔が動く。

白髪の少女はトリガーを引いた直後に中へ舞った。

マグナムの反動を利用し体勢を整えつつ、無数の銃弾を打ち出す。

白髪の少女は二本のナイフを巧みに操り、空中で銃弾を切断し、弾き落とし、軌道をそらす。

お互いがほとんどの動作を半自動的に行っていた。

この程度ならば見る必要がない。

伝達速度を上げた状態のそれは、一瞬とはいえ未来視に近いものに類似する。

互いに行動が読めている。

白髪の少女は銃弾を交わしつつ複数のナイフを取り出し、Aiへと放つ。


ファック!


彼女から放たれたナイフは銃弾よりも早く、フードに傷を作っていく。


遅いよ、お姉ちゃん。


地面に降りた白髪の少女は左右の腰に差していた二本の刀を引き抜く。

瞬間的に斬撃が額をかすめる、直後に両腕の火器が切断により停止する。

一気に距離を縮められ、火器が使えないが、先ほど投げていたスタングレネードが降下する。


しってたよ、お姉ちゃん。


刀で弾かれたスタングレネードは遥か後方で発光する。


ファキングッド!


Aiが不敵に笑う。

白髪の少女は知らないであろうそれに対してAiは笑みを隠せずにいられなかった。

ナノマシンの所為で感情の高ぶりを制御しきれなかったところもあったかもしれない。

バックステップ直後Aiの姿が消える。

大きなスカートで隠していたマンホールの中へ飛び降りたのだ。

直後に爆発。

スカートで隠していたのはマンホールだけではなく、Aiが先ほどまで立っていた場所には複数のグレネードが転がっていたのだ。

爆発によりマンホールの穴も塞がれ、水路から光が消える。

暗闇の中、Aiの足音だけが響いていた。



数十分間水路歩いたAiはナノマシンによる身体の負荷と水路の悪臭により頭痛を発症。

端的に言うと不機嫌になっていた。


うぁあ、ファック、ファッキン、ファッキンヘル!


頭痛薬は先ほどカラにしてしまい、倦怠感と頭痛が増す一方だ。

とりあえず地上に出なければ話しにならない。

恐らくあの白髪ファッキンビッチも死んではいないはずだ。

追いつかれる前に態勢を立て直しておきたい。


ファッキンタイアー…。


疲れた、少し休もう。

悪臭を放つ汚染水に浸かりたくはなかったが、それ以上の疲労を感じていた。

下着を履いていない為、陰部に直接汚物を押し付けられているかのような不快感に頭痛が増してくる。

こんな気分の時はあの時を思い出す。

疲れ切った体を無理矢理奮い立たせ、生きているのか、死んでいるのか解らなくなるまで戦い続けていた。

そしてこの不快な気分が消え去る様な光と共に差し出された、私より少し大きな手の事を。

次の瞬間、轟音共に光が射した。


ファッキンシット。


光と共に現れたのは思い出していた暖かい手ではなく、白髪の少女だった。


探したよー、お姉ちゃん。

あの爆発の所為でせっかく新調した服に焦げ跡が付いちゃった。


よく無事だったわね。

ファッキンビッチ、地獄にも追い出されたの?


お姉ちゃんが笑わなければ死んでたかもねー。

でも、まだ死ぬわけにはいかないよー。

お姉ちゃんに伝えてない事が沢山あるからね。

ちょっと長くなるけど、そこでそのまま聞いててね?


ファック、そんなに笑顔で言われたらますます言う事を聞きたくない…わ…。


じゃあ、しょうがないよね。


そう言って放たれた複数の鋭利なナイフはAiの四肢を貫き、身動きが出来なくなる。


凄いね、お姉ちゃん。

痛くないの?声を出さないなんて…。

まぁ、いいや、じゃあそのまま聞いててね。

あ、寝ちゃダメだからね。

お姉ちゃんはクローン実験で生まれた最初の成功例だよね?

じゃあ、私は何番目か解る?


ファック、興味もない。


お姉ちゃんが検体ナンバー0、私は本来なら1になるはずなんだけど、私の存在は実験に含まれていないんだ。

強いて言えば、X、かな?

オリジナルの七崎 空依×クローン実験、その他諸々=Ai10の二乗。

これが実験の結果だよね。

ここには0という存在のお姉ちゃんも含まれてる。

だけど本当は+Xという私もいたんだよ。

お姉ちゃんが知っているか知らないけど、お姉ちゃんには母体がいたんだよ。

まぁ、母体はいろんな機器や薬品とかで、お姉ちゃんを産んだ後直ぐに亡くなったんだけどね。

そこで科学者は母体を使ってクローン実験をするより、初めから生命維持装置を使ってクローンを作った方が効率と成功率が高い事を知った訳だよ。

お姉ちゃんという結果を、解を得てね。

でもお姉ちゃんを産んだ母体には実はもう一人のクローンが居たんだよ。

それが私、AiX、そうだねー、エアックスとでも呼ぶのが適切かな?

個人的にはイクスって呼んでほしいけどね。

私とお姉ちゃんは双子のクローンなんだよ。

お姉ちゃんは直ぐにナノマシンを体に投入されたけど、私にはナノマシンが投入されていないんたよ。

奇跡みたいだけど母体で放置された私は母体に残された栄養を吸収し生き延びた。


ファック、不可能。

1ミジンコが1人で大きくなる筈がないわ。


だから、奇跡なんだよ。

お姉ちゃん。

お姉ちゃんのナノマシンが反応したのは私が双子の妹だからだし、私がナノマシンを使わなくても身体機能が高いのは、オリジナルの血と体にうまく馴染んでいるからなんだよ。

本来、ナノマシンは必要ないんだよ、この血と体には。

まぁ、あればあったで超能力は使えるんだけどね。

そして、私はずっと生まれた意味を探してた。

きっとそれはお姉ちゃんもでしょ?

X=解を探していたんだよね?

私がX、私が解だよ、お姉ちゃん。

答えは私があげる。


私の副産物が解な訳がないわ。

XはXでしかないのよ、ファッキンシスター。


素直じゃないね。

まぁ、いいや、今日はここまでにする。

またね、お姉ちゃん。


もう、2度と会いたくないわ。

ファッキンヘル。


いつか一緒に世界を壊そうね。

その言葉を残し、白髪の少女、AiXと名乗る彼女は立ち去った。



数日後ーー


なあ、いい加減、機嫌直してくれないか?


聞きなれた暖かい声がAiの耳をくすぐる。

自分のクソ保護者にあたる人物のものだ。


…知らない。


フードを深く被り、顔を反らす。

白髪の少女との戦いの果て、傷だらけで帰ったAiに対して何もできなかったのは保護者としてどうなのか、と拗ねてみたのだ。

名は体を表すと言うけれど、私の場合は体が身を表しているようだ。

自分でもわかるほど子供染みてきているような気がする。

しかし、悪くない気分だ。

困った表情を見ているのも、ここの空気や雰囲気も悪くない。


いつしか頭痛も減った気がする。


いつかは彼女や、彼女たちとの決着は着けなければならないだろう。

だけど、それについての心配というか、不安というのか、そういった感情はなかった。


さて、そろそろクソ保護者を許してやるか。


ふぁっきんますたー、ごーとぅへる。


普段は見せない可愛らしくも淫靡な笑顔でそう言った。


お付き合いありがとうございます。

ぶっちゃけ投稿する必要の無い小説でしたので、最後まで読んでくれた方はありがとうございます。

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