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5話

団体から離れて20分、考えていなかったわけでもないが思わぬアクシデントに見舞われた。

異形の者との遭遇。

モンスターとの遭遇である。

もちろん、ここがWOFの中かも知れないのだから居るかもと思っていたが、本当に遭遇するとは思っても居なかったのだ。


モンスターは2体。

銀色と白のコントラストの毛並みを持ち、しなやかな身体と獰猛な牙と爪を持つ狼。WOFならば名前は【ガルアウルフ】。


「マジかよ!?モンスター出んのかよ!?」


動揺するキングを片目に警戒する。

ガルアウルフはこちらを威嚇しながら少しずつ距離を詰めてくる。

まずい。このままでは戦闘になる。

こちらの人数は4人、あちらが2体。数では倍の戦力であるが決定的にこちらが不利な状況。

それはもちろん…………


「どうやって闘うんだよ!?」


そう、先頭方法がまだわかっていなかったのだ。

メニューなどの見方が分かり、やっと地図を開けるようになった僕たちにとって戦闘は、少々レベルが高い要求である。


「WOFの時はぁ~ターン制でしたよねぇ~」


「てことは、今は俺達のターンてことか!?」


「キングぅ~いっちゃってくださいぃ~♪」


「マジかよ!?……たく、仕方ねぇ…いっちょやるか!!オラァァァァァァ!!!」


高々に上げた拳をガルアウルフへと打ち出す。

中世風の鎧がガチャガチャと音をたてながら重い一撃をガルアウルフの眉間におちる。


「ガルッーー」


短い唸りと共にガルアウルフの姿が消える。


「へっ?」


気の抜けた声とともに盛大に空を切る拳。

空を切って、当たるはずの威力は勢いになり、その勢いをたたらを踏みながらころす。

そして、消えたガルアウルフはいつの間にかキングの頭上に居り、鋭い爪でキングを襲う。


「がはぁっ!!」


遅れながらも反応したキングは背中に掠るのみに押さえる。


「うおぉぉぉ!!あぶねぇ!!もう少しで殺られるところだったぞ!」


「うーん~、ターン制じゃないみたいですねぇ~」


「呑気にしてんじゃねぇー!!!」


走りながらこちらに合流してくるキング。


WOFでの戦闘ではターン制であった。

交互に攻撃し、攻撃に対し回避率、防御力などが計算に入りダメージとなる。

しかし今のキングの行動ではどうだろ?

キングの攻撃力、命中率の計算とガイアウルフの防御力、回避率の計算でガイアウルフが勝利したと言うのだろうか?

深く考えに浸る。

生死がかかったことだ、少しのミスが惨事につながる。

考える。考える。考える。ーーー


……ッ!!


一瞬の閃きで、大変なミスに気付く。


「そうだ……僕たちまだ…………」


掠れた声が口からこぼれる。

キングやイリスはその声に気付かずに口喧嘩をしている。

ガルアウルフは唸りながら距離を縮める。

そして僕の口から決定的なミスがこぼれ落ちた。


「お互いの能力を全く知らないっ……!!」




決定的なミスに気付いてから10分、僕たちは林の中に身を潜めていた。

気付いてすぐに僕は皆に逃亡を提案した。説得は必要なかった。皆、戦闘方法やルールのようなものが全くわからない今、下手に戦闘するのは危険だと分かっており、僕の提案は可決された。

そこからはひたすら逃亡だ。

僕たちはガルアウルフの追跡を逃れる為、ひたすら走りながら身を隠す場所を探し、この林へと隠れたのだ。


「しっかし、モンスターかぁ。厄介だな……」


「もぉ~、キングだらしないですよぉ~。かっこよく殴りに行って空振りとかぁ~」


「うっせぇ!!武器が無い上に拳の戦闘は慣れてねぇーんだよ!!」


「慣れてないてぇ~、WOFは基本タッチしかしないじゃないですかぁ~ぷぷっ! 」


「揚げ足取るな!!笑うな!!大体、俺の職業は戦闘は向かねぇーんだよ!!!」


「それだよ、キング!!」


口喧嘩をしていたキングとイリスに口を挟む。


「ん?何だよチェン、それだって?」


「さっき言ったでしょ?職業は戦闘に向かないって」


「あぁ、いったなぁ。だが、それがどうした?」


「僕はまだ皆の職業を知らないんだ。戦闘まで頭が回らなくて、考えて無かったんだけど。でも今回の戦闘と今のキングの言葉で分かったんだ。もしまた戦闘が起こったら、何も知らないでまたキングが危ない目に合う。だから皆の職業を聞いて前衛が得意なのか、後衛が得意なのかをハッキリさせよう!」


僕の言葉に、ゆっくりと頷くキング。


もとよりMMORPGでの戦闘と言えば前衛、後衛は重要事項の一つだ。

前衛は敵からの攻撃を受け、パーティーを護るための盾であり、敵との近接戦闘を行う剣である。

後衛は味方を援護し、パーティーの命を繋ぐ命綱であり、敵を後方から攻撃する遠距離攻撃を行う弓矢である。


そしてその前衛、後衛を決める目安となるのがジョブ・職業である。

WOFでは職業は多彩で、その数は100を越える。

またWOFにはサブジョブ・準職業があり、ジョブをサポートするサブジョブも多彩である。

このジョブで大体の分けが決まる。


「とりあえず、もう一度自己紹介を初めからやり直そうと思う。」


「そうだな。賛成だ、んじゃまぁー、俺から始めさせて貰うがいいか?」


皆の顔を見ていくキングに各々頷く。


「よしゃっ!んじゃ行くぜ!!俺のジョブは《守り(ディフェンダー)》だ。主に前衛での盾としてやってる。守り人は他の盾職業と違い、防御のみ特化の職業だ。基本攻撃力はあまり無い。魔法も少々覚えてるがほぼ挑発系のヘイト上昇魔法だ。」


「なるほど……つまり戦闘では前衛で攻撃の人とタッグでやってるってこと?」


「あぁ、そうだな。もしくは、後衛で攻撃のヤツとタッグでやってるな!」


「うん、わかった。ちなみにサブは?」


「ん、実はサブは放置気味であんまり取って無くて、《料理人(シェフ)》なんだよ。」


「料理人って……守り人のサポートに全く関係ない無いね……」



WOFでは、サブジョブの取得方法には主に二つの方法がある。

一つが、NPCからのクエストでの報酬。

もう一つが、特殊なドロップアイテムでの取得。

基本はNPCからの報酬での取得であり、フィールド内のNPCからクエストを受け、クリアすることで手に入れる。

このクエストは様々あり、クエストを出しているNPCも各地にいる。

中には不定期に出現する者までおり、未だに全てのサブジョブが発見されていない。

そして、もう一つのドロップアイテムでの取得は、ダンジョン内もしくはフィールドに出現するモンスターを撃破することにより手に入れる方法。

ただドロップ確率が極めて低く、どのモンスターのドロップアイテムかも知られておらず、あまりこちらの方法でサブジョブを取得する者はいない。


ちなみに、ジョブの取得も主に二つの方法である。 

一つは、条件のクリアによるジョブチェンジでの取得。

一つは、特殊なドロップアイテムでの取得。

基本は、条件のクリアによるジョブチェンジであり、この条件とは主に特定のジョブを一定のレベルまで育てることでる。

もう一つの取得方法は、サブジョブと同じであり、モンスターとの戦闘にて撃破することで手に入るドロップアイテムでの方法である。


「ジョブが守り人で、サブジョブが料理人。よし、了解。じゃあ、次は誰にする?」

「はーいぃ~、チェンくん指名しまぁーすぅ~」


手を上げ僕を指名するイリス。

一度、頭の中で自分の情報を整理し、イリスの方へ向き頷く。


「うん、了解。えっと、僕のジョブは《召喚魔術騎士(サモンナイト)》。前衛も後衛も出来る中距離系で、特徴としては、召喚魔法で召喚した精霊と共に前衛でアタッカーになれる事かな。ただ、《魔術師(マジシャン) 》より攻撃力、防御力、HPが高い分、MPが低く補助魔法魔法の種類が乏しいんだ。サブジョブは《道具製作者(マジックアイテムメーカー)》。生産系のジョブで素材からマジックアイテムの生成が可能な職業なんだ。」


「うーん。サモンナイト……聞いたことねぇーな。」


「あぁ、ジョブチェンジが面倒だからね。あんまりやる人居ないと思うし……」


「どんな条件なんだ?」


「まず、《魔法使(メイジ)い》から《魔術師(マジシャン)》にジョブチェンジ、《魔術師(マジシャン)》から《召喚魔術師(サモナー)》にジョブチェンジ。レベルを50にしたら一旦ジョブを捨てて、《戦士(ファイター)》にジョブチェンジ、《戦士(ファイター)》から《騎士(ナイト)》にジョブチェンジ。レベルを50にすると《召喚魔術騎士(サモンナイトにジョブチェンジ。こんな感じかなぁ」


「ややこしい上に本当に面倒な条件だなぁ……」


「でしょ。後衛育てて、前衛育ててやっと出来るジョブチェンジなんだよ」


「よくもまぁ育てたもんだよ」


呆れた顔でため息を吐きながら、僕の肩へと手を置くキング。

僕はそれを苦笑でかえす。


「僕の自己紹介も終わったし、次は誰にする?」


「紅夜叉ぁ~、レッツゴォ~!!」


「…………ジョブ……《暗殺者(アサシン)》…………前衛……サブ……《隠蔽者(ハーミット)》……」


必要最低限にもいっていない単語をポツリポツリと呟く紅夜叉。

視線は一瞬こちらに向けたが、今では林の木々の隙間から見える空を見ていた。


「ジョブは聞いていましたけど、サブは《隠蔽者(ハーミット)》ですか……」


「なぁ、チェン。《隠蔽者(ハーミット)》ってのは何なんだ?」


「《隠蔽者(ハーミット)》とは、文字のごとく隠蔽を得意とする者です。主に気配や痕跡と言ったものを隠蔽する職業です。戦闘などで気配を消すことで敵から感知されにくくなったり、情報収集などで痕跡を消すことで、情報の撹乱や潜入などに役立つ職業です。《暗殺者(アサシン)》ではベストサポート職業だね」


「へぇー、そんなもんまであんのかよ。」


「結構有名な職業だと思うんだけど……」


追加で説明すると《暗殺者(アサシン)》の戦闘での特徴は、戦闘、隠密特化と言うところだろ。

物理的な攻撃力、防御力、回避率等が高い分、魔法系統での攻撃力、防御力がすこぶる低い。

MPは前衛系の中でも低く、使える魔法は基本が戦闘では使えない日常魔法のみだ。

帰還魔法や探索魔法、移動魔法等である。


「んじゃ、最後はお前だなイリス!」


「う~……。えっとぉ~、私のジョブはぁ~後衛系のサポートですぅ~」


「おいおい、大雑把すぎだろ!?もっと詳しく説明しろや!」


「まぁまぁ~細かいことはいいじゃないですかぁ~。器がちっちゃいよぉ~キングゥ~」


へらへらとおどけるイリスに違和感を感じる。

どうやらキングも同じようで、疑わしい目をイリスに向けている。一瞬キングと目を合わせアイコンタクトを取り、お互いの気持ちが同じである事を確認する。


(何か隠している!)


即座に行動したのはキングだった。

イリスに向け、手を差し出す。


「ん~?どうしたのぉ~キングゥ~?」


「見りゃわかんだろ。握手だよ、握手!」


「なんでぇ~?」


「えっと……」


困った顔を向けるキングに援護射撃を撃つ。


「自己紹介したんだから握手だよ!ほら、キングってサラリーマンだから営業何かだと握手するから」


「そうそう!!俺のサラリーマンだからよ、握手は大事なわけ!!」


「ん~、そっかぁ~。それじゃあ握手握手ぅ~♪」


キングの手を握り、ブンブンと振るイリスだがすぐにその手は硬直する。


「へっ?フレンド登録ぅ~?」


「よし、今だキング!!」


「あいよ!!待ってなぁ!!!」


握っていた手を離し、目の前をタッチしたりスライドさせたりするキング。

僕とキングが狙ったのはフレンド登録だ。

フレンド登録とは、相手と意気投合などをした際にオススメされている機能だ。

機能としては、フレンド登録した者の現在地、状況、そしてステータス(・・・・・)を知ることができるのだ。

これを使うことで、イリスのステータスを見る事が僕とキングの狙いだ。

ステータスとはキャラクター情報であり、もちろんそこには職業・ジョブも記載されている。

これによりキングは今、イリスの職業を見ることができるのだ。


硬直していたイリスもやっと意味を理解したようで、あわててキングを押さえ込もうと飛び込む。

しかしキングは、半透明の液晶をいじりながらピョイっと交わし、イリスの職業を確認した。


「はぁ?」


「どうしたの?」


「いや、これって職業なのか?」


呆然とするキングに詰め寄って詳しく話を聞く。


「ジョブにはなんてあったの?」


「えっと……トーチャー」


「トーチャー……確か意味は……」


聞き慣れないジョブにとりあえず和訳する。

イリスは諦めたのか、四つん這いになりながらorz 状態。

得意でない英語を必死で思いだし言葉にする。


「トーチャー……意味は……拷問者(・・・)?」

次回の更新は22日予定です。


更\(*´∀`)/\(*´∀`)/\(*´∀`)/\(*´∀`)/\(*´∀`)/新

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