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4話

最悪の中イリスが大きな発見をした。


「あぁ~、なんか地図出たみたいぃ~」


「えっ!どうやったの?」


「メモリー表示設定ってのぉ~押したら出ましたよぉ~」


メモリー表示設定、その他で唯一押せる項目だったものだ。

僕はすぐにメニューを開くと、その他をタッチしメモリー表示設定を選択した。

出てきたのは、ONとOFFの二つ。

OFFが暗くなっているため、今はOFF状態なんだろう。

ならばタッチするのはONしかない。

点滅しているONをタッチすると、視界がいきなり鮮やかになる。

左上には緑と紫のバーが、右上には拡大された地図が、右下には縮小したメニューが現れたのだ。

まさに、ゲーム画面そのままに。


「これってよ……」


「うん」


まさにWOFの画面に面食らう僕とキングを余所に、手慣れた感じに虚空の場所をスライドさせるイリス。


「なるほどねぇ~。どうやらこっちにぃ~、小さな村があるみたいよぉ~」


「本当に!?」


慌てて僕も確認すると確かにイリスの指差す方には小さな村があるのわかった。


「メーリン村……。聞いたこと無い村だけどキング知ってる?」


「ん~。いや、聞いたことねぇーな」


「私もぉ~、しりませぇ~ん~」


メーリン村……これもWOF中に出てくる村なのだろうか?

WOFには街や村などがいくつも存在する。その全てを把握するのは困難だ。

大体の人は、主な街などしか記憶していない。もちろん、僕もその大体に含まれる。

はがゆい気持ちで爪を噛むとイリスの隣でぼぉーとしていた紅夜叉がポツリと呟く。


「…………メーリン村……コールド地方…………端の村…………」


「えっ!?」


「あ~、紅夜叉さすがぁ~♪地理には詳しいぃ~」


「紅夜叉さん!!コールド地方の端の村って本当ですか!!」


僕の問いかけにコクりとうなずく紅夜叉。


「紅夜叉はぁ~、こう見えても職業がアサシンだからぁ~、地理には詳しいから確かだよぉ~♪」


「アサシン…………」


アサシン・暗殺者。

WOFでは、その名のとおり暗殺を得意とする職業だ。

主に、モンスターの戦闘では高い隠蔽スキルで気づかれずに攻撃ができ、先制攻撃や追撃を得意とする。

それ以外にも、調査活動においても高いスキルを駆使して活躍することができる。


紅夜叉さんがアサシンだとすれば、情報は確かかもしれない。

コールド地方の端の村、WOFにある地方の中で一番小さな地方の端。

WOFでは主に3つの地方に別れている。

アルスフィア地方、カルドナイ地方、コールド地方。

各地方は、孤立しており移動の際は船や移動魔法などを利用する。

メインはアルスフィア地方であり、主要都市等も多く点在する地方だ。

ニューゲームの際は必ずここのいずれかの主要都市から開始される。

次にカルドナイ地方、多くのダンジョン等が点在し、多彩なクエストのある地方だ。


そして今僕達が居ると思われるコールド地方は、多くの資源が点在し主に採集を目的にしたクエストが多い地方だ。

もし仮にここがコールド地方であるのなら幸いなのかも知れない。

コールド地方のサイズは日本の関東地方ぐらいのサイズだ。このサイズであれば問題なく、主要都市のあるアルスフィア地方へと向かう船がでる町へと行ける。

主要都市ならば情報量はそれなりに期待が持てる。

もしも現在地がコールド地方ではなく、カルドナイ地方の端であったならばその道のりには問題があっただろう。

カルドナイ地方のサイズは日本で言う中部、近畿、四国、中国、九州地方合わせたほどもある。この地方は主にダンジョンなどで居住区が全くといって無く、何も持たない彼らがこんなところに投げ出されれば死刑宣言もいいとこだった。

最高なのがアルスフィア地方であるが、最悪なカルドナイ地方でなく、コールド地方で良くも悪くもない。

ちなみに、アルスフィア地方のサイズは北海道、東北地方を合わせたほどだ。


「取り合えず、紅夜叉さんの言うことどうりならここはコールド地方となりますがどうしますか?」


「んー。やっぱりここはアルスフィア地方の主要都市に向かったほうがいいんじゃねぇーか?」


「そーだねぇ~。主要都市なら情報たくさんあるだろうしぃ~。それに無くてもぉ~基本アルスフィア地方は人の集まり的にも多いしねぇ~。」


「ならこのままアルスフィア地方を目的にとりあえずメーリン村に向かうでいいでしょうか?」


「オーケーだ」


「いいよぉ~」


全員の意志が固まり目的が決定する。

もちろん最優先は情報収集であるが、人間大まかすぎる目的では余計に何をすればいいのか分からなくなる。その為に手軽な目的を決めたに過ぎないのだ。


「まぁー、目的地も決まったことだしよ。細々としたこと決めねぇーか?」


「と言うと?」


「第一にここに居るやつ全員連れて行くのか。第二に持ち合わせている情報を開示するのか。第三に……まぁ、これはおまけだが、お互いにリアル情報を少し開示するか。だな!」


「第一は難しいかもしれないね。さすがにこの人数は移動には無理があると思うし。」


「だよねぇ~。てか、気づいてるかもだけどぉ~。何組かもう離脱してるしねぇ~。」


そう、イリスの言うとおり何組かはこの場を離れてしまっている。

個人的に判断して移動を開始している。

それにこの人数での移動はデメリットが多い。人が増えれば問題も増え、最低でもケンカが起き、最悪は殺しすらありえる。そんなデメリットを抱えていられるほどに僕達には余裕はありはしない。


「なら、第一は連れて行かないだな。んじゃ、第二はどうする?」


「うーん。それぐらいなら問題ないと思うけど……」


「チッチッチ。チェンくん甘々(あまあま)だよぉー。もしも、今の情報を流したらどうなると思うぅ~?」


「えっ……どうなるの?」


「捕まってリンチされてミンチだよぉ~。そんなこと教えれば、何か知ってんじゃないかって疑われてぇ~、団体拷問されちゃうよぉ~♪てかぁ~、リンチにミンチってうまくないぃ~♪?」


「うまくねぇーよ!まぁ、拷問は言い過ぎかもだが疑われてリンチはありそうだな……」


今いる百人近い人からリンチされるのを想像し、顔を青くしながら答える。


「……なら第二は無しってことかな?」


「だな……」


「じゃあ、第三は?」


「俺は構わねぇーぜ?」


「私も問題ないよぉ~♪」


「僕も問題ないから改めて自己紹介かな。」


こほんっと軽く咳払いをして、自己紹介を始める。


「僕のリアル名は橙瀧。アカ名はチェン。東京在住の20歳、大学生。これぐらいかな?」


「いいんじゃねぇーか。んじゃ俺か。俺のリアル名は郷田大。アカ名は餃子王。栃木在住の21歳、サラリーマンだ。」


「えっ!キングって社会人なの!?」


「まぁー、勉強嫌いだからなぁー」


同じ大学生だと思っていた分、かなり驚いてしまう。


「次は私ねぇ~♪。私のリアル名は愛橋楓(まなばはしかえで)。アカ名はイリス。神奈川在住の12歳、小学生でぇーすぅ~♪。」


「「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」」


僕とキングは二人して絶叫する。


「イリスって12歳なの!?」


「どんだけませてんだよ……話した感じもっと上だと思ってたぞ!?」


「そうぅ~?まぁ、嘘だからねぇ~(笑)」


「「おい!!!」」


「あははは~♪本当は18歳、高校生でーすぅ~♪」


「サバ読みすぎだろコラッ!!」


「ごめんごめん~♪」


「あはは…………次は紅夜叉さんお願いします」


ぼぉーと空に向けていた眼をこちらに向けるとポツリポツリと喋りだす。


「リアル名……愛橋樹(まなばしたつる)……アカ名…………紅夜叉…………神奈川在住……18歳…………高校生…………」


「樹は、私の双子の弟なんだよぉ~。まぁ、ぼぉーとしてるけどやればできる子だからよろしくねぇ~♪」


お互いの改まった自己紹介も終わり、次の段階へと進む。

目的地メーリン村。

ゆっくりと目立たないように移動し、団体へと離れて出発する。

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