2話
少し経ち、僕も郷田も落ち着く。
そしてついに、検証に入ることとなった。
「郷田はさぁ、あっ餃子王かなぁ?ここに来る前てか、気付いた時の前か。なにやってた?」
「あぁん!!わざとかお前!!どうせならキングって呼べよ。でなんだっけか?こうなる前か?んー、確か電車のってたか?」
「んじゃ、キング。僕は喫茶店に居たんだけど、その時WOFは?」
「マジで呼ぶのかよ……。そういややってたな」
「僕もなんだ……これってさつまりは、WOFをやっていたからこうなったてことかな?」
関連があるアカ名の表示にこの場所に来る前にやっていたこと、これらを考えるとWOFが関係していることを考えずにはいられない。
しかしそれは、ただのスマホゲームがこんな異質なことを起こしているということになる。
そんなことは…………
「あり得ないだろ?普通に考えてただのゲームが起こせることかよ?」
そう、あり得ない。
あり得るはずのないことだ。しかし、状態はそのあり得ないことを起こしたように見えてしまう……。
決定的な情報不足だ。
ほかの考えはないだろうか?
キングは電車の中で、僕は喫茶店で関連性はないように見える。ならばほかには無いだろうか?
……やはりダメだ、情報不足。
ならば集めるしかない、情報を。
「なぁキング。周りにも聞いて回らないか?僕達だけじゃ原因はわからないし」
「んー。そうだな、一理ある。分かった、じゃあ俺は適当に聞いてみっから、俺は右側担当な!じゃ!!」
そう言うと僕達から見て右側の人混みに走っていってしまった。
しょうがない。なら僕は左側に行くかな。
軽く見渡しても人の群れとなっている。
パッと見に100人以上なのは確実、100人以上居てもみんなバラバラな行動をとっている。
ある人は座り込みうずくまり、ある人はフラフラと歩いていたり、ある人は周りの人に怒鳴りちらしたり、十人十色である。
とりあえず始めに声をかけるのは……フラフラと歩いている人だろう。
座り込みうずくまっている人に話しかけても無視されそうだし、怒鳴りちらしている人は論外。怒られるのはごめんだ。
と言うわけで、目の前をフラフラ歩いている男性に話しかけた。
「あの、すいません。ちょっと聞きたいんですが」
「…………えっ!俺?」
「はい。ここに来る前に何してました?」
「何って……普通に部屋にいたけど?」
「その時、もしかして……WOFやってました?」
「あぁ、やってたけど?」
「……ありがとうございます」
「えっ!ちょっと、なんだったんだよ」
僕は彼の言うことを無視してその場を離れた。
あの人は部屋でか、しかもWOFを……
やはりと思わずにはいられない。
とりあえずほかにも聞いて見るか。
それから1時間いろいろな人に聞いてまわり、キングと別れた場所に戻った。
キングは、先に戻っていて草原の上であぐらをかいて待っていた。
僕も隣に座る。
「お疲れ!!収穫はどうよ燈?いや、チェンだったか?うししっ」
「うん、まあまあかなキングは?」
「スルーかよ!まったく、まぁいいや。んじゃ、報告な。20人ぐらいに聞いて回ったんだが、来る前に居たとこはてんでバラバラ。牛丼屋だろ、家、学校、公園、バス、終い(しま)には風呂だとよ。だがよ、これだけは真逆だったぜ。満場一致で全員WOFやってたらしい」
「やはり…………僕も同じだったよ。27人に聞いて回ったんだけど、場所はバラバラなのにみんなWOFをやっていた。」
「これって、あり得ねぇーけどよ。やっぱり……」
『全員WOFプレイヤーでぇ~、この事態の起きる直前にゲームをプレイしていたってことかしらねぇ~』
突如、頭上から声がかかってきた。
驚き振り返るとそこには、男女のペアが並んでいた。
「どもぉ~、面白そうなことしてるねぇ~私も混ぜて混ぜてぇ~」
トローンとした目付きが特徴的な語尾が伸びがちな女がのぞきこんでくる。
「どちらさんだ?いきなり話に割り込むとは礼儀知らずじゃねぇーか?」
「ごめんごめん~、いやいやぁ~君たちがいろいろやってるから気になっちゃてねぇ~。私はイリスね、よろぉ~。でこっちのボサッとした子が弟の紅夜叉」
「イリスに紅夜叉…………本名じゃないよね?」
「もちろんアカ名だよぉ~」
おっとりとした笑みで答えるイリス。
弟らしい紅夜叉はぼぉーと空を見ている。
「アカ名……てことは、君達も……」
「そう、WOFプレイヤーだよぉ~。もちろんここに来る前にはプレイしてたしぃ~」
「そうか……」
これで僕達と聞き込みの人、そしてこの兄弟を合わせて50人弱はWOFに関係していることが判明した。
これはやはり、WOFが関連しているのか。
あり得ないと思えることが起こってしまったのだろうか?
…………ダメだ、やはり情報が不足している。
確かに、WOFが関連している可能性は高まった、しかし情報的には1つの事例しか集まっていない。
結論を焦って出しては行けない。
まだまだ、集める必要がありそうだ。
……それに、例えWOFが関係しているとしても妥協策が全く浮かばない。
ならば、焦る必要はない。じっくり集めるしかない。
「しっかし、わっかんねぇーなぁ?どうなってんだか?」
「そうだね。でも今考えても分からないし、それよりもこれからどうするか考えようよ」
「おぉ~、あったまいいねぇ~。えーとぉ~、名前なんだっけぇ~?」
「あっ!ゴメン言ってなかったね。僕はチェン、それでこっちが餃子大王」
「ちょっと待て!!餃子大王ってなんだ!!なに然り気無くクラスアップさせてんだよ!餃子王だっての!!てか、キングって呼べ!!」
「了解でぇ~すぅ~。チェンくんにぃ~、グレイトキングくんねぇ~。よろぉ~」
「だから!!クラスアップさせんな!!てか、グレイトキングってなんだよ!キングって呼べぇぇぇぇぇ!!」
キングによる『キングって呼べぇぇぇぇぇ』の懇願はよく青空に響きました。