5.女神と自然神ありえねー性格1
5、女神と自然神ありえねーの性格
町の一角にある路地裏を抜けた先に、一軒の古びた館があった。そこは、占い師たちが集う不思議な店だった。
外観とは打って変わって、内には、きれいに整えられた部屋がいくつもあった。一階には、占い専用の空間があり天井からいくつもいくつもレース状の黒い布が吊り下げられて、お香の甘いような、爽やかのような、なんともいえない独特の匂いが漂っている。
テーブルの上には、黒い布が敷いてあり、その上には、透明な水晶球がおいてある。その周りを紫水晶などが、取り囲むようにおいてあった。
完璧に占いの館だった。
レオ達は、ドーラスによって、二階にある食堂へと案内された。
「ここは、私たちが、今いる場所ですわ。先程の黒い集団は、占いクレハのもの達です。私達、ここや色々なところで情報収集とともに占い業をやっていますの」
ほほほほと笑う姿はまさに本物の女性としか見えなかった。
レオと光はドーラスに食事を出してもらい話を聴いていた。
「何故、そのような姿をしてらっしゃるのですか?ドーラス。」
光は怪訝そうにドーラスに尋ねた。
「ああ、まあ、色々ありまして、あちらから、逃げるために変装していたら、結構はまってしまったのですわ」
クスクスと面白そうに笑いながら、言うドーラスをなんともいえない表情で光は見つめていた。
「相変わらずですね、王子。」
そう言って、光の頭を優しく撫ぜる。
「王子が気にすることではないですよ」
光を慰めるように大きく優しく笑う姿はどこか女の人というより、やはり器の大きい男の人だった。
「ところで、先程からかーなーりー気になっていたことをお伺いしてよろしいですか?王子」
そう、言いながら、光を見つめる。
「はい、いいですけど・・・?」
「私は、空のティスリア国の巫女として、いえ、女神ルイースの巫女臣として、王子が十年に一度の力を使ってこちらに来られたのは分かったのですが・・・」
一旦そこで会話を止め、レオの方をみる。
「そちらの方はどういった見解で、こちらの世界にやってきたのでしょうか・・・?」
怪訝そうに、レオを見つめた。
レオはというと、食事に夢中で、それどころではない。
レオとしては、食べれる時に栄養補給は必要不可欠と、今までの経験で学んできたことだったので。
「王子が、決められたことですし、あまりとやかく言うつもりなどございませんが、王位継承問題が片付いてから、改めてこちらにお越しいただいたほうがよかったのではありませんか?婚約者にするにしても!」
「ぶー!」
いきなりな婚約者発言に、さすがのレオも食べていたものを思いっきり噴出していた。
「あんた!ど、ドーラスさん!何言ってんですか!婚約者って!あんた、俺男だって言ったじゃん!何回言えば信じるんだよ!!」
レオは憤慨したように怒鳴った。
そんな様子も気にした風でもなく。
「ええ、男の子なんですよね。大丈夫ですよ。十分、女性でも通じますよ。他には、だまくらかして、王子には人工授精?って向こうの世界にはありましたわよね。そうでもして子供造ってきてもらえば分かりませんし」
実に楽しそうに言うドーラスに、レオの額には青筋が何本も立っていた。
そんな様子に気づいた光は
「ドーラス!婚約者じゃないから!レオは俺の、とっ友達だから!向こうの世界で、操られて、死にそうになったとき、助けてもらったんだ!それで、こっちに一緒に来てしまっただけだから!!」
焦ったように、慌てたように光は言った。そっと、レオの方を見ると、肩をわなわなと震わせている。
「俺はっ!男なんだ―――!たとえ、女に間違われて、巻き込まれ結婚式の新婦に仕立てられてもっ!アイドル誘拐事件に巻き込まれて、アイドル(女性)と間違われていてもっ!
たとえ、男子校に通って、校門の前で風紀委員の検査で、女学校はあっちと、学校に入れてもらえなくてもっ(涙)!!しまいには、入学当初、男子トイレに入った瞬間、男子生徒が悲鳴をあげられ、もう少しで女子トイレに、閉じ込められそうになったりしても!!俺は、おれはっ、男なんだ――!!!」
レオの涙ぐましい、現状に二人は思わず、言葉が出なかった。
そして、
「色々大変だったのね・・・」
なんとも同情的な眼差しでレオの肩を叩いたのだった。
「俺の人生こんなのばっかりだー!何かに巻き込まれるわ、女にしょっちゅう間違われるわ!何なのこれ!俺男らしくないの?女に間違われるのだけ、我慢できね――!!」
そんな、レオの暴走に、慌てたように光が
「レオ!落ち着いて!」
必死にレオを落ち着かせていた。そんな様子になんだか、微笑ましさをドーラスは感じていた。光の年相応の表情に、どことなく安心したのだった。
あのような事を目のあたりにして、どこか、心が壊れてしまったのではないかと案じていたのだったが、このレオという子がいたおかげなのかもしれないと、なんとなくだが、感じていたのだった。